28日
木曜日
雨音は諸般の事情
トタン屋根が貧乏で張り替えられないんで。朝7時半起床、外は快晴、まぶしいくらい。入浴して朝食、イチゴ、リンゴ。テレビ、新聞、ニュースはもう尼崎一辺倒。新聞に死者97人、とあると、悲惨な、という思いとともに
「あと3人」
と本能的にカウントしてしまうのは10進法文化圏の人間である以上仕方ない、のか、私が鬼畜なのか。
R社Hさんから電話、図版資料受け渡しの件。今日お茶の水で会って、ということにする。薔薇族のイラストの指示のみK子にして、10時半出勤。昨日取材のNHK『ニュース10』から電話、やはり脱線事故のニュースがどうしても入るので、放送は来週になる、と。昭和展は2日からだから宣伝効果は薄れてしまうが、これはもう運不運の範疇だろう。あの電車に乗り合わせた人々の不運に比べれば小さいもの。
その他、幻冬舎、河出書房新社などから電話。1時までに原稿二つアゲるつもりがなんやかんやでアゲられず。1時、どどいつ文庫伊藤氏来。ナイジェリアの映画ポスターの本、二冊目だが最高。稚拙さが異様な迫力を生む世界。と学会東京大会の話な どをする。
メール数本、おぐりゆかから電話一本、でもう3時を過ぎる。青山までタクシー、オーバルビルで行われている開田さんのボックス・アート展に。開田さんに入り口で声をかけられる。打ち合わせの相手待ちだそうな。地下の特設会場に行くとあやさんと猫戦車マリィさんがいた。送った花のみ確認して(どうしてもこないだから用心深くなってしまう)絵を見る。ガンダムは見慣れているが、ゾイドの絵がいい。怪獣ぽいからだろうか。昔ハマったなあ。あのとき集めたゾイドたちはどこに行ったか?
マリィさんたちと雑談。彼女が先日から東北新社の声優学校(プロ専科)に厳しい試験をくぐり抜け入学したのは知っていたが、聞くだにその『愛と青春の旅立ち』式のスパルタエリート教育を聞いて仰天。その方式に全て賛成はしないが“それで食っていく”意識を育てるには、今の若者にはそれくらい言わないとダメなのかも。Iさんもやってきて、ちょっとあやさんと三人で雑談。列車脱線ばなし。なんであんな場所(電車が急カーブするところ)にマンションが建っておるのか、という話など。
30分ほどいて、半蔵門線で神保町、4時半にお茶の水。Hさんと落ち合い、図版ブツ受け渡し。その説明を、と近くの喫茶店に入る。路地を入ったところにある、日当たりゼロの純喫茶『ミロ』。あとで聞いたら三島由紀夫愛好の店だとか。昼間(夕方だが)ビール飲んで盛り上がっている一団がいた。“純喫茶”というのはアルコール類を出さない喫茶店のこと、ではなかったのか、と思うが、このいいかげんさが実 に昭和、でよし。スパゲティ作っていたが、その山盛りの量に驚く。
そこで図版ブツ説明して別れる、はずが
「お忙しそうですね、休みとかとられないんですか」
「そうですね、数日の旅行は別にして、今年に入って完全休業の日ってゼロですね」
「ひえーっ」
というようなところからフリー職業の大変さと楽しみ、フリーのまま年齢を重ねるということ、仕事とそのモチベーション、売れるということ、自己プロデュース能力が備わっての“才能”でないと、いや、自己プロデュース能力こそが才能なのではないかという話、大衆とアカデミズム、と学会の路線、などなどと、話がそれからそれへで止まらず。大衆路線のことで平山亨のエピソードに二人でちょっと涙ぐむ一幕も あり。
こないだの日暮里大会座談会のテープ起こしが面白かったのが意外だ、という話から、
「あれがダレていると思っちゃうほど前半がスゴかったってことです」
「あの時の会の盛り上がりは伝説ですからねえ」
「300人程度の規模の会場が一番会場全体が一体化出来るんです。九段となると、ちょっとそれは難しい。天井も高いですし。だから二回目はちょっとつかみかねた部分があった。三回目は完全にショーとして構成して、一体化よりも“舞台を楽しむ”構成にしようと思っているんです」
などと説明。外部の人間(佳声先生やおぐりなど)を入れるのもそのため。
話に夢中になり(Hさんの聞き上手もある)、ふと気がつくとすでに八時二十分を回っていた。二人で驚く。4時間以上、ただコーヒーだけで話していたのか。急いで帰宅。新宿まで中央線、そこからタクシー。やりかけの原稿とメール連絡のみ片づけで、10時帰宅。家でメシ。豆腐と春野菜天ぷら。飯は省略。ホッピー一ビン。K子 も帰っていたので、少し話してすぐ寝る。夜はやはりまだ肌寒い