裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

土曜日

すてきなオクタン

 やっぱりトルク感が違うわあ。朝7時半起き。朝食コーンスープに餅。マスコミは景気最悪々々と繰り返してばかりである。“今が最悪と言っているうちはまだ最悪ではない”とシェイクスピアも言っていることであるし、まだまだ悪くなるであろう。朝のテレビで堺屋太一が、『戦争インフレ、テロデフレ』と言っていたが、なるほどそういう言い方があるか。明治節だというのに雨であるし、日本の先行が案じられることではある。

 本日のオタアミ用ビデオをダビングする。もっと前からきちんと準備しておけばよかりそうなものであるが、これがやはりそうはいかない。当日とか前日というあたりにならないと、テンションが上がらないし、不思議なことに期日近くならないとネタも見つからないのである。オタアミの中では一番用意のいい眠田さんも、たいていビデオをダビングするのは前日とのこと。と学会の例会でも、発表者には“今日、ここの会場に来る途中の本屋で見つけたんですが……”という人が案外多く、それがまた掘り出し物だったりする場合が多いのが面白い。

 ダビングを12時に終え、1時まで原稿書き、北海道新聞コラム原稿一本書き上げる。K子にメール、編集部には時系列再確認などの作業をしてからということで来週アタマ。雨の中オーチャードホール。歩いて五分のところだが、もう長蛇の列。みんなそんなにゴジラが見たいか。『Pマン』のスタッフの皆さん、開田あやさん、裏モノの常連さんなどに挨拶。と学会の大沢南さんの姿も見かけた。会場内に入るとき、カバンの中身を検査される。“テロ対策ですか”と訊いたら、“はい”と、至極当然といった感じの返答。誰がゴジラをねらうのか? 韓国製のアヤシゲなビデオを調べられて“これは何です”などと訊かれたら何と言い訳しようかとちょっと心配になったが、ノーチェックだった。当たり前か。場内でチケット手配してくれたNくんにお礼。『映画バカ一代』編集のUさん、特撮研究所のOさんなどに紹介される。

 今日はオタアミ楽屋に3時半入りなので、前半だけしか見られないかな、と思っていたらそれどころか、前セレモニーが長くて、上映予定時間になってもいっかな始まらない。こういう映画祭の司会というと必ず襟川クロが出てくるが、なんでこのヒトなのだろう。別に司会がとりたててうまいとか、映画に深い知識があるとかはとても思えないのだが。ヒロインの何とかいう子の挨拶、日本語文法がメチャクチャ。

 結局、新作ゴジラは20分しか見られなかった。これだけで全豹を卜すのはいくらなんでも暴挙なので差し控えるが、冒頭だけを見た感じでは、なかなか結構である。手塚監督のメガギラスは、冒頭からリキ入りまくりで、初演出の気負いが好もしかったが、さすがに前三本、カイジュウ映画経験があるともう、いいかげんなところはいいかげんに撮って次ぎいくという、この肩の力の抜け具合がいい。飛ばしすぎの感はあり。このテンポで100分飛ばされるとツライかもしれない。あとは試写観てからのことに。

 タクシー飛ばして新宿。入るとすでにロフト席(席というほどのものではない、単なるスペース、というか物置き)まで満員。いつもはこのロフト席を楽屋にしているのだが、今回はそこにも入れず、事務所を楽屋にする。眠田さん、岡田さんとざっと雑談しただけで舞台へ。私が例によってのアジア系、眠田さんがレアエロアニメと大感動同人誌アニメ『コミックパーティ』、岡田さんがタイピングソフト実演ビデオ。やはり東京ではひさしぶりだったのでネタも濃く、トークも濃い。本日は深夜にまたコンサートがあるので時間が短縮され、三時間半にコンクされ、その分かなりドロリ感のあるライブとなった。

 休み時間の入れ替えがまた、大変。スレ違いが続いていたきだてたくさんにやっと会えた。福原鉄兵くんも来てくれて、ビデオ激賞してくれる。午後の部は、ゴジラ観終えた開田さん夫妻、NHKのYくんなどが来る。『だめんずうぉーかー』のくらたまこと倉田真由実さん来楽。岡田さんとの打ち合わせだったが、名刺交換して、“いやー、もとダンナ、私の単行本の担当だったんですよー”と盛り上がる。担当さんが私のファンだそうで、ちょっとナイショ話など。

 夜の部も昼とほぼ同数の入り。入れ替えのときの整理券点呼を、並んでいるファンたちが自主的に行って入場するその様子に、斎藤さんが“ああっ、これって『コミックパーティー』現象!?”と感動。しかし、オタクもソフィスティケートされてきたというか、かつてのオタアミの、あの熱いムサい息苦しいという状態ではなくなってきているのが面白い。女性客も増えた。前列に一人、やたら一人ツッコミを入れるウルサイのがいたが、これが見ると可愛い女の子(カレシ連れ)。世の中変わったよ。さすがに夜の部は、昼につながりやテンポ、見せ方の点でダメが出た分を調整するので、まとまりがいい。ダブり客へのイヤミで(笑)、極力、ビデオへのツッコミも昼と同じものにする。

 終わってまたお客さんたちと雑談少し。裏モノのIPPANさんがいいネタを持ち込んでくれた。他にも常連さんなどに挨拶。楽屋で眠田さんが“ああ、こないだ(オタクジェネレーションギャップ)に比べてやっぱり充実感あるなあ!”としみじみ、叫んでいた。トーク血糖値がひさびさに上がった、という感じ。眠田さんは終電あるので帰宅。岡田さんのスタッフ、K子らと十人ほどで『炙り屋』で打ち上げ。ヤナセくんと鉄ちゃんばなしいろいろ。鉄ちゃんは自分たちのことを“われわれ「鉄」は”と言うのですか。斎藤さんと、“志ん朝さん亡き後の落語について、トークしたいですねえ”と話す。

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