裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

金曜日

コーマンと偏見

「ロジャー・コーマンの映画って、B級ばかりね」(これは偏見ではないが)。朝、7時半起床、朝食はトーストとチーズ。天気晴朗、気分も結構。〆切一日超過の『男の部屋』原稿、9枚弱を12時半までかかってだだだだと片付ける。こういう調子のときの原稿はあまり推敲しない方が面白く仕上がるのである。とはいえ、これを一日延ばしたために、世界文化社の原稿が書けなくなってしまい、Dさんに電話して月曜まで待ってもらう。

 昼は参宮橋まで出て、カルビ館でカルビクッパ。1時だというのにガラ空きなのはやはり狂牛病か。マクドナルドがガラ空きという噂は聞いてないが、やはりそうなのか? ここの店の水ギョウザは最高の味で、また今度食べにきたいと思っているのであるが。

 そこから新宿に出て、少しぶらぶらし、ビデマに行く。明日のオタアミにはさすがに間に合わないが、九州で使えるかもしれない。ここの2階売り場のマネージャーのT氏は、SFマガジンのS編集長と啓乕くんを足して2で割ったような顔をしているな、と思う。帰り、銀行に寄る。自動キャッシュ機に、西口にいつも立っている托鉢の坊さんが、饅頭笠かぶったままの格好で並んでいた。斎藤緑雨のエッセイに、緋の衣を着た坊さんが電話をかけている図が似つかわしくない、とあったが、緑雨の時代に比べ、さすがに電話はまあ許せるが、托鉢僧と自動キャッシュ機はちょっと取り合わせが悪いようである。

 帰って、ビデオを四本、連続で見る。店が“これは面白いですよ”と言ったものはなるほど面白く、何も言わなかったものはなるほどあまり面白くない。見ている最中に電話数本。さっき半分似ているヒトに会ったS編集長から、イラストの指示についていくつか。それから、快楽亭から、来週のオールナイトのトークについて。それを追っかけて、新文芸座のY社長からも電話。

 サンマークの私の本、配本は11月16日なのだが、いま都内のいくつかの書店に試験的に置いてあるそうな。銀座ではほとんど動きナシなのに、神田では即日完売状態であったとのこと。やはりまだ特殊人気のモノカキの域を脱せられてないな、と思うと同時に、自分がそういう特殊人気の作家のものばかり読んできたのだからそうなるのもアタリマエだよなあ、という気も大変にするのである。

 6時半に家を出て、下北沢に向かう。新宿駅、金曜で大の混雑、小田急線を一本、乗り損ねてしまう。開田裕治さんと待ち合わせ。十分ほど待たせてしまうが、満留広昌監督と偶然会って話をしていたそうで、タイクツしませんでした、とのこと。名刺交換する。今日はK子があやさんにつれられて伊勢丹で下着のバーゲンに行っているので、虎の子に誘って食事。その前にレトロコレクションに行き、いろいろ見てまわる。マーダードールシリーズで持ってなかったチャールズ・マンソンのがあったので即、買う。店員の女の子が“カラサワさん、こういうの好きですねえ”と、感心したような呆れたような顔で言った。

 料理はつくね鍋にスズキのソテー、じゃこ奴など。黒龍の抜きたてがあり、かなり過ごす。開田さんは今日、フィギュア王に打ち合わせに行き、N田くんに“開田さんこのごろ毎日カラサワさんと飲み歩いてばかりじゃないですか”と言われたそうな。“ボクはちゃんと、帰ってからまた仕事しているんで、そのことはきちんと日記に書いておいてくださいよ“とのことなので書いておく。私はアルコールが一滴でも入ると、その日は文章が書けなくなってしまう。あやさんに例の“Q33NY”の文字列をWingdingsにフォント変更するとWTC(まあ、書類を表した記号なんだけど)に飛行機が突っ込んでいく図になり、最後にドクロとユダヤの六芒星のが出るという話をしたら、“ソレはデマ”と言われた。

 黒龍うまくてかなり飲む。あやさんが甘味が食べたいといい、出てケーキ屋で買い物するまでつきあって、われわれはタクシーで帰る。帰ってQ33NYのフォントをWingdingsで変更してみたら、ちゃんとなるじゃない。あの女はナニを言っておるのか、と怒りかけて、それが実はテロリストのメッセージだった、というのがデマだ、という意味だったか、と気がつく。そう言えば毎日新聞のサイトなどで、これは何の意味もない枯れ尾花的なものである、とわざわざ打ち消していたが、ソレハ当タリ前ノコトである。打ち消すほどのこともない単純なオモイツキに過ぎないと思 うが。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa