14日
水曜日
レナード・芋煮
きわめて非論理的なシャレです。朝7時45分起き。夢で熱血小学校教師になり、子供たちの教育に情熱を燃やすが、イヤミな女校長に担任を降ろされ、クビにされてしまう。帰り道でその女校長をつかまえ、“なぜボクがやめさせられるんです”と談判するが、“だってあなた、事務仕事がお出来にならないでしょ”とイナされ、“でも、ボクは子供たちとのふれあいの現場を大事に”“教師はそれだけじゃ勤まらないんです”というようなやりとりで言葉につまり、いきなりキレて“てめえ、ババア、こっち来い!”“何するんです!”“殺すに決まってんじゃねえか、てめえ”“アーレー”というようなことになり、その女校長の首をヘシ折る。夢の中とはいえ自分がここまで唐突にキレるとは意外で、その展開にニヤニヤした(ような顔をして寝ていた、と思う。多分)。
朝食、マイタケ入れたスープスパ。新聞でタリバン逃走、壊滅かという記事。少し弱すぎ。腰砕けの気分である。あらゆる新聞、雑誌、ニュースがタリバンの手強さ、武器の優秀さ、地の利を得た有利さ、宗教的団結力の恐さ、ジハドという言葉の重さなどを丁々していたのではなかったか。それがなんでこうも簡単に崩れ去るか。アメリカやイギリス軍相手というならまだ話もわかるが北部同盟ごときに。少々ガッカリである。ソビエト連邦の消滅以来、われわれは本能的に次の“強大な悪”を探し求めていた(人間は常に心配していないと安心できない動物なのである)。今回の事件でタリバンはその筆頭候補に躍り出たはずなのに、このザマはなんであるか。
午前中、例によっていろいろ催促電話。あまりにやることが多くてパニックになりかける。とにかくひとつひとつ片付けていかねばならぬ。書きかけ(といってもホンの数行)の講談社Web現代、片付ける。いろいろ思わぬところで材料をひろえるのはうれしい。担当のYくんと単行本2巻目の打ち合わせもする。一行知識欄に、昨日の書き込みについてのご意見。志ん朝と馬風は志ん朝が元気なときからあのパフォーマンスをやっていたそうな。御指摘感謝。
アスペクトから『社会派くんが行く!』の見本刷りが昨日届いたので目を通す。村崎さんの過激発言がだいぶケズられているような気がする。最初はコンナモンじゃなかったんだから。ところで、これこれしかじかの本を出す、と以前人に話したら、真剣に“そういう本を出すと、カラサワさんが悪趣味な人間だと疑われませんか”と心配してくれた人がいた。お心づかいはありがたいが、私を悪趣味でないと思っている読者がこの日本に何人いるというのか。今さら御懸念には及ばないのである。まあ、世の中には東郷隆の『定吉七番』シリーズを書評して、“これはミステリの文脈で読んではいけない本です”とわざわざ注意してくださる奇特な方もいらっしゃる(例の女史のサイトで見て吹き出した)くらいだから、そういう心配もしなくてはいけないことなのかもしれぬ。
結局、午後4時までかかってWeb現代アゲ、メールする。それから雑用いろいろ片付け、5時20分、渋谷駅でK子と待ち合わせて浅草東洋館まで。トンデモ落語会スペシャルで、三遊亭白鳥真打披露興業。贈った花は入口前に飾られていた。受付をやっている快楽亭のおかみさんに挨拶、楽屋へ行って、金成さんから贈っていただいた播磨屋のおかきをお裾分けで差し入れ。ここの裏には初めて通ったが、いや、入り組んでいて、火事にでもなったらとても逃げ切れないという構造。
前半が志加吾、談生、ブラック、円丈。“スペシャルというのは別にネタおろしでなくてもいい、という意味で”と言った演者がいたが、それぞれ『オタク寿司』『川柳の芝浜』『ランボー怒りの脱出・落語演出バージョン』などおなじみのネタ。談生のサルばなしがホラーぽくて(特に前半の展開、あれはそのまま不条理文学になる)まことに結構。中入りでロビーに出たが客層がなんか身内ばかりで、と学会会員は藤倉珊に植木不等式、官能倶楽部がらみは睦月影郎、安達OB、開田夫妻、裏モノ系ではQPハニー、同業では加藤礼次朗、編集関係では世界文化社のDさん(原稿書けなくてすいません)、扶桑社のOさん、それに珍しく浦山明俊まで来ていた。
後半はまず披露口上から始まる。このメンバーだからもっとメチャクチャになるかと思ったが、円丈さんに遠慮してか案外おとなしめ。それから談之助、先日のイスラムばなしの後半。トリが当然白鳥で、『ギロチンはじめて物語』。加藤礼次朗、ナマで落語を聞くのは今日ただいまがヘソの緒切って初めてだったそうで、“ああ、落語というのはこういうものだったんだあ”と感心。違うちがう。彼や開田さんは白鳥の落語の中で“アルプスの少女ハイジに出てくるクラリス”というセリフを訂正したくてカリカリしていたそうな。二次会はいつもの近くの焼肉屋。白鳥さんにお祝をつつむ。白鳥、快楽亭、談生各師と睦月さんとバカばなしで盛り上がる。志ん朝ファンとかが聞いたら頭に血がのぼるような内容。開田さんに差し上げた自著にサイン求められたのでしていたら、談生さんが“開田裕治がサインして貰っている飲み会というのは濃すぎる!”と呆れ顔。談之助さんとは同人誌編集の話。“家元の原稿があれば凄いウリになるんですがねえ”“ただ、それやるといくら取られるか”。カンバンまで飲み食いして、タクシーで帰宅。さすが浅草からは遠くて5000円以上かかった。