裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

3日

土曜日

古書市と久々の深夜ロフト、の記

朝から気圧不安定。8時半起床。
一応入浴してから朝食。

アラスカあたりの吹雪の山に登り、山頂にて雪に覆われた空、海、街を一望するが、空の厚い雲が割れて差してきた太陽の光の直射を全身に浴びるという夢を見る。何か悟りでも開かないといけないような壮大雄渾な夢であるが別に目が覚めても精神の変化とか、大したこともなし。

朝食、今日は母が早く用事で家を出るので用意しておいてくれたアボカド、コーンスープを自室に持ってきて。食べ終わったころ、K子起きてきて、自分の朝食。二十世紀ナシ一切れお相伴。

ついでにこないだから彼女が一編づつ見ているサラリーマンもののゲイDVDもお相伴。サラリーマンにとても見えないホスト顔のモデルたちがからんでいるが、芝居が芝居になっていないところが笑える。対応が全セリフ“マジスカ”であったり。11時半、家を出て、ちょっとネタ用資料探しあって神保町。

まずは古書会館の書窓会に顔を出し、いろいろと買う。同じ小版カストリでも値段にかなりのバラつきがあったりして、ちょっと首をひねる。掘り出し物的なものは別として、基本的な本の値うちにバラつきが出ているというのは古書業界全体のまとまりが最近欠けはじめているという現れではないか。

アンディ・ウォホールの大判の日記があって値段も6000円と手ごろでソソるが、重くて持って帰るのが大変そうなのでやめる。あと、丹波哲郎先生の催眠術入門など。総額1万と7000ちょっと。バイトの若い子に声をかけられた。そのあと、行きつけの書店に行こうと思ったが開いてない。最近はこういう不定開店の店が増えたなあ。ランチョンでランチ。

古本長家がまた二軒、取り壊されている。残りも風前の灯だろう。神保町に足を運び出してから30年、あの頃とはかなり古書街の様相も変わった。食事手早くすませ、もう一軒行きつけの店へ。

ここは開いていたが買うものなし。結局資料のいいのは手に入らず。地下鉄で仕事場へ。母が掃除に来ている。第二書庫の蛍光灯が切れていたのを東急ハンズで新しいのを買ってきてもらってつけ変える。それからタントン。

台風接近とかや、全身棒の如くにて何一つやる気力出ず。とはいえ仕事累積多々。じわじわと片付ける。メールも数本。9時半、一旦帰宅。

帰宅途中で携帯に“そろそろ原稿を……”という催促あるが、どこからだったやら。家でメシ。肉じゃが、ホタテバタ焼き、ワカメ酢の物。ホッピー一本飲んで、仮眠1時間半。11時45分、家を出て新宿歌舞伎町。ロフトプラスワンで鈴本章氏、江戸拳破氏の『インターネット淫交ムービー』ナイト。エレベーターでバクシーシ山下氏と挨拶。共に今日のゲストである。

楽屋で拳破氏、鈴本氏などに挨拶。企画者であるロフト石橋くんにも挨拶。さいとうさんもいた。さいとうさんに
「なんか肌ツヤいいですねえ」
と言われる。一昨日も二見の営業のYさんに同じこと言われた。夏バテもいいとこだというのに、そんなに顔のみはツヤツヤしているのか?

「ラジオやるんですよね」
と訊かれたので、「6、7日と長野、帰った夜の7日にラジオで、翌日がオタアミで大坂、その翌日が名古屋で」と予定を話すと心配そうな顔をされる。で、12時半からトーク開始、バクシ−シ氏、イラストレーターのラジカル鈴木氏などと共に壇上へ。インターネット上で拾えるエロ動画について、驚くべきデータ収集力と、それら全てを見て内容をチェック、秒刻みの内容紹介まで作ったお二人の労作
『インターネット淫交ムービー大百科』(データハウス)
の刊行記念的イベントなので、われわれゲストはただひたすら、その中から著者二人が拾ってきた笑える場面を見て笑ってコメントをすればいい。楽な仕事であるが、ただいるだけではナンなので、私の世代からのエロメディア史観などを話し、アクセントをつける。

拳破氏の本業は凄い大学のセンセイなので、データの分類と年表作りがなかなかに画期的。ブルセラビデオの元祖的人物であるT氏についてのバクシ−シ氏の解説が抱腹絶倒。もとは岐阜の消防士だったが、副業で消火器の訪問販売を始めて(「“消防署の方から来ました”ってやつですか」「ええ、でもウソじゃないんですよ、本当に消防士だったんで」)小銭を溜め、当時流行していたインベーダーゲーム機を大量に買い込み、岐阜のスキー場施設に設置したが、その年に限って雪が降らず、大借金をこしらえて東京へ逃げ、そこで窮余の一策で頭をひねって考え出したのがブルセラショップであったという。

歴史のイフだが、その年の岐阜に雪が降っていたら日本にあれほどのブルセラブームは起きなかったかもしれず、女子中学生、高校生の性意識の変革は十年は遅れたかもしれない。渋谷センター街のもはや定番となったエンコ−少女たちの闊歩する情景も、もとはと言えば岐阜の暖冬から、と思うと妙に嬉しくなってしまう。いろいろ話し、現在のナンでも見られてかつ質も高いエロ画像が見られる状況につき、見解を述べて3時の休息を機に辞去。明日のと学会例会に、体力は温存しておかないといけない。
実は朝型人間なので、こういう深夜イベントは得意ではない。3時まで、と区切ったのはそこまでが限界と思ってのことだったが、しかし何のこと、壇上にあがればひたすら楽しく、トークも好調。できればこのまま朝までやっていたかった。よほど私はこのロフトプラスワンという場所が気に入っているんだろうなと思う。ここを馬鹿にするモノは語るに足りぬ。お車代いただき、店を出る。

最初から私のトークに爆笑していたお客さん二人組が、
「写真撮っていいですか」
と言ってきたので並んで撮影。
エレベーターにその後乗り込んだら、
「ヤッター!」
という歓喜の声が聞こえた。そ、そんなに嬉しかったですか?

タクシーで帰宅。シャワー浴びて寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa