裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

月曜日

東京ボートピープルショー

 佐藤B作がベトナム人役を。朝7時起床、入浴して朝食。アスパラガス一本(ただし巨大)、バナナ一本。クリーニング、母が美容院に出かけるので10時までに、と言ったにも関わらず10時半ころ来て、母が出ててしまっていたのでうちに来る。

 なにか昨日からダラダラしていて、日記つけも遅れる。このまま家で仕事してしまおうかと思うが、そうだ12時に代金引換の荷物が来るのであったと思い出し、あわてて出勤。しばらく待つが荷物、結局来なかった。なんかみんなダラけておらんか。 このダラけ電波のせいで尼崎の事故も起こったのではないか。

 私のダラけは朝から雨が降り出したりした天気のせいもある。幸い、12時には上がって陽が差しはじめた。また変わらぬうちに急いで、と昼食(もう当然のことながらあずま食品黒豆小粒で)とり、アサ芸『こんなニュースに誰がした!』原稿。

 書いてる最中、蚊に刺される。今年初。昨日天気がよかったので窓を開け放していたら、そこから早わきの蚊が迷い込んできた。昨日、耳元でプ……ンという音がしたのでヤバイと思っていたが、いま、左手の指のつけねを一刺し。刺されたのが指でよかった。昔はよくまぶたの上などを刺されてお岩さんみたいな顔になったものだが、テレビの収録などが入っているときにやられたらアウトである(……テレビテレビと最近の日記読み返すと、いかにも「自分は最近テレビで売れてるんざんすよ」と自慢しているみたいでイヤなんだがこれも毎月のローンとアマゾンの支払いを工面するためと思って我慢してくれなくてはいかん)。何故か昔から蚊には好かれる。皮膚呼吸の量が人より多いのかもしれない。何人かで夏に外に出ると必ず私だけが刺された。 よほどうまい血なのかもしれない。

 しかし蚊をうらむ暇なく執筆。今日は3時から週プレ対談なので、正味2時間半くらいしか執筆時間がない。『こんニュー』は毎回原稿用紙6枚。一般の私の平均執筆速度は1時間に400字詰め原稿用紙2枚半なのでギリギリだな、と思っていたのだが、なんと2時半には片づいてしまった。日記に、あまり政治向きのことを書かなく なった分、たまっているのかもしれない。

 メール出したとたんに電話、なんか中年くさい声としゃべり方で
「あの……わたし、『ザ・ベスト』という雑誌でライターをしているものですが」
 と、インタビュー依頼。万博について話せ、と。電話インタビューかと思い、われ われ世代の万博への思いみたいなものをちょっと話したら
「……面白いなあ。あの、今日あたりどこかでお会いしてお話伺えますか」
 という。なんだ、これは依頼のサグリだったのか。今日はもう出てしまうと言うと
「そうか……じゃ、いいや」
 と、どうも頼りない。結局、この話を使うとも使わないともハッキリせず、電話切れる。最近増えたな、こういうの。

 それを終えたあと、またすぐ電話。某イベントスタッフから。例の苦情の件で、ミスがあって申し訳ないと平謝り。すぐ解決ついたようで、ちょっと拍子抜け。今日はその件で、関係者であるツチダマさんとおぐりに謝罪の一席を設けようと思っていた のだが、別に設ける必要なくなってしまった。

 しかし時間はちょうど3時。急いで時間割へ。週プレライターのNくんとおぐり、来ていた。来週月曜は紀伊國屋初日前日で対談は無理なので、今日は二回分まとめてやる。テーマは“猫”と“クレーマー”。猫テーマの回ではおぐり、ぶっちぎり。や はり“あの”エピソードはみずしなさんに回して絵で表現かな。

 4時半までで二回分終わり。Nくんは帰り、わたしとおぐりの二人は次の打ち合わせの人を雑談しながら待つ。ほどなく二見書房Yさんきて、単行本の打ち合わせ。私 とおぐりのユニットで『コミビア』風の単行本を出そうという話である。

 Yさんは二見でマドンナメイトなど官能小説文庫も手がけているベテランで、女性に関しては一家言ある人物、なのかと思っていたら、おぐりを前にしてなんか凄まじくアガって、やたら早口であたふたと版組のこととか構成のこととかをまくしたて、まだざっとしか本のことは私から伝えられていないおぐりがキョトンとしている。
「いや、Yさん、ちょっと落ち着こうよ」
 とたまらず声をかけると、
「あっ、あっ、失礼しました!」
 と、まるでいつものYさんでない。

 Yさんはコミビアも見ていたし、おぐりと村木座長の二人会にも来てくれている。そういう“ファンとして見ていた人”を目の前に見てアガってしまったようだ。人間とは純情なものであることよ、と可笑しくて仕方なかった。本はビジュアルたっぷりのいいものになりそうな感じ。30分程度で打ち合わせ終わり、次の用事に回るとい うおぐりと一時別れる。

 仕事場に戻り、『フロムA』のインタビュー原稿のテープ起こしチェック。これに30分ほどかかり、FAXして急いで今度は新宿へ。中村屋地下マシェーズでツチダマさんと待ち合わせ、紀伊國屋公演招待券の私分割り当てを貰う。某イベントについ ては丁重な謝罪電話がきた、とか。

 おぐりを待って、二人と食事、鳥源へ。ウズラとか水炊きとか食べながら、芝居の話、テレビの話、その他いろいろ。女優と美人マネージャーと両手に花だがそこはそ れプロデューサーの役得である。

 11時まで3時間半、話して、店を出ようとしたときに声をかけられる。もと河出の編集でいまは文筆家をしている安藤礼二さん。折口信夫の『死者の書』の評論本とか、私の知り合いの中で最も高級っぽい本を書いている人。こういう人が俗な雑学本 書いている私を尊敬してくれているのだからわからない。
「食べていけているのかな」
 と心配していたが、元気そうでなにより。駅まで女性二人を送り、そのあと中央線で帰宅。メールチェック、スケマネからの明日の予定確認。12時過ぎ就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa