裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

火曜日

オブライトにくるんだ言い方

「私がスープレックスをかけたら、あなたは首筋のマッサージを予約しないと
いけないことになるんじゃないでしょうか」
                      (ゲイリー・オブライト談)

※『浜美枝のいつかあなたと』収録 オタク清談収録 朝日新聞原稿

朝、8時半起床。
空は雨もよいでどんより。
入浴して、9時朝食、『特ダネ!』の温故知人で
花禄が林家三平を扱っていた。
こぶ平が、“めくりが返って「三平」と出ただけで
客席が爆笑していた”と証言していたが、
その感覚は私にも覚えがある。
“白痴番組の帝王”というスゴい評価をされた
『歌って踊って大合戦』(昭40)など、集団狂気としか思えない
番組が成り立ったのも、昭和3,40年代、キューバ危機以降の、
明日にも水爆戦が始まるか、という精神的ストレスの
排気システムとして三平という破天荒なキャラが
機能していたのだろうか(いささかカルチュラル・スタディーズ
的な考察だが)。TOKIOの山口達也が三平を演じた
『林家三平ものがたり』の、この番組のシーンは
かつての狂気を再現した傑作らしい。
今度、DVDで見てみよう。
師匠の圓蔵を“しっとりとした口調の芝居噺を得意とした”
なんてサイトで紹介してあるので、見る気もなくしていたのだが。

午前中の時間を何となくもてあます。
今日は3時から浜松町(文化放送)なので、
今から仕事にかかると半チクになってしまうのである。
昼は握り飯(オカカ)とサバの塩焼き。

2時に家を出て、丸ノ内線で新宿。
山手線で浜松町。
新宿で連続で大崎止まりが来たのでちょっと遅刻。
浜松町駅北口でオノと待合わせ、立派になった
文化放送ビルへ。
一階(地上)でどこから入るのかウロウロしていたら
放送作家のMさん(マイミク)から電話入り、二階(歩道橋の
上)が入り口、と告げられる。

スタジオに入って、さっそくもうスタジオ入り、
浜さんと寺島尚正アナウンサーがもう番組収録を始めている。
寺島さんはダーリン先生のライブに、漫才コンビ“内海文化・QR”
で出演していた。その話も。浜さんには例のスクラップ集
お見せする。懐かしがってくださった。

収録は25分、今日はミニコーナーも飛ばしますので
好きにしゃべってくださいと言われて、ソウカと思って
少し飛ばし過ぎてしゃべったことに、発言してから1分後くらい
に気がつくが、もう遅い。最初に打ち込んだ釘はそっちの
方に打ち続けるしかない。

結局、凄まじい勢いで、朝の番組にもかかわらず早口で
カルト映画のことを語りまくる(まあ、台本がそうなっていた
のではあるが)変なおじさん、になってしまった。
視聴者はどう思うかなあ。
Mさんは喜んで大笑いしてくれていたようだが。

オノが、ここ(文化放送ビル)の12階のホールのことを
Mさんに訊いておいてくれた。『浜松町かもめ亭』という
定期の落語会にはブラックも出るようだし、中村福助が
落語やったりしたようだし、いろいろ使えるかも、という話。

終って山手線で目黒まで行き、タクシーで渋谷。
浜町町の空が真冬のそれのように暗く、品川あたりも夕方の
ような暗さ。低気圧のせいだと思っていたが、昼に京橋で
電器店の火災があり、電子機器が焼けてすさまじい煙が出た。
そのせいで都内中心部がかなり暗くなったらしい。

時間割に予定の2時半ぎりぎりで飛び込む。
岡田斗司夫とのオタク清談。
NHKの人が岡田さんと打ち合わせしていたが、
私に会いたくて待っていたらしく、名刺交換。
何か企画予定があるらしい。

オタク清談、構成のバーバラがネタを決め忘れていたが、
もうこの連載もこれくらい続いていると、ちょっときっかけ
さえあればそれをネタに一時間くらいしゃべるのは
朝飯前。さっき浜さんの番組でも振られた、
ノスタルジーブームについて。
ダイエットで一山当てたあとの岡田さんの今後のプロジェクト
を訊いてぶったまげる。そうきますか。
例の件、Kさんが解熱剤をのんで書き上げた抗議文の話に笑う。

終って事務所に帰り、朝日新聞書評用原稿書く。
800W、言いたいことを言うにはホンのちょっと足りず、
あっちを削りこっちを省略して、何とか過不足ない
ものにまとめる。

『東京人』より原稿依頼。
担当はKさん。学歴高く、美人で、“しっかりとボケる”人、
という印象だったな、前回は。
また仕事ができるのは嬉しい。

雑用仕事片づけ、8時半、バスで新中野まで。
夜の乗客の少ないバスのアヤシゲなムードはいい。
怪談映画みたいだ。
サントクで買い物、鳥肉団子があったので、
これでつくね鍋。味噌味を濃くしたのが正解。
鍋のときはさすがに日本酒にしたが、そのあと、
ホッピーに切り替えようとしたら切れていて、仕方なく、
チェリーコーク割りの焼酎を飲んでいたら変な酔い方をした。

*写真はバスの中に貼ってあった、不正軽油を無くそう、という
趣旨のポスター。日野日出志かと思った。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa