裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

29日

水曜日

ジョットーだけよ

 あんたも好きねえ(イタリア絵画が)。朝7時起床。極めて快適な眠りだったが、夢は女装して会合出ることになったり(永瀬さんの影響だな)する奇妙なもの。朝食はカキフライサンド。それと梨。まだ気圧乱れがち。ここ数日、それで体調不良、何か神経もイラだっていて、じっとしていてもロクなことを考えない。……しかし、人間、こういうときに、大きな決断というのができるのかもしれない、と思う。日常に満足している者は、飛躍は望まない。イラだちも摂理として素直に受け止めたい。

 すぐ仕事にかかり、『Memo 男の部屋』原稿を午前中の2時間で書き上げる。案外調子はいい。これでだいぶ気をよくする。昼は冷や飯にレトルトのタンシチューをかけて、速成ハヤシ。食べながらDVDで『ペギラが来た』を見る。吹雪で基地に閉じ込められるという極限パニック、怪獣の出現というホラー、行方不明の友人を探しに隊に参加した主人公というサスペンス、その友人と恋愛関係にあった女性と主人公のほのかなロマンス、意地の悪い隊員との対立という人間ドラマ、これらの要素を正味20数分の中に全部詰め込んでいる内容密度の高さよ。

 買い物にちょっと出て、宇宙雑貨で絵葉書。絵葉書って高いものだったんだな、と改めて認識。帰宅して、残暑見舞いのうち数通に返事を書く。どれにも、少しづつだが前向きなことを書く。この葉書からいろいろ進展があるかもしれない。タルみ気味の体にカツを入れようと麻黄附子細辛湯をのむが、汗が出る出る。買って来た雑誌やムック類で、いろいろとツッツキたい文章とかを読むが、こういう体調のときは自重すべし、と自分に言い聞かせる。

 2時半、時間割でメディアワークスTさんと打ち合わせ。3時だと思って家で仕事してたら、電話がかかった。2時に入っていたらしい。あわてて出る。打ち合わせはオタクカルチャー本の製作のダンドリについて。と学会本の方を芝崎くんにまかせる関係上、こっちの本には誰か別の編集係をつける必要がある。梗概をTくんにざっと話してきかせ、大方のOKを得る。Tくんに、この後の出版予定を訊かれて指を折るが、かなりギッシリ埋まっているのに我ながら驚く。端から片付けていかないとエラいことになる。

 帰ってサンマーク仕事続き。気圧やなんだかんだで遅れてしまった部分を取りかえさなくてはならない。文章を書いていると、頭の中のモヤが消えていくような気がする。好きだね、という感じ。植木不等式氏から9月5日に飲みませんか、というお誘い。こっちの体調を日記から察して、気晴らしに誘ってくれたかと思う。ありがたいもの。

 原稿を書いている最中に、メガネのツルが、何の前触れもなく、パキッと割れて壊れた。最近、ツルの根元がゆるんでいたので今朝、ネジをしめたのだが、そのせいだろうか。とにかく、これでやっとメガネ屋に行く口実が出来たことを喜ぶ。このメガネ、去年のイタリア旅行のときにグラスに少し傷をして、早く新しいのに変えねばと思いながら、メンドくさくてくさくて、そのまんまにしておいたもの。二本書き上げてメールし、急いで新宿西口のメガネショップへ行く。前にあった大型店は無くなってビックカメラになっていた。栄枯盛衰。細身の、出来るだけ人相の悪くなりそうなものを選ぶ。検査もしてもらう。近視の度は進んでないが、右目の乱視がちょっとひどくなっていた。

 8時、タクシーで四谷荒木町。杉大門通り前で降りたが、足を下ろしたらグニュ、という感触。見ると死んだ鳩を踏んづけていた。カラスにいいかげんつつかれて、ほとんど原型をなくしていたが。まさ吉でK子、井上くんと。青林工藝舎(元)の末井さんもいた。いろいろバカ話。知人の裁判の話、知人の無能の話、知人の離婚の話などなど。イワシ揚げ、納豆揚げ、モツ鍋。体調乱れているところにコップ酒をあおったものだから、最後は何がなんだかわからぬヘベとなり、まさ吉のお母さんに、もう帰った方がいいと言われる。みんな気圧が悪いのよ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa