10日
木曜日
群馬3号宇宙大作戦
英語版タイトル『グリーン・スライム(青ノリ入り刺身コンニャクのこと)』。朝8時起床。夢でサントリービールCM(オイオイ編)というのが出てきた。広告代理店の試写室で、完成フィルムとコンテを見比べている。最初のやつが茹で立てのカニをサカナにビールを飲んでいる親父のアニメで、“こうやってうまいものを食べながら、息子とビールが飲めるなんて幸せだなあ”と述懐。すると相手が、“僕はあなたの息子じゃない、ただカニが好きで入ってきた隣の子ですよ”。驚く親父の顔に文字がかぶさって“間違いだらけの世の中だけど、サントリービールの味だけは本物”。次のが実写で、姑が鍋をつつきながら嫁に、“息子の嫁が朝鮮人って知ったときは反対したものだけど、こうしておいしい朝鮮の鍋料理を作ってくれるんだから、アタリだったわねえ”。すると嫁が“お母さん、私は日本人だし、これはお母さんの故郷の名物のクエ鍋よ”。間違いに気付いた母親がテレかくしにビールを飲む場面に文字がかぶさり、“記憶が信用できなくなっても、サントリービールの味だけは本物”。
朝食はサラダスパゲッティ。果物が切れていた。『社会派くんがゆく!』ネット再開第一回分のテープ起こしに赤を入れて返信。SFマガジンコラム用の資料をいろいろあさる。12時に青山まで買い物に出て、1時、帰宅したらエレベーターのところに“本日1時半より2時半まで停電します”の張紙。ああ、そうか、点検日だった。30分で昼御飯(カツめし)食べて、また外へ出る。新宿で銀行に寄り、紀伊国屋などで買い物。ビデオショップで時間つぶして、3時帰宅。二度の外出ですっかりクタビレてしまい、少し休む。風邪でやや身体が熱っぽい。
古典名画DVDのネット販売をしている『ハリウッド・クラブ 幻の映画劇場』というサイトがあるが、ここをのぞいていたら、ロン・チャニー主演『ノートルダムの男』という映画が紹介されていた。そんな映画がどこにある、という感じである。すでに古典になっている作品のタイトルまで手を入れるというのは、はっきり言って歴史の改竄であり、許しがたい。アメリカじゃ、世界名作主人公人形シリーズで、ちゃんとカジモド人形(少し可愛くなっているが、せむしもみにくい顔ももきちんと造型している)を売っていて、子供たちが買っているのだぞ。
ロフト13日の金子ゴジラのトーク、私も招かれていたのだが、やはり金子監督が私の名前にナーバスになっているそうで、“来ていただいても不快な思いをされてしまうかもしれませんので”と言われる。どうも最近のアタマいい人々はケツの穴が小さい。と、いうか、自我肥大の傾向にあって、プライドが腫れ物のように赤くふくれて、ちょっとでもさわると針でつつかれたように痛むらしい。これでは大物になれませんぜ。革新的な作品を作るということはさんざ悪口を言われるということだ。悪口が勲章でもある。小林信彦が“黒澤の映画は実は昔から、作るたびに大変な悪口を言われていたのである”と言ってなかったっけ。
少し横になろうとベッドに入ったらいきなりグーと2時間も寝てしまう。やはり身体が休息を欲しているのだろう。カスミ書房で買った野坂昭如『現代野郎入門*これがプレイ・ボーイだ!』(昭和37年・久保書店)読む。今はテレビでわめいているただのアル中爺さんだが、この当時の才気はほれぼれするほど。130ばかりの項目それぞれに原稿用紙2枚強で、世相を鋭くピンポイントで活写し、それを巧緻の限りをつくして、しかも凝り過ぎのイヤミを払った文章でさっと読ませる。擬古文あり、戯文あり、箴言あり、ショート・ショート風あり。ライターにこれだけの雑学的教養と才気が必要とされた時代がうらやましい。だったら私ももう少し努力して勉強しただろうに。
8時、神山町のしゃぶ禅でK子と夕食。会社運営のことなどをちょっと真面目に打ち合わせする。あと、と学会の事務局運営のことなども。ここは肉の一切れが大きくて、パルコの沙舞里より腹にたまる。ふぐのヒレ酒で身体を温める。寝汗をかいて、風邪を退散させておかないといけない。今月後半、無茶なスケジュールになる予定で ある。