裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

27日

火曜日

サヨの中山夜泣き石

 毎夜々々、その石からは共産党宣言を朗読する声が……。朝6時頃起床、寝床でだらだらと『守貞謾稿』(東京堂書店)を読む。7時入浴、歯磨等。半、ベル鳴って食堂で朝食。カブサラダにフレンチドレッシングをかけたもの、黒豆。『お笑いマンガ道場』で“木偏にホワイト”とか自己紹介していた柏村武昭アナウンサー(現参議院議員)が、決算委員会で例のイラク事件の人質を“反日分子”と表現して問題になっているとのニュース。イメージとずいぶん違う人だったのだなと驚く。反日分子とはまた懐かしいというか、まだこんなコトバを使う人がいるんだねえ。まあ、放送されてたときからレトロチックな番組ではあったが。ニュースショーはぜひ、富永一朗と鈴木義司に感想を求めにいかねばならんでしょう。ところで、トリビアひとつ。『お 笑いマンガ道場』の構成作家は……三谷幸喜だった。15へぇ。

 いつも通り杉山公園前のバス停まで歩く。25分通過予定なのだが、23分にもう来た。15分のが遅れたのだろうと思う。そのせいか、普段は見ない美少女風の女性とかが待っていた。天気予報、今日は横殴りの雨と風とのこと。歩いている最中はまだ降っていなかったが、バスに乗り込んだとたんという感じでザンザ降りとなる。運がいいのか、放送センター前で降りたときにはまた止んでいて、仕事場に入ったとた ん、またドッと降り出す。

 メールチェック、コミックマーケット実行委員会関係から、岩田次男さんを忍ぶ会に出すお花の件。個人名やサークル名は出さないかも知れないがいいでしょうか、ということだが、まず当然のこと。著者略歴、新著近著の部分書き直してメール太田に返す。それと入れ替わりに編集H氏より、送った図版用ブツのうち一点、ないものがある、との報せ。青くなるが、どうも、副次的に扱った書籍の方を送ってしまったらしい。机近辺をざっと浚ってみたら、無事発見できたのでホッとする。

 風漸次凄マジ。窓外、早引ケニナッタラシイ小学校ノ生徒タチノ、きゃあきゃあトハシャギ叫ブ声ス。気圧ノ乱レ甚ダシク、肩腫レタルガ如キ痛ミアリ。指ニテぐいト押スト、痺レル様ナ痛ミトトモニ、ぽんぷヲ押シタ如クニ脳内に快楽物質出ズルヲ感ズ。1時半頃、弁当用ウ。豚タケノコ炒メ旨シ。ソレト鯖塩焼キ。……コンナ風ニ表記スルノハ『守貞謾稿』ヲ読ンダ影響。コノ東京堂版翻刻(平成四年)ハ校訂編集者 ノ朝倉治彦ニヨルト
「本書には、既に古く活字本があるが、原本と比較してみると必ずしも正確でなく」
 使用ニ耐エナイノデ、正シイ本文ヲ学界ヘ提供スベキト考エテ出版シタトノコトデアルガ、一読シテ見ルニ、“奈良茶”ガ“茶良茶”ニナッテ居タリ、“饂飩”ガ“饂飯”ニナッテ居タリ、“売炭翁”ノ訓ジヲ“バイタレロウ”ト記シタリシテ居テ(何レニモ“ママ”等ノ注無シ)チト校訂ノ精度ニ不安ヲ感ズ。僅々二〇〇頁程度ノ内ニ ざっト流シ見シタダケデコンナニみすガ有ルノハマズクハナイカ?

 1時、やっとフィギュア王用の資料本、届く。ざざっと付箋を貼っていくが、なかなか引用とかで使える箇所多し。目論見は外れていなかった。2時45分、外出。コンビニに寄って太田出版に書影本を宅急便で出す。雨もまだポツポツだが、風が強くてとても使えず。3時、時間割にて幻冬舎N氏。今回のイラク人質事件本を緊急出版したいとの件。単に人質問題でなく、そこから今の日本の、何故か発言権を封じられている感じの40代サラリーマンたちへの指針になるような本を作りたいというN氏の企画意図に共感を覚え、スケジュールはかなりキツキツであるが、語りおろしなどを交えられれば、と了承する。他の書き下ろしも含めて、これで連休はほぼ休みも何もとれなくなる。まあ、もっともフリーの身で連休に休む気もないけれど。

 1時間ほど話して、外へ出る。雲行きなお怪し。街路のゴミ箱が、傘立てかと思うくらい、何本も傘の柄が突き立てられている。この強風でオチョコになったり千切れてしまった傘が捨てられているのである。このとき、雨は降ってなかったが、これがまた、運がよかったようで、それからしばらくメモを時間割でまとめて30分後くらいに出たN氏は、風と雨との直撃を受けて全身ズブ濡れだった由。雨に関しては今日は非常にツイていた。

 帰宅後はずっとフィギュア王原稿。バリバリと書き進むが、今日は8時から家で客を招いて食事会なので、7時半には仕事場を離れねばならない。ちょうど担当S川くんからメールが来ていて、明日の午前中には何とか、とあったので、あ、明日でいいのか、と急に自堕落な気分になり、今日は7時40分で打ち止め。ただし、そこの時点で残り字数を計算したら、残り字数どころか、規定10枚半の原稿で、内容はまだ2/3あたりのところなのに、もう12枚以上書いていた。これは大幅に削る作業が必要になる。

 タクシーで帰宅。客はS山さんと、K子のアシスタントをやってくれたFくん。今日の料理はS山さんのリクエストでおこげなので、基本は中華料理であり、ピータンやクラゲの前菜からはじまって、北京ダック、青椒牛肉絲などが出るが、その他に、このあいだ母が由仁(北海道)で杏輔が背負った餅(一歳の誕生日に一升餅を赤ん坊に背負わせて健康を祝うあっちの習慣に使ったもの)を持ってきて作った雑煮なども出る。雑煮は鴨肉が入っていて旨いが、なにしろお祝い事の餅なので、食紅が入っていて真っ赤なのがちと異様である。

 雑談、多方面に及ぶ。マッサージの話になって、S山さんが、得意の整体で、庵野秀明監督の肩凝りを治してあげたことがある、という話。私、“それって浪越徳治郎がマリリン・モンローに指圧したくらい自慢になる話かも”と。あと、Fくんが気にいっていた花菜の閉店の話をしたら、Fくんも自分の体験をいくつか披露して、“おいしい店からどんどん無くなっていく法則がありますね”と。〆のおこげ、タケノコがたくさん入っていて、美味。酒もちょっと(かなりか?)進んだ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa