25日
日曜日
真ん中通るは竜王戦
ヨドバシショウギCMソング。調べたら本当に“竜王線”って路線、あるんですね。朝、目覚めから朝食まで、全テ例ノ如シ。ただし朝食は例ならず、初めてこの新中野で自分で作る。とはいえ、母がサラダも果物も全部切ってタッパに入れて冷蔵庫に入れてあるので、私はお湯を沸かしコーヒー入れるだけ。『デカレンジャー』少し見るが、この作品の役者たち、従来の戦隊ものに比しても演技の質が低すぎて、見てられない。このあいだの回では“なんのピロシキ”というシャレが出てきたが、そもそも今の子供たちは、“なんのこれしき”という言い回しを元ネタとして認識しているだろうか?
内閣三閣僚の年金未納問題、麻生と石破はともかく、中川はちと悪質であろう。ついているポジションから言っても、責任上辞職すべきではないか。……とはいえ、野党も追求をあまり厳しく出来ないのは、年金未払い者なんて、探せば自党にもいくらもいる可能性があるし、年金に関しては“うっかり”という言い訳がさまで苦し紛れでなく、大衆が納得してしまう要素を含んでいるからである。まったく、あれ、国民の義務とか言いながら、なんで督促が来ないのかね? 8億かけて江角マキコなんか使ったCM作るより、未支払者に通知のハガキ片っ端から出した方がずっと有効では ないか?
同じマンションの住人で家を出る時間にちょうどカチ合う人は多いが、今日は日曜でほとんど無し。ただ、出入り口の前で必ずと言っていいほど出会う、50代のおっさんがいる。彼には今朝もチャンと出会った。年相応の皺は顔に刻まれているが、赤銅色にたくましく日焼けしたアバタ面で、延ばした白髪を後ろで束ね、いつも眉根を寄せ、口をぐっと結んでおり、小型のサングラスをかけているので目の表情はうかがえない。……つまりは、『イノセント』のバトーそっくりのご面相なのである。小柄なところがやや迫力をそぐが、あれで犬でも連れていればてっきりコスプレか? と思うところだ。このマンション付近は住宅ばかりで、会社とかはまったくない。何でそんなところを毎朝歩いているのか、と思ったら、私たちの部屋の庭の脇にある駐車場(本来私たちが使えるスペースなのだが、車を持っていないので、他の人が使用している)に停めてある4WDの持ち主であるらしい。カメラマンらしいことは何とか 持ち物とかで推測したが、何か名のある人ででもあるか?
日曜ダイヤで27分の幡ヶ谷経由渋谷行きバス。到着してまずメール等チェック、これも如例。加藤礼次朗さんから電話、レイパー佐藤さんの連絡先の件。宅急便で、談之助さんのおかみさんから、ロフトと紀伊國屋で撒くと学会東京大会のチラシが届く。まさにちょうどのタイミングで、ロフト斎藤さんからチラシ出来ましたら受け取 りにあがります、のメール。明日、時間割で受け渡しということに。
ネットで資料収集。
http://www.ryu-bun.org/Gyoji.htm
↑こんな文章を見つけて、頭がこんがらかる。ボスニアヘルツェゴビナの留学生が日本語で書いた文章らしいが、何なんでしょうかね、文学賞っていうんだから、小説なのか。シュールレアリズム小説というやつか? それにしたって意味不明がすぎるように思う。私なども、たまに苦労して辞書引き引き英語の文章を書いたりするが、 英語を母国語とする国民が読めば、こんな文章なのかも知れない。とはいえ、
「これは、日本人がお箸である魚を本みたいに開いて、その骨がその身にどう言う模様を描いているかによって、自分や他人のこれからの運命を読んだりするような呪文的な読み方であるわけではない。少なくともこういう占い方が存在するのが私は知らない」
というのは、シュールかどうかはともかく、何か詩的な響きがあることではある。
1時、家を出て昼食、どこでとろうか迷った末に(以前なら、毎日食うものであるからハズレも覚悟できたのだが、最近のように滅多に昼を外で食べないようになると今度は選ってマズいものは食いたくない、と、選択にやたら迷うようになってしまった)、新楽飯店の8番定食(貝柱と野菜の旨煮)。これにして成功、大変満足。とは いえ、外食というのは塩分が多いなあ、と改めて思う。
帰宅、肩はそれほどでもないが、昨日の飲み過ぎで水分が体内に停留している感がしきり。サウナで汗を絞ろうとマッサージも予約する。コミビア二本、資料あさりつつ仕立ててメール。後は明日、と仕事早めに切り上げ、新宿へ。サウナでたっぷりと汗を流す。高温サウナ室の、熱源の炭火と座席の仕切が新しい檜板になり、サウナ室じゅうに檜の香りが充満する。体重、2キロほども落ちてい嬉しい。もっとも、ビー ルなどですぐ元に戻るだろうが。
休息室で、こないだ『ワイルド・レンジ』試写会場でお会いした島敏光さんから恵贈された『永遠のJ−POP』(学研)を半分くらいまで読む。島さんという人は、ご存じでもあろうが、あのジャズ・シンガー笈田敏夫(子供の頃の私にとっては東映アニメ『魔犬ライナー0011 変身せよ!』の、あの日本アニソン中もっとも力の抜けた歌唱がやたらカッコよかったヒトで、その後この人の歌う『スターダスト』などに痺れた高校時代を経て、大学時代は『嵐を呼ぶ男』『恐怖奇形人間』など、名画座でしょっちゅう顔を見ていたヒト、であった)の息子で、黒澤明の甥にあたる。そして中学時代に、離婚した母と一緒に二年間、黒澤家に住み込んで、世界のクロサワとひとつ屋根の下で暮らすという、映画マニアになら嫉妬で絞め殺されかねない時間を送る。その間、彼は自分にとっては従弟にあたる黒澤久雄(黒澤明の息子)がバンド“ブロードサイド・フォー”を組んで活動するのを目の当たりにしていたわけで、要するにこの本はマイク真木の『バラが咲いた』からブロードサイド・フォーの『若者たち』、ワイルドワンズの『思い出の渚』など、日本のJ−POPの誕生を、自分の見聞と交遊の記録から書き起こし、インタビューした本なのである。
自分の音楽歴と交遊録がそのまま、日本のJ−POPシーンの草創期と重なるというのは生まれた時期の(とにかく若く見えるヒトなので、著者略歴から年齢を逆算してちょっとオドロいた)幸運もあるだろうが、それ以上に、周囲がみんな業界関係の成城のお坊ちゃんという恵まれた生い立ち故に、幼いときから趣味に没頭できたという環境が理由だろう。こういうヒトの書いたもの、というのはとかく“ケッ”という感想を読者に抱かせやすいものなのだが、それをこの本が(ダイレクトにその恵まれた状況を書いていながら)回避できているのは、いくら恵まれた環境とはいえ、両親が離婚して、親戚の家に居候するという、他人に気兼ねする青春時代を送った経験で培われた、著者の人間関係における絶妙なバランス感覚があるせいだろう。それは文章にもよく表れている。自分の選んだ洋画ベスト3がキネ旬のベスト30にも顔を出 していないことに腹を立て、
「それ以来、僕は映画評論家を信用していない」
と書き捨てたあと、すぐつけくわえて
「業界からも信用されていない」
と書く。これがバランス感覚というものである(ちと道化がってはいるが)。それにしても、『キャット・バルー』『バルジ大作戦』『バニー・レイクは行方不明』が 66年度のベスト3とは実に実に嬉しいラインナップだなあ。
マッサージは童顔に口ひげをたくわえた先生。体をあちこちいろいろ触って、“ああ、お疲れになってはいますが基本的にどこも極めて健康ですね”と言われる。揉まれているうちに何度かオチる。一度仕事場に戻って原稿書き、またロフトの短歌イベ ントの件などを川上さん、笹さんにメール。
8時、東北沢までタクシー。久しぶりに『和の○寅』で食事。見るとこの店の名所(?)である、二人用の隠れ部屋が改装されて、外からよく中が見えるようになっていた。逆に秘密の小部屋っぽさが無くなって残念ではある。私たちはもちろん、そん なところで食べずにカウンターで食べるから関係ないのだけれど。
焼き筍と空豆が突き出しで、酒はもちろん伝兵衛ヌル燗。旬のカツオ、ここのはまたデカい。昔ながらの木の箱に魚類が収められているのがいい。最近はどこでもガラスケースである。あと、なかなか鯛が今年は食べられなかったので、鯛を切ってもらう。私にだけウニ。これがまた甘くて絶品。刺身はやはり外食のものだ。『華暦』に も最近行けなくて残念である。
鴨のスモークがまた酒がすすむ。ここの味付けは、板さんが若いだけに塩っ気をわざと強くして酒が進むようにしているのだが、私は塩辛かろうが薄味だろうが結局酒は飲むので同じである。木箱の中に、肉厚のおいしそうなワカメがあったので、酢の物にしてもらう。これは上品な甘酢であった。どちらかというと味ぽんみたいなもので和えてくれた方がこれに関しては好みだったのだが。逆に、コハダの寿司はきちんと酢がきいていて、これは結構。最後にこれがなくては、とお茶漬けをリクエストして、大満足。タクシーで帰宅して、すぐベッドにもぐりこんで寝る。