2日
土曜日
アナーキーじじい
抱きつくと無政府主義者になります。朝、オウム真理教に入信する夢。もちろん本当に信者になったわけではなく、取材のための入信。まだ麻原がいて、坂元弁護士事件や長野サリン事件などでオウムが世間から疑われてはいても、彼らの犯行とは確定できていない時期らしい。私は最初から準幹部的な位置を与えられたのだが、それを快く思わないたたき上げの幹部(私が最も嫌う、人情直行型人間)が、いろいろイヤミをいってからんでくる。麻原が“食事は手を使って食え”と指示したのに、私が
「オレは箸を使うのが主義」
と箸で食ったことで、そいつの目がギラリと険悪に光った。その後のミーティング で、彼はいろいろ私に向かってトゲのある言葉を投げかける。
「おまえらオタクはさあ、誰に頼まれもしないのに勝手にわれわれオウム監視ネットワークなんてもの作ってるだろ。あれ、何?」
「何って、個人の考えでしょう。それがただ、ネットというものがあるので大きな監視網に広がっている」
「それがわかんないんだよ。何なの、あの熱意は。どうしたらそんな、誰にも強制されないでものごとに熱中できんだよ。キモチ悪いよ!」
ココロの隅で、新興宗教にハマっている奴にそんなこと言われたかねえなと思い、かつ、こういう粗暴な奴を敵に回した以上、いつか自分の命が危ないな、と秘かな恐 怖も感じて……。
そこで電話が鳴って目が覚めた。実はなぜこんな夢を見るのか、その理由というかモトにもはっきり思い当たり、今更にフロイト先生をちょっと見直したりしているの だが、そのことについては今は書かない。
電話は母の“これから出かけるから”というもの。『東京を歩く会』で今日は早く出かけるので、自室で朝食。入浴してから。アボカド半個とバナナ。やや早めに出勤する。フィギュア王新連載第一回から〆切二日遅れ、ギリギリで、原稿書き。13時というデッドラインから10分遅れで書き上げて印刷所に直接メール。受け取ったと いう返事がないが大丈夫か?
それから参宮橋に出て道楽のノリミソラーメン。橘善男『小説・俳優座−わざおぎ狂乱』(鳥影社)読む。戦後新劇史に興味のある者にとって、いや、でなくても映画や芝居にちょっとでも興味ある者にとっては面白くてたまらない時代の、面白くてたまらない役者たちの織りなすドラマ。なにしろ出演者が千田是也、三木のり平、西村晃、小沢栄太郎に東野栄治郎といったくせ者たちなのだ。劇団という“生き物”の成長と増殖と分裂と、という生態も如実に描かれている。小説としての欠点も多々、目 につくが、それらは読了後に改めて感想を書くので。
これまた〆切ギリギリの『漢字天国』コラム5枚を書く。内容は面白いと思うが、オチの部分がきれいに決まらなかった。自分としては減点対象である。こっちは受け 取ったという、安堵したような返事が来た。
これ書いている最中に二度ほど、パソコンの前でオチる。こらいかん、と外出してタントン。オチたとは記憶にないが、ずいぶん一時間が短かったように感じたので、どこかで眠っていたのだろう。仕事場に帰り、と学会東京大会がらみでメール連絡いくつか。しこうしてまた原稿、『FRIDAY』コラム。こっちはさっきの漢字天国 とは逆に、中盤ダレ、しかしオチは案外サプライズで行ける。
こっちの無精で長いこと放ったらかしにしておいた懸案が向こうの方からの連絡でOKになったという報せが。とうの昔にこっちが確認しておかねばならなかったこと なので罪悪感があるが、なにはともあれホッ。
仕事していたらいきなり、という形でCDプレーヤーがおっ壊れた。ターンテーブルとは言わないだろうが、レコードプレーヤーで言えばそこにあたる部分がまったく回転しなくなった。最近調子が悪くて、だましだまし使っていたのがついに……というのでなく。さっきまで普通に聞けていたのでちょっとビックリ。プレーヤーのピン ピンコロリである。
最後の原稿送ったのが8時45分、まだ体力的には少し仕事できそうだが、時間が半チクである。『ごきげんよう』がらみのメール連絡などして、9時半に家を出て中野へ。『焼肉とらじ』でK子、母と夕食。レバ刺しとホルモンが品切れだったのは残念。タン塩、カルビ、塩ロース、イカ焼き、豚足など。むさぼり食うように豚足を食べる。コラーゲンに飢えているのか? 酒は真露。最後、母とK子は冷麺を分けて。私はコムタン。11時半頃帰宅、ベッドで『小説・俳優座』の続きを読もうとしたが 一分もたたずグーと寝入ってしまう。