裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

13日

火曜日

イエティイエティ、もうイエティ

“あるときは雪男、あるときは経済学者、またあるときはTVコメンテーター、しかしてその実体は、痴漢満五郎だあ〜!”……って、元ネタを知っている人がまだいるのだろうか。朝、6時50分起床。7時半朝食。クルトンサラダとカボチャのベイクド。植草教授の痴漢行為による逮捕、なんか以前にも逮捕歴があるとかないとかであるが、すごいよねえ、自分のこれまでのキャリアと将来を、鏡に映した女子高生のパンツと(女子高生そのもの、というなら何とかわからんこともないが)交換してしまうんだから。これが情熱にかられて、ということなら感心してやりたいところだが、 実際はもっと病的なことなんであろう。

 もっと凄いのは、今朝のスーパーモーニングで報じていたが、彼の行動から、これを痴漢常習者と見抜き、横浜駅から品川駅まで尾行を続けて痴漢行為現場を押さえた痴漢専門捜査員(通称エロガン)である。プロ恐るべし。さて、当の犯人自身をこれまでこういう事件のコメンテーターに起用していたのがフジの『特ダネ!』。同番組のレポーターである小田切サンことその実体は立川談笑の落語会が奇しくも来週土曜(24日)にある。裏話を聞きたい人はみんなで独演会に行こう!
http://danshou.at.infoseek.co.jp/topics.htm

 8時25分バス、遅れて30分。昨日ほどではないが中野通り混む。空はドンヨリ曇って風は肌寒く、春寒というよりは完全に冬に戻った、という感じ。9時10分、仕事場入り。メールチェック、英語タイトルのものはウィルスとしてどんどん削除しまくるが、“RE:SFM”とか、“I,ROBOT”なんてタイトルのものまで、うっかり消しそうになる。時節柄、こういうタイトルはちょっと自粛をお願いしたい もの。

 資料本をネットで注文。9時43分にBK1で注文した本につき、10時54分に“発送しました”という報告が来て驚く。まさに“早っ!”というやつ。知り合いから電話でちょっと頼まれごと。半村良的な世界の事項に関して、であった。それからちくま文庫の落語論原稿のメモ書きをまとめていたら、西手新九郎で筑摩書房のMくんから電話。5月に神田の三省堂でちくま文庫フェアをやるのだが、そのフェアの一環として著者の講演会をやるということで、三省堂から講演者に私を指名してきたとのこと。もちろん、販促には協力を惜しまないのがポリシーなので了承の旨を伝えて おく。第一、と学会東京大会のチラシも撒けるのがありがたい。

 昨日買ったMDレコーダー、録音マイクは付属品に入っておらず、別口で買わねばならぬことがわかる。店員も先に言えよ、と思ったが、考えてみれば対談や座談会を録音するなどというのは特殊な使用法であって、普通の人はパソコンから音楽を落と したりとか、そっちの方が主要な用い方なのかも知れない。

 弁当、1時。おかずはサワラとわさびチーズ。と学会MLにチラシ撒きについて、雑用の後、2時に家を出て築地に向かう。日刊ゲンダイエンタテインメント欄で、映画評論家の服部弘一郎氏と、『CASSHERN』『キューティーハニー』について対談。日刊ゲンダイ社は築地の日刊スポーツの隣のビルの4階と5階であり、ビルの入居階掲示以外、入り口近辺には、看板なども出ていない。入り口近辺で服部氏が、 迷ったような表情で立っておられた。

 服部氏とは数年前、ロフトのガチンコ兄弟のライブにゲストで出たとき、安達瑶さんとその後、焼肉屋に入ってちょっと話したときにお会いしている。改めて名刺交換して、挨拶。会議室で、『デビルマン』の予告編のビデオを見せてもらい、それから某作品の映画館でやっている予告編(諸事情により書けない)も見て、対談。基本はそれぞれがそれぞれのサイトで言っていること。服部さんはさすがプロで、現在のアニメ・マンガ実写版ブームの本質を、ハリウッドの影響、CG技術の進歩、日本の映画界の状況の変化などにからめてきちんと位置づけて論じる。私はもっぱら、(まあそういう注文なので)マンガ・アニメファンの立場から、映画畑の人はマンガやアニメをいいネタ元と思っているかも知れないけれど、実はそれで成功するのはムチャクチャに難しいことであって、安易に考えるとひどい目にあうよ、という警告を発して おく。

 基本的にアニメやマンガの実写化におけるジレンマは、映像化したい、と監督なりプロデューサーなりが熱烈に思う作品ほど、同じく熱烈な思いをその原作に注いでいるファンが山ほどおり、彼らはどんな映像化にも基本的に満足しない人種である、ということ。ヒッチコックが、自分でプロデュースした作品で、有名な原作を絶対に使わなかったのは、そのリスクを避けてのことである。『サイコ』にしろ『鳥』にしろ『ファミリー・プロット』にしろ、ヒッチコックの映画で初めて、一般人はその原作の存在を知った。それ故に、ヒッチの映像化に異を唱える者が出なかったのである。アニメの実写化に最も適しているのは、実は誰も実写化しようなどとは考えなかった作品(今回題名を出せない某作品など)なのではないか、と発言をまとめる。

 対談終わり、ビル出口で服部さんと別れ、聖路加看護大学近辺をぶらぶらと歩く。新開発の高層ビルと、昔ながらの店並みが入り交じる、不思議な感覚の街。東京駅行きのバスがあったので、それにちょっと乗ってみる。本当に最近、バスに乗ることが荷でなくなってきたのが面白い。鉄砲洲から八丁堀を通り、八重洲通りに出る15分ほどの東京観光。鉄砲洲のあたりにあった神社(鉄砲洲稲荷神社だと思うが)の塀に看板がかかり、“生命は親様から来たのだ”“御先祖を供養するのだ”と大書されていたのが異様に思えた。バカボンの親父のような、その高飛車なモノイイのせいか。

 中央線で新宿、急いで西口小田急線改札のところまで。ロマンスカーで相模大野の焼肉パーティ。いくともう談之助夫妻、K子、ナジャさん、S山さん揃っている。開田夫妻は特急券がないので普通列車で向い、ヌカダさん、岡田さんも何とか切符を買おうと算段中だとか。ロマンスカー内で、イラク人質事件などについて、いろいろと デマの交換会。実に楽しい。

 相模大野駅着、焼肉『八起』。おかあさん、“あらいらっしゃいー!”と向かえてくれる。すでにみなみさん、モモさん、開田夫妻、I矢くん到着住み。相模大野でこちらはT橋くんと合流。岡田さんに、このあいだ紹介された焼肉大好きお嬢さんも一緒。さらに遅れてと学会の藤倉珊さん、柳瀬くんも来て、17人の大所帯。期待高まる中、まずタン塩から始まり、カルビ、ロース、ブラタン、レバ刺し、骨付カルビ、豚とろ、豚ホルモン、焼きレバと、次々に出る。骨付カルビの豪壮なこと、レバ刺しの甘みとさわやかさ、カルビの柔らかさ(歯にもさわらずするりとノドを通り抜けてしまう)、ロースの分厚さ(小ステーキである)など、いずれも相変わらず絶品、極品。肉を喰う快楽の頂点を味わう。豚ホルモンのとき、焼酎をストレートで頼んで、共に味わうが、やはりホルモンには焼酎が出会いモノなのだなあ、としみじみ思う。ヌカダさんは、知らなかったがホルモン・内臓系が、タン含めて全部ダメなのだそうで、こういう人は焼き肉屋でのパーティはちょっと可哀相である。生もの一切ダメの藤倉さんもしかり。焼いている肉を大抵、誰かに“あ、あ、焼きすぎ!”とか言われ てさらわれてしまう。

 岡田さんと、『創』の対談の話少し。ヌカダさんからは幻冬舎の話いろいろ。やはり社長にはいろいろ振り回されます、との話。藤倉さんとはレンズマンの解説書いた話や、伊藤剛くんの話などを。焼き肉お姉ちゃんのMさん、開田あやさんをじっと見て、“K子さんの妹さんですか”と訊く。これは、よく訊いてくる人がいて、出版社のパーティなどであやさんはよく“カラサワさんにはいつもお世話になっています”と挨拶されるという。お互いの亭主から見ると、全然似てないのであるが。あやさん がMさんに答えて曰く
「似ているけれど違うんです。私は夫を愛しているんです!」
 と。呵々。もっともその愛し合っている開田夫妻、皿に残った肉の取り合いでひっぱたきあったりわめきあったりしていた。

 最後は鍋クッパで〆る。ここは普通の肉と、特別製の肉があって、どうも今回は特別製を出してくれたように思う。これというのも、ここの店で寄席をやっている談之助さんがナビゲーターのおかげ。恒例の店の前での写真撮影の後に辞去。新宿まで小田急で帰り、そこから開田夫妻とタクシー相乗りで新中野まで。肉のニオイが全身から芬々で、これはシャツやチョッキなど、明日総取り替えしないといけない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa