裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

火曜日

東京デオドーラント

 園内のネズミは臭いません! 朝7時半起床、入浴。朝食とりつつ尼崎脱線事故のニュース。昨日、くの字なりになっている車両を見て、これが一両目だと思っていたのは二両目で、一両目はさらにぐしゃぐしゃになってマンションの中につっこんでしまっているらしい。自動車とか電車とか飛行機とか、われわれは硬い鉄のかたまりであって、はねられたら負けるが、乗ってる分には保護されていると思いがちだが、実 は中空のペコペコのアルミの管みたいなものなのであるな、と改めて思う。

 昔、今はなき能登鉄道で、サンダーバードとの乗り継ぎに7、8分しか時間がない のに10分近く遅れており、車掌さんにそのことを訴えたら、
「大丈夫、間に合わせます」
 との答えで、実際それから飛ばす飛ばす、窓外を見たらあきらかに車体が線路から浮いていた。間に合わないのは困るし、そもそも急げと言ったのはこっちなのだがかなりコワかった。あれを数倍の速度と規模でやっていたわけで、乗っていた乗客の全 員、かなり不安になっていたのではあるまいか。

 いろいろ雑用しているうちに時間が経ってしまい、昼過ぎに出勤。車中で携帯電話 にNHKのニュース10から電話、
「最近の昭和ブームについて何か語れるか」
 という話。少し大阪万博のことなど話す。明日あたり取材行くかも知れないが、尼崎の事故とかパリのバス転覆とかでどうなるかわからないので、そこらへん見てまた 電話しますとのこと。

 雨もよいで体動かず。昼は納豆メシ。圓生の『五人回し』など久しぶりに聞く。落語家つながりではなかろうが快楽亭から電話、いろいろ打ち合わせ。永谷ホールからこないだ演じた破礼噺につき客から苦情が来たので今後控えろという厳重注意FAXが届いたと言う。
「アタシ、その言われた寄席に出てないんですがね」
 永谷に快楽亭が出るのは独演会かトンデモ落語の会。これの客が文句言うわけもなく、きっとその苦情言った客というのは落語家の名前を知らず、エロばなしならアイツだろうと思って投書したのではないか。あんな目立つ顔の噺家を間違えるな、という感じだが、以前少年アクションという雑誌(双葉社がごく短期間出していた少年雑 誌)が自誌のマンガについて父兄にアンケートをとったら
「『がきデカ』は子供に読ませられない、連載をやめろ」
 と、まったく違う雑誌の作品がやり玉にあがった、という例もある。

 なをきに電話、
「大変かね」
「今の時期大変でない漫画家は死んだ方がいいのでは!」
 みたいな会話。仕事のことでちょっと。

 2時、桃ノ樹プロYさん打ち合わせ。新書にする種本を持っていき、手渡す。尼崎の脱線でまた陰謀論が噴出するんじゃないかという話。Yさんそういう陰謀論好きらしく、チェルノブイリから下山総裁怪死の血抜きの話までいろいろ。あと、出版業界で伝説の色事師編集の話。オンナと見れば声をかけ、しかもモノにし、貢がせ、不倫魔王としてブイブイ言わせていたが性病持ちのオンナとやってうつされてからちょっと運が傾き、奥さんにそれをうつしたことで離婚訴訟起こされ、タチの悪い借金をし て、命が危ないハメになって、5年ほど地下に潜っていたという。
「それが、いまはちゃんと社会復帰して、若い美人と結婚して、自分は編プロ立ち上げて仕事も順調でやってんですよ。オレの生き方は間違ってたんじゃないかと、アイツ見ると思いますよ」
「こいつァ宗旨を変えざアなるめえ、でやってみたらどうですか」「それが出来ればネエ」
 話している最中にピシャッ、ゴロゴロ、ドカーンという凄まじい音、そとが土砂降りの雨となる。なるほど、これは今日、体調最悪でも仕方ない。時間割のマスターに 傘を貸してもらい、帰宅。

 FAX来ていて、6月に四国の高松で講演してくれとの依頼。日帰りは可能なスケジュールだが、せっかく初めての四国高松なので一泊してうどんでも食ってくるか、 と思う。

 きのう一日左手人差し指の付け根が痒くて痒くて。で、今日は雨で少し部屋の温度が下がっている。少しでも暖を求めるのか、モニター画面の前当たりにフラフラとただようくだんの蚊。ねらいさだめてパシッ! と。仇はとったぞ人差し指、という感 じ。

 4時、また出て時間割に戻り、傘を返す。村崎百郎氏と恒例『社会派くん』対談。山拓、エロ牧師金保、反日デモ、大音響引っ越しババアそしてこの尼崎脱線事故と、もうおナカいっぱいという感じ。脱線事故はあまり鬼畜的話題にならんかと思ってい ればあの運転手が……という感じだし。

 終わって外へ出る頃にはもう雨はあがっていた。東急ハンズに寄り『ただいま!』の医者の扮装に使う聴診器を買う。古い医者の往診カバンというのを以前古道具屋で買って持っていて、中に聴診器もあったのだが、ゴムが完全に風邪をひいてぼろぼろになっていた。聴診器という名称では売っておらず。“ナーススコープ”ですと。

『フィギュア王』原稿にかかり、だいたい出来たあたりで今日は上がり。帰宅、家でメシ。鰆のムニエル、空豆、牛頬肉の牛丼など。缶ビールとホッピー真露割り。天海祐希の『離婚弁護士II』見る。ドラマはともかく、セットが全て現実離れ。こうしないとテレビはダメなのか。悪役で、妻がありながら女と不倫しては捨てていくエリート商社マン役で新感線の古田新太が出ていた。さっきの打ち合わせに出てきた不倫編集を連想する。ドラマだから最後は女性たち(不倫相手からも妻からも)から莫大な慰謝料を請求されて打ちのめされるわけだが、別に職を追われたわけではなし、数年後にはまた別の女作ってブイブイ言わせているだろう、こういうオトコは。もっと徹底的に追い落とし、社会的制裁を与えた方がドラマ的にはインパクトあるのだろうが、視聴者の主婦たちは、こういうオトコを実はココロの底では憎みきれないので、どうしても扱いが甘くなるんではないかと思う。……それにしても、どういうキャスティング意図か知らないが色悪に古田新太は似合わなかろう。芝居もセリフまわしが小悪党ぽくてよくない。もすこしのっぺりとした、こういう役専門の役者も探せばい そうなものだが。

 自室にもどり、中世ヨーロッパ関係の本をザッピング読み。水割り缶大一本小一本飲んで。1時ころ就寝。K子は語学仲間と飲んだらしく、3時ころご機嫌で帰ってき た。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa