裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

火曜日

京極の興廃この一戦にあり

京極夏彦さんゲスト記念タイトル。

※リーディング原稿リライト 『ルナティック映画祭』

朝9時起床。
暑さはとうに去ったが湿気はまだ残っている。
除湿にしても冷えるし、面倒な季節ではある。
9時半、朝食。
バナナダイエット一式。

B社から資料がどかんと届く。
明日から読み込み作業である。
今回の舞台、自分がメイン出演者でないことで、
いろんな仕事はキャンセルせずに済んでいる。
うまい具合に時間をずらせているので、カメオ出演の
『黄昏モンスターズ』にも全舞台出演できている、が、
ついにカチあった出演依頼が来てしまう。
またまた『世界一受けたい授業』であるが、出演するとなると
昼の『黄昏』を終えてすぐスタジオ入りせねばならない。
「5時以降で」
とオノは先様に頼んでいるらしいが、さてどうなるか。

もうひとつ、これはこっちのスケジュール管理ミスであるが
最初、うまい具合に二つ予定を済ませてそれから下北に
駆けつけて、と踏んでいたがダメになり、
結局カウンタックーズのコントは観られぬ羽目になりそう。

リーディング用台本、鈴木希依子ちゃんの役をつけ加えて
書き直し作業、と思ったが二村ヒトシさんの原作を読んでみたら、
書き直さなくてもこの役まんまでいいじゃん、という役が
あったので、それを送ることにする。とはいえ、打ち直しがかなりな
作業量。昼は弁当。立ったまま、掻き込むように食べる。

『国立国語研究所』なるところから、私の著作のいくつかを
“現代日本語書き言葉均衡コーパス”というものに採録したい、
という依頼が来る。何冊か依頼されたが、どれもどういう基準で
選んだのか、よくわからないのもある。書き言葉、ということだが
対談集が二冊もあるし。

5時、家を出て下北沢。
向かう途中、Tくんから電話、昨日酔っぱらって
カメラを無くした、と。うひゃあ。
本日の打ち合わせざっと。
清水監督から、ちょっとご家族が入院したので、そのもろもろが
終ってからでないと動けないとの連絡あったそうで。
シブヲさんから、ヤフオクで落としたという幽霊画を見せてもらう。
一陽斎豊国との書名があるが、豊国の書名は単に“豊国”というのが
普通なので、ちょっと怪しい。とはいえ、幽霊画としてはなかなかの
もの。

6時、京極さん入り。
ハッシーより本日の段取りを説明。
山田監督の新作『妖怪くノ一大戦争』の最新編集版を持ってきて
くれる。もちろん、京極さんの編集である。
「こう言っては失礼ですが、演技がお上手ですねえ」
と言われるので、いえいえ、現場で初めて台本読んで(送られては
いたのだが、新幹線の中でも原稿書かねばならなかった)、
ひとつこれは大月ウルフで行ってみよう、と思ったので、と
言ったら“あ、大月ウルフでしたか!”と。
あとは楽屋で雑談。クラシックアニメ本のことなど。
京極さん、
「むかし、僕は唐沢さんのコスプレをしてビデオを撮った
ことがある」
と。時期を聞くとほとんど私が例の格好を定着させようと
意識しはじめた頃で、たぶん、日本で最初に私の姿を認識した
人の一人なのではないか。

で、開演、お客さん大入り。
ルナの劇団員、関係者が撮った短編映像を見せるという趣向
だったんだが、これがオモシロイ。それぞれの個性が出ていて、
きっちり作るやつ、投げるやつ、わけのわかんないやつ。
テリーの投げ、乾きょんのナルシー、菊ちゃんの案外な作り込み、
岡っちの天然びびり、NCの前衛(?)。
新人のじゅんじゅん&あゆみの作品が案外ショッカーだったり。
京極さんが見ながら隣の席で吹き出していたり。
で、京極さんのコメントがいちいち面白い。
こっちは何もしなくていい感じなので、今日はほとんどお客にならせて
もらった(体力が極端に落ちていることもある)。

終って、唐沢賞と京極賞発表。
私が菊にあげたら、京極さんも菊のを第一候補に選んでいたらしくて
じゃあ、と次点でテリーのが選ばれる。
実はテリーは京極さんの作品を全部読んでいるほどの大ファンで、
京極賞の商品の、背中にサインが入った甚平を、本気で欲しがって
いた。自分のが選ばれたときの、やったー! というポーズが本当に
嬉しそうだった。

で、大賞はプロの女性監督が撮ったサイコもの『アニバーサリー』。
主演の乾恭子が凄い存在感を見せる。
さらに、橋沢進一主演の『明日のれるかな。』も上映。
人情父娘もの。子役たちが抜群にいい感じで撮れている。

終ったあと、物販。阿部能丸くん、笹公人さんなど。
11時にまで延び、打ち上げは新台北。
集英社の人、大沢企画の人に名刺渡されるが、ちょうど切れている
時だった。やんぬるかな。
京極さん、ハッシーに“(この映画祭)来年は僕も出品します”と
言ってくれた。

京極さん一行帰ったあと、乾きょんや照明のMくんなどと、
長野花火行こう! と盛り上がる。盛り上がりすぎて、また今日も
3時になってしまった。
これが原因で死んだら盛り上がり死にだな。
帰宅、ベッドにもぐり込むが、いろいろ考えること多し。

※京極賞の甚平を着てご満悦のテリー。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa