裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

日曜日

僕の上司はMでね

007のセリフだと思った人……スパイ小説ファン
Mの女上司に責め役を押し付けられた社員のセリフだと思った人……SM小説ファン

※ビデオ台本 資料受け取り、送付等雑用

朝、10時近くまで寝る。
二日酔いはないが、ひたすら眠い。
10時、朝食。
デコタンゴールとイチゴ、アスパラガススープ(今朝はホット)。
サンジャポで今枝弁護士の泣くところなど見ながら。

読売新聞、昨日の『編集手帳』に、昨年12月に亡くなった
スポーツ実況アナウンサーの志村正順さんのエピソードが
書いてあった。
《杉下茂投手の球が打者、藤尾茂選手の下っ腹を直撃した。
1955年6月7日の巨人―中日戦である。実況の志村正順
アナウンサーは
「当たりました。なんと藤尾の“き…”」と言って絶句した。
志村アナは机の下で隣の解説者、小西得郎氏の靴を蹴った。
「き」の続きはあなたが言え、という。二度、三度と蹴る。
「何と申しましょうか」の小西節はこうして生まれたと野球評論家、
近藤唯之さんの「プロ野球監督列伝」(新潮社)にある。
急所の「き」やら、何の「き」やら、二人の呼吸が愉しい》
しかし、この執筆者はこのとき、小西得郎が何と言ったかの
答えを書いていない。これでは読者には隔靴掻痒である。
小西氏は結局、この事故を
「これはもう、ご婦人にはわからない痛みでありまして……」
と表現して、流行語になったのである。
何だろう、今これを書くと女性差別だ、とか言われるのかな。

朝日、書評欄に本日私の書いた芦辺拓氏の『裁判員法廷』の
評が載るはず、と思っていたら、芦辺氏からお礼のメール
届いていた。別に私が推してこの本を入れたわけではなく、
最初から候補本に入っていたのが私のもとに運良く落札された
だけで、お礼されるようなことはしていないのだが、
喜んでくださったのは嬉しい。
http://book.asahi.com/
↑水曜日くらいからここで読めるはず。

トリックが凄いとかシミュレーション小説として新鮮だとか
いうことはほとんどの人が指摘するだろうから、私は私らしく、
「なぜ、この作品が近未来が舞台で、ツンな眼鏡美女まで
登場するというイマ風な作りでいながら、いつもの芦辺作品と同じ
ノスタルジックな雰囲気が横溢しているのか」
というところに評の焦点を当てた。
芦辺氏がこの解釈に満足するかどうかはともかく、
担当編集からは“この作品の読後感のよさの拠って来たる所以が
わかって膝を打った”と言われた。そしてその後、彼続けて曰く
「(唐沢さんや芦辺さんの)世代が、無条件に正義の概念や
知の力を信じることの出来る最後の世代なのかも」
と。これが本当であればいい時代に生れたものだ、と思う。
しかし、これがノスタルジーなのは、後の記述でも書くが、
いまや“正義”の概念が奇妙にネジくれているからである。

ビデオ台本書き、自室に戻って日記より先に。
1時過ぎまで、これにカカリッパナシ。
とはいえ、一度も途中で引っかからずにすらすらと書ける。
“アテて書く”ことの大事さを改めて想う。
アゲてからコンビニに走り、自分の書いた書評の載った朝日新聞
を買おうとしたら、もうなかった。夕刊のない日はもう少し
遅くまで置いてくれればいいのに。
ちなみに、朝日は書評委員にも、掲載紙を送ってこない。
「新聞をとってください。購読費もギャラのうちに入ってます」
ということだそうである。しっかりしていらっしゃる。

と学会MLやマイミクさんのとこの日記で、読売ネット『発言小町』の、
『オタク趣味な夫 疲れた妻』トピが話題に。
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2008/0418/179185.htm?o=0&p=0
要するに、オモチャオタクの夫のコレクションを全部、
夫の留守中に処分して夫婦ゲンカになった妻の、
「たかが人形でケンカするなんてまるで子供みたいです。
どうすれば夫を反省させれるでしょうか?」
という発言に、回答者たちが彼女を袋だたきにしている図。
26日夕方の時点でコメント数が三百数十本。
とはいえ、討論が盛り上がっているのではなく、
数個のものを除き、ほぼ全てがこの妻を一方的に非難している状態。
昨日書いたデビュー時の萩本欽一は一人で相方を追い込んでいたが
今のネット書き込みはほとんどがよってたかって一人の人間を……の構図。
憎むべきオタクの敵だが、こうなるとちょっと哀れ(釣りの可能性も
かなりあると思うけれどね)。

私もこの妻は(実在するとして)馬鹿だと思うし、本と
ロボットフィギュアの違いはあれコレクターとして恐怖を感じるし、
なによりこれは歴とした犯罪であるが、
それにしても、この一方的袋だたき状態は異常である。
20〜30個も同系統のコメントがつけば、
後はわざわざ自分がことさら屋上屋を重ねなくとも、と普通は
思うはずで、それ以降の書き込みはただ、この妻を精神的に
追い込もう、まいらせようという目的でのみ、書き込まれた悪意、いや、
書き込んだ本人は“こういう人を精神的に痛めつけることは
正しいことだ”という意識でやっているのであろうから
“善意の悪意”というべきか、とにかく集団リンチである。

私は人道的にこういう行為はけしからん、と言えるほど人格者でも
ないし正義漢でもない(だからこそ正義に憧れを感じるが)。
人間の集団というのは昔からこういうもので、たぶん未来永劫、
こういうものなのだろうと思っている(ついでに言うと、私のような商売は
叩かれるのも半ば仕事みたいなもので、それに耐性がなくてはそもそも
こんな職業はやっていけない)。
しかし、麻生美由樹、瀬尾佳美、そして今回のこのトピ主と、
ネット上での数の暴力にさらされている例がこう続くと、
何かそれが、“情報化社会”における病理の露出鉱のように思えてもくる。
山本夏彦も指摘しているが、“正義”の表明くらいウサンなものはない。

台本を演出の山口さん、各出演者にメール。
パソコンを持たず携帯で読む人がいるのでちょっと苦労。
そうこうするうち、5時過ぎ。
地下鉄とタクシーで渋谷。
資料注文していたアマゾン、タッチの差で留守票が。
電話して受け取り、それから、杉ちゃん&鉄平に送る資料を
梱包して、近くのローソンで送付。

バスで帰宅。
連絡いろいろとって、9時過ぎ、夕食。
猪肉の肉ジャガ、カニ酢。
小説の資料ビデオなど見て、1時半就寝。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa