裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

26日

日曜日

子供は竹の子

80年代の親の嘆き。朝9時半起き。よほど体力落ちていたのか、あるいは風邪薬のせいか、もしくは朝からソボソボの雨のせいか(オノは今日、この雨の中引っ越しである。気の毒に)、朝食の知らせの携帯鳴ったのも気がつかず。とはいえ、たっぷり寝て体力回復。

入浴して、10時半、朝食。民主党がさんざモーニングショーで叩かれている。前原代表がテレビでなんかしゃべるたびに民主党の支持者がゴソっと減っていく音が聞こえてくるよう。つくづくこの党には運もなければ人もいない。メール疑惑についてきちんと謝罪しないのがけしからんとか、党としての責任がどうだとかいう問題ではない。運のない政治家と政党が国民の上にたつことほど恐ろしいことはないのである。くれぐれも、こんな運のない党に政権をまかしてはいけないよ。

佐々木守氏死去、69歳。若すぎる、と思うがしかし、あの仕事量をかんがみるに、普通の人間の人生の三倍は生きた人だよな、と思う。大衆的人気と芸術的斬新さを合わせ持った、希代の才能でありこの人なくしては日本の文化は全く違っていたものになっていただろう。それにしても、これだけの才能にしてこの程度の死亡記事の扱いか、と思うと、この国の文化程度が情けなくなる。

それにしても訃報続く。やはり冬が寒かったせいか?このあいだ、岡田斗司夫さんとの対談で、
「唐沢さんくらい、どこへ行くにもためらいなくタクシーを使う人を見たことがない」
と言われたが、これは佐々木守さんに学んだのである。もちろん直接ではなく、湯浅憲明監督に伺ったのであるが、
「あの人はタクシーの中が仕事場なんです。相手先に向かうタクシーの中で原稿を書いて、着いたときには完成している。運転しなきゃいけない自家用車じゃそうはいかないし、電車も座れるかどうかわからないから駄目。打ち合わせも、資料調べも自由にできる場所として、タクシーほど便利なものはない。どんどん使うべきですよ、といつも言っていましたね」
という話に膝を叩き、それからはタクシーを自分の足にしようと決意した。

もっとも、佐々木さんは大映テレビやTBSに来ると、打ち合わせや会議の最中、ずっとタクシーをメーター上げたまま待たせていたそうである。とてもそこまではまだ、マネが出来ぬ。

ウルトラマンもウルトラセブンもアイアンキングもハイジもお荷物小荷物も男どアホウ甲子園もみなよかったが(『11人いる!』とか『ウルトラQ・ザ・ムービー』などいかがなものか、というものもあるが)やはり、これ一本となると大島渚監督『絞死刑』か。ブラックな喜劇というものの極北という感じで、初めてこの作品を観た日は、興奮のあまり眠れなかったものである。

1時半、家を出て“タクシーで”渋谷。タントンマッサージに横付けしてもらって、すぐに1時間揉んでもらう。「いつもと違う凝りですね」と言われるが、風邪凝りであろう。

終わってすぐ、地下鉄で(ここらが情けない)銀座へ。銀座小劇場にてあぁルナティック・シアター公演
『ラブゲッチュ』。

ご贔屓の女優・乾恭子の初主演である。開田あやさんやラジオライフのTくんが日記で褒めていたので期待していたが、登場シーンから観客をぐっとつかまえて話さぬ存在感に大拍手。役柄とキャラクターがピッタリと合った(合わせた)脚本の勝利だろう(今回は口立て主体のここの劇団には珍しく脚本がある)。

楽しく、軽く、そしてオシャレ。50年代のハリウッド映画にこういう話がよくあった。できれば銀小よりも、も少しセットなどに金をかけた劇場で、商業演劇に仕立てたものを観たいな、と思った。本当は主演の乾ちゃんは歌も歌いたがったらしく、橋沢さんが止めたらしいが、ミュージカルシーンが入ってもよかったんじゃないか。

ちょうど、アイドルのコマ公演の芝居っぽい味がある話なのだから。唐突なミュージカルでも、乾恭子ならそれくらい十分に受け止められる華がある。助演では『バスキア』でタイトルロールを演じた親川幸世が好演、おさまった感のあるバスキア役より今回の天然バカ役の方が絶対ハマリ役。

あと、NC赤英の、自分の役をギリギリまで思い出そうとしないようなボケが凄い。芝居を壊す一歩手前まで持っていく度胸というか無神経というか、これは観ていて笑いながらもハラハラする。惜しむらくは90分という短めの芝居なので、ストーリィを消化するのみで終わってしまっていて各キャラクターの内面を掘り下げるまでに至らず、また伏線などもそう張れなかったことか。お嬢様と執事の心の通いあいなどはもっと前もって振っておいた方がよかったろう。

とにかく、これは再演でまた観てみたい。橋沢さんに、なんなら協力しますよ、と言っておく。終わったあと、バラシを眺めていたら海谷さんがそこで来る。時間を間違えていたらしい。

少し雑談、いろいろと。『大女優宣言』の話、ビバリーの話、ブジオの話、おぐりのことについて、など。打ち上げは一休にて。話はずみ、映画のことなども話す。りこちゃんがらみでビリヤードの映画撮って、橋沢さんをミネソタ・ファッツみたいな役で出したらどうか、とか。

11時ころ出て、飲み直そうと橋沢さんと東北沢。和の○寅でシャンパンと、白子焼き。もうここらではべろんべろんで、何話したか覚えておらず。若大将が橋沢さんと意気投合したのか、花を送るとか言っていた。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa