裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

31日

木曜日

だから今日も地鶏 明日も地鶏

 いくらうまくてもこう毎日じゃなあ。朝7時起床。朝食、カニサラダサンド。それとポンカン。食べてすぐ、仕事場の書棚をひとつ、空にする。今日、ADSLに回線をするにつき、工事の前調査にくるのである。平塚くんも来てくれて、K子となんだかんだ電話の名義の話などをしている。

 私は一切まかせて仕事。メールで氷川竜介氏からご教示、一昨日の日記に書いた、『サンダ対ガイラ』の花束は、ホキ出されたのではなく、地面に投げ捨てられた花束で女性の死を暗示する映像テクニックだとのこと。うーむ、それじゃなおのこと、アメ公には理解できまい(て言うか、カンちがいしていた私もアメ公なみ)。本多監督の演出において、花束というのは他にもさまざまな使われ方をしているキーワードだそうである。深いなあ、この世界も。それにしても氷川さんの、ライターとして独立後の自分の分野での精進は凄まじいものがある。これでは私のようなもの、特撮映画についてメッタなことは言えないぞ、と反省。ところで考えてみれば、私は『サンダ対ガイラ』を海外版のビデオでしか持ってないのであった。こりゃアメ公なみになるのも無理ないな。

 ……メールでの教示と言えばOTCのNさんから、例の三重県の酒『作(ザク)』の醸造元、マジに三倍アルコール分の強い焼酎版ザクを売り出したらしい、との報。しかも、ラベルが赤である。エライというか商魂たくましいというか。ガンダムファ ンの集まりでの乾杯は、こりゃこれでしかないでしょう。
http://jizake.com/html/zaku/03.html

 小野伯父から電話、明日から国立に出演、その後新宿末広の下席に出るという。打ち合わせは末広で、ということにする。NTTの工事業者が来て、電話線を見て、まだ使ってない回線が2つあるという。ここに越したとき、当時の管理人(これが極めて意地クソの悪い感じの男だった)から、このマンションは一階に入っている税理士事務所などが回線を全部使っているので、個人用は一回線のみだから、FAXやパソコンで別回線を使うときはISDNで分岐させて使ってくれ、と言ったのでそうしていたのだが、まだあったんじゃないか、とK子と呆れる。

 結局、12時まで平塚くん、いろいろとK子と打ち合わせをしていてくれた。ご苦労様である。そのあと、入れ代わりにどどいつ文庫伊藤氏来。洋書いろいろ。今回、一番の収穫はワイマール時代のベルリンの変態資料集。デカダンの極地を行っていた当時のベルリンの、いや凄まじいこと。SM、ホモ、レズ、ロリ、ショタ、フェチ、麻薬、死体愛好、現代の変態など、この時代のものに比べれば可愛い。こりゃ、ヒトラーだって“これを粛正しないと国が滅ぶ”と思うよな、という感じ。ちょうど、ワイマール時代を舞台にした小説を考えていたところなので、恰好の資料であった。

 伊藤氏としばし雑談。『さぶ』休刊の話が出る。雑誌不況の象徴、と言うのが一般的な見方で、現に休刊理由は発行元のマガジン・マガジンの経営引き締めなのだが、逆に言えばゲイ雑誌誌上が活性化して、旧来の独占市場的状態に安穏としていたための部数凋落であり、逆に活況の中での生存競争に落ちこぼれた、という見方も出来るのではないか。何にしても、『さぶ』は私が初めて買ったゲイ雑誌であり、思い出は深い。『古本マニア雑学ノート』にも書いたが、当時まだ高校生で、その時代から性文献を収集しており、その中で取り上げられているソドミーという性癖がいったいどのようなものか、研究心にかられての購買だった。いやあ、ドキドキした。札幌の弘文堂であったと思う(今考えるとよく売ってくれた)。言うまでもなく、まだ丸綴じの時代で、おそるおそるページを繰ったら、林月光という署名のイラストがあり、これがまごうかたなき石原豪人(『少年マガジン』の口絵でおなじみ)であり、“なぁんだ”と、いきなりホモの世界が身近になった気がしたものである。

 そんなこんなで、やっと風呂に入れたのが2時ころ、昼飯は3時になった。半日、ズレ込んだ勘定である。新宿に出て、小田急エース地下の天ぷら屋『天金』で、イカと里芋の煮付け定食(略してイカサト定食)なるものを食う。昔風の濃い味付けで、うまいというではないが、何か懐かしい。学生時代の阿佐ヶ谷の、外食券食堂あがりの定食屋を思い出す。それから銀行に寄り入金確認。『トンデモ本の世界R』の印税が入っていて、ちょっと豊か。これが個人での印税振り込みの最後(重版分は別として)のものとなる。

 帰って原稿、ジャキジャキ。『男の部屋』、筆はすすむが時間がなく、あと数十行を残して明日のこととする。『花菜』で酒とソバ。酒は黒龍純米酒があったので、それを熱燗にしてもらって。燗はどうかと試してみたのだが、いや、温めても結構。実にさわやかでうまい。聞くところではこの黒龍、雅子さまのご愛飲酒だとかである。むべなるかな。ブリ塩焼き、山芋のとろろのふっくら揚げなど。ここの大将、この日記を読んでいることが判明。“最近、美形の店員がいなくてすいません”と言われて恐れ入る。いやいや、嶋ちゃんの料理の腕があれば。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa