28日
火曜日
ストップ!2ぃちゃん
なんか大変だったようで(BWP情報)。朝6時半に目が覚め、手近にあった『古川ロッパ昭和日記』戦中編を布団の中で読む。何でこれを引っ張り出したのかは忘れてしまった。7時半起床、朝食、イチジクとヨーグルト。入浴、洗顔、歯磨き如例。歯磨きは普通の歯ブラシで磨いたあと、歯間ブラシで歯の間を磨く。S歯科の先生に“めんどくさいようですが、この気持よさを一旦覚えると、磨きたくなってたまらなくなります”と言われたが、確かに最近、この歯間ブラシを怠ると、口中がキモチ悪い心持ちがしてきた。
9時ころ、伯父から電話。朝方は睡眠薬がまだ効いているのか、声がフニャフニャしている。話は90パーセントがこないだの電話と同じ内容。志ん朝さんが糖尿病で入院して、紅葉坂寄席のトリにあげる大物が、あと談志と小三治くらいしか残っていない、とぼやく。達者な中堅はいくらもいるのだが、看板スターがいない落語界の状況は、SFとちょっと似ているね。スリー・ビックリーズがメジャーデビューという話はめでたし。舞台を元気に勤めているのも親戚として大変にうれしい。ただ、伯父が全てをうっちゃってからこっち、事務所を引き受けてからたたむまでの、私の精神的(金銭的にも)な苦労がどれだけのものだったかということを、果して伯父はきちんと認識しているのかとなると、ちょっと疑問である。病気だったのだからと全てを許すまでには、まだあの当時の記憶は生々しすぎる。
同じく朝の長電話人の、石毛さんから電話。仕事場用にと引っ越したアパートが、引っ越したばかりの昨日の雨で大変な雨漏りで、大変だったという話。紹介した会社(ア×マン)に怒鳴り込んでやろうと思う、というから、作家デビュー寸前の微妙なところなのだから少し自重した方がよろしいです、と止める。なにしろ築50年というアパートだそうだから(そんな水木しげるのマンガに出てきそうなところが本当にあるとは)、あまり強いことも言えまい。それにしても、“作家にとって静かな仕事環境がどんなに大事か”という言に、聞いていて苦笑。私など、建物の改装で部屋に工事人夫さんが入って、脇で壁をドリルで壊しているそばで原稿書いていたこともある。だから雑文書きで止まっていると言えばその通りなのだが。
芝崎くんからも電話。どうにか、メール出せるまでにはなったようである。しかし電話あり、まだパティオには入れていないそうだ。なかなかじらすことである。電話と言えば昨日、ロフトの斎藤さんから電話があったのだった。例の意外やの対談相手は電話に何故かずっと出ないそうで、別に逃げたわけでもなかろうが他の人を探すことになりそう。Aさんとかはいかがでしょうか、というので、話が盛り上がるかどうかはともかく、私は誰であろうと基本的にOKですから、と言っておく。
昼、荷造り。一年近く前のイタリア旅行でDちゃんにと買ったオミヤゲ、荷物の中にまぎれこんでいたのをやっと宅急便で出す。ついでに昼飯を東武ホテル地下の寿司屋のランチにぎりですますが、シャリにシンがあって参った。ちょっと胃もたれ。寿司で胃もたれしてはどうしようもない。 帰宅すると、そろそろ今年後半から来年にかけての仕事のスケジュール連絡などが、どっとノシかかってくる。
1時、ハローミュージックAさんとアド・イベントのSさん来る。それとビデオ制作会社の人。トラッシュポップフェス用のキッチュビデオ製作の件。いろいろと海外のキッチュビデオ見せて、打ち合わせ。製作の人、アイデアがどんどん湧いてきたらしく、ヒッチコックの『鳥』で行きたい、などと言う。Sさんが“そんな鳥、どこで用意するんですか”と言うと、“明け方の渋谷歩けばいっぱいいますよ”には笑う。ただし、制作予算示されて、彼、“ひー”と悲鳴アゲていたが。
一行知識掲示板などチェックして、3時半、西永福S歯科。前歯の歯茎のところを薬液注入して洗う。まだ治療する段階ではないがひどい状態ではあり、これは“もっと悪くなるのを待つしかないです”などと言われる。終わって渋谷まで帰り、直行で六本木。銀行寄って家賃など下ろし、買い物。家で仕事続き。ロッパ日記と、夢声日記の、同年同月分を読みくらべるなどというヒマなこともする。戦前戦中、時代の最先端を行っていたロッパと、『宮本武蔵』の朗読などで認められてはいたものの、やはり活弁という滅びた世界からの流民と認識されて、中途半端な位置にいた夢声。それが戦後を境にして立場が逆転したのは何故か。“中途半端”という位置の強さを、もう一度考えてみたい気になる。
8時、四谷でK子と待ち合わせ。タクシーを拾ったら、晴れているのにウインドグラスに雨粒がびっしり。あれ、どこで濡れました? と訊くと、新宿はザンザ降りであったという。昨日は渋谷のみ降って、新宿は晴れ。それが逆転しているわけで、ずいぶん面白い天候である。四谷はパラパラ。駅の地下で傘を買い、二人で歩いていたら、すさまじい降りとなり、近くの和食居酒屋に飛び込む。こぎれいな作りで、値段もまあ、手ごろ、と思ったら、値段に比して料理の分量が極めて少ない。関アジの刺身など、1200円で皿に6切。ひと切200円である。ここで腹一杯になるまで食べたらいくらかかるかわからないので、K子の発案でざっと酒だけ飲んで、参宮橋のラーメン屋『道楽』へ。ノリラーメンにビール一本。