裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

20日

日曜日

出来ることから、ぼつぼつと

まあ、気がむいたらぼつぼつ。

※平山亨さん打ち合わせ 『御利益』四日目

御利益四日目。
朝9時起床、朝食その他如例。
昨日、楽屋でなべさんとも話したのだが今回の芝居、
始まってしまうと一瀉千里にラストまで行くのに、
なぜかもう一ヶ月も公演している
ような気がする不思議な芝居である。
やっと半分が過ぎ、折り返し点。
プロデューサーとして、出演者及びスタッフの熱演、好演に
感謝。

山口さんから、銀小での稽古風景が予告編になってYouTube
にアップされる。
http://jp.youtube.com/watch?v=oIsntOtpC3g
↑やはり麻衣夢ちゃん中心になるな。

13時、家を出て荻窪。
今日はマチネで新人たち中心の舞台『泣けるルナティック』がある
のだが、公演中で体があく時間帯は全て仕事関係にあてねば
ならぬ。ルミネ5階のカフェペトロで平山亨先生待ち合わせ。
半に見えて、いろいろと打ち合わせ。
主になるのは、平山さんのお作りになった企画に、イラストレーター等を
つける打ち合わせである。
「……なにしろ僕は今まで、石森先生や水木先生とばかり
仕事をしてきたんで、イメージ画を描く人に不自由して
こなかったんでね」
とおっしゃる。
しかし79になって企画書をいくつも持ち歩いているとは、
さすがだなあ。

4時、下北沢で小屋入り。コンビニで冷やし中華買って
昼飯がわり。駅前劇場のドアをあけたら、×が子供連れでいた。
私がいないので、伝言を書いているところだったとか。
ちょうどよかった。
子供を受付の舞ちゃんが凄くかわいがっていた。
実際、手をふるしぐさとかが大変におもしろい。

×、今、二人目の赤ん坊がお腹にいるというが、全然、
あの当時と変わっておらず。
彼女があそこをやめるときの、あの男の人間性のひどさ、
それを間近に見ながら何もできないあそこのメンバーのダメさは
十二分に見て、私もあそことは手を切るべきか否か、その晩一晩、
悩みに悩んだ(MやKがやめた遠因も結局は、あのときあそこの
本当の姿を見てしまったことのショックである)。

あのときあそこから思い切って足を抜いてしまえば、
あれからの私の人生もだいぶ変わっていただろう。
しかし、悩んだ末にあそことそれまでやっていた仕事がまだ
続いていたことを言い訳にして、私はあそこに残った。
本当は、私の残った原因はまた他にあったのだが、
それはまだ言うべき時期でもない。
それがいい選択でなかったことは後で実際に形になって私を苦しめた。
彼女を私は見捨てた形になった。
それは今でも後悔している。
唯一の救いは、そのあと、彼女が
「あそこにいた地獄のような時期も、唐沢さんがいて盾になってくれて
いたから耐えられた」
と言ってくれたこと、また今の彼女がとても(そう、とても)
幸福そうなこと、そして、あのとき残ったことで、
ハッシーとつきあいが生れ、今回、この本当にやっていて
楽しい舞台を、楽しい仲間と一緒に踏んでいられるということである。
この舞台で、大きな円環が閉じた気さえしている。

準備中、早さんが錠剤をみんなにわけている。
飲むと一日中、吐息がバラの香りになるという錠剤だそうである。
どれどれ、と一錠貰ってのんでみたら、冗談でなく、
ホントに吐く息がバラの香りである。
体が芳香剤になった気がして、非常に気分が悪くなった。

午後6時、ソワレ開始。
前の日まであまりウケなかったギャグ、手直ししてみたら
ドッとウケた。何でもっと早く気がつかなかったか、と臍を噛む。
非常に順調な進行、最後の踊りまで気分よし。
今日は客席に佐藤歩ちゃん、水谷紹さん、なんと石森史郎先生、
そして朝日のK藤くんとNアニキが来てくれた。

石森先生に褒めていただいて恐縮、まさか来てくださるとは。
水谷さんにはワイン差し入れいただく。
麻衣夢ちゃんに教えて水谷さん見せたら“うわー!”と驚いていた。
物販の人気は出演者全員サイン入りのポスターであり、
これを複数、書くのに非常に時間がかかる。

早めに下がらせてもらい、近くのホルモン焼き屋で待っている
オノ&マドとK藤、Nの二人と合流。
ここには乾ちゃんも彼女のファンたちとやってきて、
後でハッシーたちも麻衣夢ちゃんや他のみんなを引き連れてきたが、
一杯で入れず、挨拶のみ。

K藤、Nアニキ、両氏共にNC赤英を絶賛しているのに
オノが大笑い。Nアニキ曰く
「あの目にはオトナの哀愁がただよっている」
とのこと。あと、今K藤くんが押し付けられている仕事の話、
Nアニキが“お前なんかいいよ、押し付けられるも何も、
オレ、入社以来いっぺんもやらせてももらえてないんだよ”
とボヤくのに、オノ、さらに大笑いして涙をぬぐっていた。

12時過ぎまで延々飲んで食っていた気がする。
ニンニクもバクバク食って、さっきの錠剤のバラの香りを
消そうと頑張る。普通は逆なのだろうな。
ハッシーや麻衣夢ちゃんの一行は11時くらいにお開きで、
「唐沢さんたち、まだ絶対やってるだろうから顔だけ見て
行こう」
と言って(うれしいじゃないですか)、のぞきに来てくれた。
もっとも、その頃には焼酎がかなり回って、記憶も定かでない。
タクシーで帰宅、やれ楽しやとベッドの中へ。
いろんな思いが頭を交錯する。
この楽しさをカタチにしていかないといけない。
せっかく、やっと苦悩のあの日々からここまで来たのだから。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa