10日
土曜日
先生と芸人、の記
朝早く起きようと思ったが7時半くらいになってしまう。急ぎ日記つけ、アサ芸『こんニュー』原稿にかかる。朝食はさみ6枚半、10時間近に完成、編集部とイラストレーターにメール。
それから本日の衣装用意して仕事場に出勤。11時のマネとの待ち合わせまで30分しかないが、その時間で週プレ『名もニュー』片付けねばならない。みんな来週の連休が悪いのである。
階下で待っている六花マネから電話で、11時15分に迎えに来るはずのタクシーがもう来ているという。待たせておいて、と答えて、結局11時半までかかって『名もニュー』4枚半、片付けて出る。麹町日テレスタジオ。
麹町はもうゴーストビル状態でどこかに売られるか取り壊されるかするのだとばかり思っていたら、慢性のスタジオ不足でしばらくはここ、そのまま使うことになるらしい。六花マネに言わせるとこのビルは宮崎駿が『ハウルの動く城』のモデルにしたと言われている継ぎ足し継ぎ足し建築の代表だそうだが。スタジオ会議室(控室代わり)に入り、本日のネタのVTR見る。
今回のネタはどれも局側としては自信作らしい。打ち合わせ終えて弁当使う。今半の焼肉弁当だったのでマネ、“おお!”と写真撮ってる(笑)。本番、いつもの通り。
堺校長の仕切りでということで進行していくが、あまりこれまでと差はなし。私も充分にしゃべる。
アルゼンチンの場所がちょっと混乱して恥ずかしかった。ゲストのkabaちゃんと石田純一がいろいろ頑張ってくれてよし。特に石田純一の自虐ネタには感心。“このキャラでメシを食う”覚悟が見える。金田一少年を今度演じるという亀梨和也、何もしゃべれず。共演の加藤雅也はいろいろ番組に参加していてよろしい。菊川怜は可愛げは出てきたが、普通の女の子になっちゃったな。柴田理恵、伊集院などレギュラーはいつも通りのノリ。VTR長いのでもっとオスかとみんな思っていたようだが、ディレクターの進行指示よろしく、いつもより15分伸びたくらいで終わる。一ケ所読み間違いあり、訂正で再録音。あと、番宣用の、これからスタジオ入りするぞ、という絵を撮ってオシマイ。
タクシーで東京駅まで送られる。しかし、東京駅着が2時半、小田原行き新幹線が4時50分。お茶して待つにも長いので、一旦渋谷へ帰ることにする。
仕事場、K子と掃除のおばさんが来ていた。メールのみチェックして、1時間ほど横になる。それからまたタクシーで東京駅、こだま550号で小田原へ。さすがモルガン、たかだか30分の乗車だがグリーンを取ってくれていた。小田原着、タクシーでそこから40分(新幹線より長い所要時間)の大箱根ホテル。
そこを借り切って、お得意さま接待をやっているのである。こないだ恵比須で会ったUさん、Sさんと挨拶、昨日の朝、電話があった映像関係のプロダクションの人と打ち合わせ。
今日のクイズの問題をテロップにしてスクリーンに上映する、その画面を作ってくれたところだが、どういう伝言ゲームのバグか、ミスやたら多し。その場で手直ししてもらう。わずか四問中半分の二問にミスがあった。“トリビア”が全部“トレビア”になっているのはオジサン特有の間違いか?
地下の控室代わりのバーで弁当。松花堂であって、松茸の土瓶蒸しまでついている。すぐマネが写真(笑)。しかし味は大したことなし。これ幸いで半分くらい残す。ダイエットもあるし、そもそもいまあまり食うと講演のとき頭に血がのぼらない。景品用の自著にサイン。Uさんにも一冊進呈。
「私もサイン欲しいです」
とうので、
「ちゃんとしてますよ、ほら、“Uさんに”って」
と見せると、それまでのクールな“ゲスト担当責任者”の顔が急に普通の若い女性のそれになって、
「キャア、嬉しい」
と、ちょと足をバタバタさせた。女性のこういう瞬間を可愛らしいと思うようになるのはもうオジサンのセンタードンピシャ、である。
で、講演、というか余興というか。テキ(客)が食事中で酒も入っているので、先生ではなく芸人の方にスイッチングし、とにかく話の内容は相手の耳を引き付けることに絞る。つまりはテレビの仕事でどれだけ有名人、というよりアイドルに会ったか、という自慢話である。
大いにウケて気をよくする。さらに証券の会社のニックネームクイズ、これは手始めであったがこれまた反応よし。で、本題のクイズに。プロダクション自慢の集計機がうまく働かないトラブルあり、急遽UさんSさんに各テーブルを回ってもらう。
「やはり機械より美人スタッフが回る方が集計率がよろしいようでありまして……」
などと、聞いていた六花マネが感服したと感想を述べたくらい、アドリブの仕切りと芸人口調がイタについている。いいことなのかどうか、と苦笑。
最後はジャンケン大会、それもこっちで、以前見た噺家さんのギャグ入れて盛り上げる。もちろん、きちんと話もして、
「今日の昼間、テレビスタジオで鈴木健司さんと御一緒してきましたが、鈴木さんのこういう講演を何度か私自身聞きましたが、あの人の講演の凄いところは時計を一切見ないで、30分なら30分、1時間半なら1時間半、ピッタリとプラマイ1分くらいで話を予定通り終わらせるんですね。どうやったらそんな芸当ができるのか、プロダクションの仕事をしていた時に、袖の方でじっと見ていてやっとタネがわかりましたが……」
みたいな話をし、ジャンケンの敗者復活戦からプレゼント贈呈までやって、終わったのが予定の7時30分にプラス1分の31分。
「オレもまんざら捨てたもんじゃない」
と、大いに気をよくする。
Uさんもやや顔を紅潮させて、
「こういう試みは弊社でも初めてのことでしたので、うまく行くかどうか心配でしたが、先生は人を引き付けるのが本当にお上手で……」
と喜んでいた。自分の責任でよんだ“芸人”が受けたのでホッとしたのであろう。学術講演でもない、金貰っての娯楽講演なのだから、聞いている人を喜ばせればそれでよし。こういうクイズというのは他の講演(もっと真面目なもの)でも使えるナ、と勉強になった。つくづく、オレは“先生”じゃないな。
Uさん、基本的に芸人ぽいジャンケン大会の仕切りまで頼んで、こっちが怒り出さないか心配していたようだが、そこはモルガン、1時間のトークとしては破格のギャラなので、もう何でもやります。なんなら談之助に『懐かしのスーパーヒーロー』を教わって演じてみようか。
で、パーティ会上の裏側を見たら、それまで受付係だと思っていた男女が、なにやらマイク握り、会場の模様をモニターで身ながら話している。外人客のための同時通訳であった。国際会議なみ。私のいい加減な話をどう、翻訳したのか訊いてみたいほど。タクシー到着、またつづら折りの山道(“箱根の山は天下の険”を実感した)をたどって、小田原駅まで。
車中六花マネからダメ出し、『プロジェクトX』の主題歌の歌手をユーミンと言っていた、と。まあ、しかししゃべっている頭では中島みゆき、と言っていると思い込んでいるので、絶大なる自信ある口調で言うので、100人からの客で気がついた人はまずいないのでは。ホームで15分程待つうちに疲れがじわーっ、と。
テンション一日に二回もあげるとな。帰りの新幹線の中で寝ようと思っていたらおぐりから電話、予定していたシアターグリーンでの稽古という予定がトラブルあってダメになった、という。さてどうなるか、いろいろ考えて眠るどころでなし。東京駅、10時半。やれ、長い一日であった。六花マネと別れ、タクシーで下北沢。
こないだのイタリア料理居酒屋でK子と待ち合わせ。腹は減っていたがまだテンション上がっているのとからだの疲れとであまり食えず、トリッパとレバペーストで酒。ワインとグラッパ。
ワインはキャンティクラシコ、グラッパはルーチェ。“光”という意味。K子はいろいろと御機嫌。12時半、私はそろそろ帰って寝るというが、まだ飲みたいから、とグラッパをキミちゃんの分も頼んでおみやげにして、虎の子へ行った。
私は帰宅して、水割り缶開けて口をつけたところで限界、ベッドに。