裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

14日

日曜日

去りゆくアニオタに贈る言葉

社会常識をつけて戻ってこいよ〜。

※風邪っぴき 資料本探し

朝まだ風邪で頭が重い。
寝床の中で『みんな気持ちよかった! 人類10万年の
セックス史』(ソニー・マガジンズ)など拾い読み。
頭がボーッとしてきて、また寝る。
9時過ぎ、電話で起こされ、朝食。
プルーンみたいな大粒ブドーに梨、冷やし茶わん蒸し。

午前中はただボーッと。
しかしただボーッとしていると時間があまり過ぎていかない。
用事をしはじめると、もうこんな時間か、になる。
台湾旅行について、幹事のK川さんより返信あり。
いろいろ残念。代替を考えねば。

肌寒く、夏以降初めてエアコンを暖房にして入れる。
昼はゆうべ買った小鯛の刺身でタイ茶漬け。
ノリとシソの刻んだのをたっぷりかけて。
それから、落語のCDをいろいろ聞いたり。
http://jp.youtube.com/watch?v=DhcuPsw42vA
↑中島りも(中島らも)のオリジナル超大作落語『甚兵衛の一生』
@王立寄席。

4時、家を出て事務所へバスで。
資料本探そうと思ったら廊下の本棚にある本が
すっかり片づけられていた。
ちょっと困る。

なんとか別の資料を探しだし、ホッと一息。
『トンデモ本の世界V』重版分からの黒川氏の
『TOKYO大改造』評の末尾につける追悼文を書いてMLに流す。
東急本店で買い物して帰宅。
頭のボーッとはとれたが今度は体が異様にダルく、
8時過ぎまでベッドで横になる。
私としては重篤のうちに入る状態である。

8時15分、起きだして、『風林火山』見ながら
キムチ鍋など作る。が、あまり味がしない。
ホッピー飲みつつ、DVDで増村保造『巨人と玩具』。
いや、これも久しぶりの映画だが、今見ても新鮮、奇抜、
驚愕の傑作。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B000VD3CO2/karasawashyun-22
↑ここでの内容紹介は(楽天でもそうだが)大嘘で、
増村のデビュー作の『くちづけ』のものになっているので
信じないこと。〈ストーリィ〉も、まるでこの作品の面白さ
を表わしていないので信用しないこと。
なにしろオープニングで流れる歌の歌詞が
「♪ドコドンドコドン太鼓を鳴らせ
 ドコドンドコドン夜が来た
 ドコドンドコドン闇から闇へ
 ドコドンドコドン駆け抜けろ
 足音たてず刺し殺せ 足取り軽(かろ)くぶち殺せ
 殺して流した赤い血は(シュビドゥビジャン シュビドゥビドウドゥ)
 土人の女に売りつけろ
 喜ぶことは請け合いだ(ルーラップリバーラ ルリルリラル リバップ)
 踊れや踊れや死神だ
 捨てちまえ捨てちまえ 捨てちゃえ
 死んでる奴は仕方ない」
なのである。そのぶっ翔び具合はわかるだろう(ついでに、
何で再評価が難しい作品なのかも)。

アマゾンのDVDストーリィ紹介には
「元気と笑顔だけがとりえの平凡な娘・島京子はひょんなことから
製菓会社のマスコットキャラクターに選ばれ、宣伝部員・西洋介らの
手によってスターダムにのし上がって行くのだが……」
とある。まるで、大手企業に運命をもてあそばれる庶民の悲劇、
みたいにとれる紹介だが、トンデモない。
むしろ、彼女に振り回されるのは主人公の川口浩始めとする会社の方
なのだ。虫歯だらけ(というより透きっ歯)の女の子を
何とか“現代の顔”に仕立て上げようと努力する彼らの姿は、
プロデュース経験などもある身にとって、他人事と思えない
悲喜劇であった。契約で彼女を丸ごと縛っていない、という
設定なのは時代の甘さだろうが。

とにかくドライでスタイリッシュでサタイア満載な映画なのである。
登場人物たちがみなリモコンの玩具のごとく
チャカチャカ動き、凄まじい早口でしゃべる。
人物像は徹底してカリカチュアライズされ、深みを与えられず、
その分キャラクター設定に忠実すぎるほど忠実、
目が回るほどスピーディなストーリィ進行に押し流される
ようにして話は進んでいき、高度経済成長時代の奔流の見事な
標本化となっている。

1958年、私の生れた年に作られた映画だが、
あの時代というのはこんなに刺激的で面白い時代だったのか、
と改めて生れてきた時代の遅過ぎたことを悔やむ。
もちろん、その面白さというのは、目まぐるしいほどの
社会変化をリアルタイムで体験できるという、ジェットコースター
的面白さであって、振り落とされて命を落とす危険性も大いにある。
実際、昭和30年代というのは少年犯罪の発生率や自殺率が
ピークを迎えた時代でもあった。
『三丁目の夕陽』のようなのほほんとしたいい時代では
決してなかったのだ。

演技陣もみな見事、ことに高松英郎の宣伝部次長には
車周作以降のガンコ親父キャラの高松しか知らない人は
衝撃を受けるかもしれない。
宣伝車の中で薬を飲む高松に、川口浩が
「覚醒剤ですか」
と言うのにぶっとぶ。もちろん、もうこの時代には覚醒剤
は禁止されているが、病院ではヒロポンが普通に処方されていた。

12時、シュビドゥビジャンシュビドゥビジャン、などと
口づさみつつ就寝。
作った料理はだいぶ残してしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa