裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

土曜日

ご冗談でしょう、ファイヤーマンさん

「不思議の謎をとかねばならぬ」なんて。

※台風 体調不良

特撮関係の有名なゴロがいて、それに関するいろんな
逸話が知人友人達から語られる夢。
なんかSF映画っぽいコスプレをした写真などもあり、
関係者でもないのに製作現場にまぎれこんでいたとか、
女優さんをだましてつきあっていたとか。
夢っぽいのは話が進むにつれて時代がどんどん遡って、
しまいには(寝る前に見た『蝶々失踪事件』のせいだろうが)
昭和二十年代風のビルの中で行われている美術展。
いろんな彫像や絵画が並べられているが、
これがそのゴロに騙された女の作品で、
どの人物像にも顔がない。
踊っているダンサーものっぺらぼうの仮面をつけ、
「♪不思議なことに顔がない〜」
と歌っているグロなもの。

目が覚めると雨の音、耳に響く。
時計を見るとまだ3時半。
やはり早寝はダメだな。
岩波書店『明治文学全集2』を開いて、
岡本起泉『沢村田之助曙草子』を読む。
男色ばなしあり因果応報物語あり幽霊譚あり彰義隊の軍談あり
而して手足を失った田之助の舞台のグロテスクあり
という盛りだくさん。

9時15分、起きだして朝食。
リンゴ、ラ・フランス夫々三切れ。スチューベン数粒。
コーンスープマグカップ一杯。
内藤ルネさんの訃報ニュース、おくればせながら。
ニュースではそこまで伝えていないが、同居していたパートナーには
ゲイカップルゆえに何の権利も認められていないようだ。
今後遺産問題をめぐって紛糾するのではないか(特に膨大な作品
コレクションなど)。養子縁組しておけばよかったのに、と思う。
折口信夫と、愛人の藤井春洋も養子縁組をしていた。春洋は戦死
してしまうので遺産を与えることは出来なかったが。

台風ますます猛威をふるってくる。
CDで雷門福助の落語を聞く。
“お題ばなし”って、なぜか親父の小言にするのが
多いねえ。
開田さんから『特撮が来た!』15号の原稿依頼。
もう15号か。思えばと学会が結成されて15年、開田夫妻
とのつきあいは17年に及ぶ。開田さんが(ダイエットした以外)
ほとんど変わらないので意識しなかったが。

気圧のせいで神経カリカリする。
少しは気を静めようと、“全身毛穴ケア入浴剤”なるものを
入れた風呂に浸かる。パパイア酵素などの含有で、全身の毛穴
に溜まっている垢などの汚れを分解する、という謳い文句で、
10分も浸かっていると、風呂の湯面に溶け出た汚れがいっぱいに
浮かぶ、とデモビデオでは言っていた。
やってみると、なるほど細かい泡がやたら湯面に浮かんでくる。
しかし、分解された汚れというよりは、単なる酵素の泡のように
思える。第一、15分から20分は浸かっているように
指示があるので、のぼせないように湯量を少なくしているから、
下半身の汚れしかとれない。
結局、少しのぼせただけで、あまりスッキリとはしない
浴後感ではあった。

ちょっとスッキリしたのは仙台旅行、あのつくんが一乃谷を
予約してくれて、ツアコンも引き受けてくれた。
これで向うでの日程は安心。

雨止まず。昼寝少し。宇野信夫『自選世話物集』(青蛙房)
読む。私にはどうもこの人の戯曲はピンと来ず。
役者に当てて(この役はこの役者が演ずる、と最初からあてはめて)
書く人なので、その役者をよく知らない身にはよさがわからない
のかもしれぬ。

サントクで買い物。本日外出はこれだけ。
帰宅して少し仕事、『創』の対談にさらにつけ足し。
豚ヒレ肉の醤油漬け(塊を蒸して醤油に30分漬け込むだけの簡便
つまみ。醤油だけでいいが、ちょっとニンニクおろしも加える)
を作り、さらにタラとハマグリのブイヤベース風を。
赤ワイン(三千円の新式栓抜きを用いるが、コルクが乾燥して
しまっていてダメ。しかし、この栓抜きの梃子を逆に使って、
そのコルクをビンの中に押し込んで落としてしまうことに成功、
無事飲める)で。

森田芳光監督『メインテーマ』(1984)見る。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005S793/karasawashyun-22
薬師丸ひろ子と野村宏伸のロードムービー。
大家になる前の森田演出、前作の『家族ゲーム』では
テーマにぴたりハマっていたが、今回はアイドル映画であって、
テーマも何もなく、ひたすらポップで奇妙な演出のみを突出させている。
ラジオスタジオ前で、録音マイクをやたら褒めている通行人、とか。
ラスト近くのキスシーンでの大花火とパレードも奇妙。
バブル時代でなくては出来なかったノーテンキ演出だろう。

冒頭、幼稚園の先生の薬師丸ひろ子が、あこがれている
中年男性(財津和夫)にポーッとなって、ちょっかいかけた
園児を無意識にひっぱたくシーンが(そのひっぱたき方がリアルで)
笑える。次のシーンではもう薬師丸は幼稚園をクビになっているのに
さらに笑う。初期森田演出の妙。

薬師丸ひろ子が天然ボケ役で、しかも中年男性との不倫に
あこがれている、という設定なので(それ以前に演出のわからなさ
とストーリィ性のなさで)ひろ子ファンには評判が悪い映画だが、
森田ファンにとっては伝説的作品だろう。現になをきはこの映画を
薬師丸ひろ子映画のベストに上げている。
野村宏伸はマジシャンの卵という設定なのに全くそう見えないが、
見えるようにしてないところも森田演出なのかしらん。
彼の師匠の、やたら早口でしゃべるマジシャンが面白い。
演じるは『家族ゲーム』にも出ていた故・加藤善博。
つくづく、惜しい役者であった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa