裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

10日

金曜日

月に変わって補聴器よ!

金髪のお嬢さん、なんて言ったかの。朝7時半起床。入浴、洗顔等の後、ミクシィ。調子いまだ悪く、落ち癖がついてしまったよう。そのたびごとに仕様が初期設定に戻ってしまうのがイラつく。

9時朝食、ブロッコリのスープにイチゴ、自家製スイートポテト。日記つけ、FRIDAY原稿。ネタ出し三本とコラム。ネタ自体は自家薬籠中のものだが、逆に程度がつかみにくいきらいがある。これに案外時間がかかり、2時青山の予定が45分近く遅刻となってしまった。

とはいえ、この遅刻は結果的には大禍なかった。演出の喰さんが貞岡さんの脚本にダメ出しをしていて、ほぼ打ち合わせ時間がまるまる、それに費やされる。私はなにしろWAHAHAの舞台であるし、てっきりギャグ満載の喜劇だと思っていたら、脚本はちょっとどちらかというとヘビーな心理劇で、笑いの要素はほとんどない。それをオーバーアクト的なキャラ造りで前半で笑いをとり、ラストで……ということになる。なかなかハードルが高い。

4時、仕事場へ戻る。FRIDAYからナオシ指定一本あり。すぐ作って送る。電話数本。
5時半、オノと高田屋のラーメン啜って、TBS。胃の具合がちょっと思わしくなく、液キャベ買ってきて貰って服用。今日は小林麻耶、かなり早くスタジオ入り。ゲストの高須クリニック院長もつきそいの西原理恵子も早々と入る。西原はおとつい、FAXで
「高須院長に来いと言われたので看護婦のようについていく私です」
と連絡あったので、I井ディレクターに
「西原は24日にも出てもらうことになっているので、今日は“いる”ってことだけ話して、しゃべらせないほうが金曜っぽいでしょう」
とメールで連絡したら、
「確かにそっちが“ぽい”です。それでいきましょう」
と。それに今日はバーバラと、海谷さんも見学に来る。海谷さん見ておぐりが“なんでここにいるんですか”と驚いていた。

西原、ちょっと疲れているようだったが
「この番組のゲストは誰がつれてくるの?」
と言うので、ほぼ全員私が見つけてくる、と言ったら
「友達多すぎない?」
と呆れられた。

高須委員長打ち合わせのときからトバす。こう言っては失礼ながら予想よりずっとトークがうまい。雑知識も豊富で、これなら自分でパーソナリティが勤まりそうだ。ただ、自分では
「素人なもんで、打ち合わせでテンション使い果たしてしまう」
と言っていたが。

今日、FRIDAYの原稿で書いたばかりのネタが話題になるので、それを数値的なことでフォローしたら、
「ネ、唐沢さんとはなすとボクがいいかげんに言っていることをちゃんと裏打ちしてくれる」
とやたら感心される。冒頭のうんちくトークも、小林麻耶に
「いまごろ言うのもなんですけど、唐沢先生、ホンっとよくものを知っていますね!」
と驚かれる。今日はいったいどうした? ホメられ日か。

さて、トーク開始、今日は濃い話で麻耶は引き気味。ほぼ私と高須院長で話を回す。院長、包茎治療の図をイニャハラ氏が書いたものを
「いや、これはちょっと不正確だ」
と、自ら図を書いて説明。とても8時代の番組とは思えない。自分でやっていて面白くておもしろくて。

彼がブラックカードを二枚も(!)持てる大金持ちとなったのは、美容整形という、ある種異端な医学にためらうことなく邁進したというその先見性と、ビジネスマンとしての才能にある。ライバル医院が美容整形の番組を持ったと知るや、電通に命じて、その番組のスポンサーとなる。番組を作った方としては、さんざ金をかけて、高須クリニックのイメージだけが定着するわけで、たまったものではない。怒りの電話がかかってきたが
「番組がスポンサーに降りろと文句を言うなど聞いたことがない」
と済ましていたそうだ。こういう才覚が生き甲斐なのだろうな、という気がした。
「ウチの息子はと学会のファンで、医師会の総会なども“その日は学会がありますので”と断る。本当はと学会なのだが」
とか、
「唐沢さんの出る番組が始まると院長回診を中断して見に行く」
などと話したら、当の息子さんから
「私は回診をさぼったりしませんよ」
と書き込みがブログにあったのが最高。

大ウケの手応え得て終わり、次のおぐりのコーナーはチョコレート。毎回変わったものを探してくるが、今回はチョコレートソーダにフィリピンのチョコ粥、チャンポラーダ。声を例により張りすぎなのでちょっと押さえ気味に指示。ソウルフード本のことも今日、初めて告知。
「えー、すごーい!」
と小林麻耶やブログの反応もよし。

ポッドキャスティングを録音して、放送終わり。テーマはトリノだったが、結局またカワの話に。いつも通りの一時間だったが、今日は構成的にはまず満点、内容も濃かった。ただ、それに神経使いすぎたか、いつもの倍くらい、どどっと疲れが出た。
I垣Pにもゲストからの話の引き出し方を褒められた。私の技術ではなく、ちょうどいい距離感のあるゲストだったためだろう。飲み会に院長と西原を誘う。院長、
「私、いまキャピトル東急に泊まっているんで、そこのバーで飲みましょう」
と言う。バーバラや海谷、オノまで引き連れてかのキャピトル東急。車中でおぐりとちょっとソウルフード本校正の話。

院長はここは定宿らしいが、その院長の権限を以てしても最上階のバーは金曜で満席。じゃあ、と院長、こともなげに部屋をひとつ、とって、そこでルームサービスとって飲みましょうと。われわれとは発想が違う。最高級のスイートルームでドンペリで乾杯。ゲストが打ち上げ全部もってくれるなんて、前代未聞だろう。後から来たI井D、
「いったい何が起こっているんですか」
と驚いていた。

話は高須院長と西原がアポロ月着陸はなかったと信じている話とか、皇室の血統の話とか、世の中の裏には、などという陰謀論の凄まじく濃いはなし。おぐりが目を丸くしていた。その他麻雀ばなし、手術ばなしなど、話題も豊富だわ、この院長。さすが、以前漫画家を志しただけのことはある。

高須院長は途中で退席、西原と隣り合っていろいろと昔話。
「しかしよくお互い生き残ったよねえ」
と、バブル崩壊期の話を。
「あの頃、一緒に飲んでた連中、みんないなくなっちゃったもん」
「かたおかみさおがちゃんとやっているのは嬉しいねえ」
などと。やはりきょうはホメられ日で、西原が気味悪いくらい私のことを持ち上げるので
「そういうことはここで言わずラジオで言え」
と言うと
「ラジオだと自分の本の宣伝のとこ以外しゃべらないって!」
と。変わらないな、と笑う。

なんやかんやで1時過ぎまでワイワイ話していた。帰りに西原とちょっとナイショばなし。なるほど、彼女でもそう見るかとやや、自信をつけた。彼女は上の方にまた別に部屋をとっているのでそこで別れ、ロビーに。タクシー呼んでもらい、オノを高円寺まで送る。
「凄い経験しましたね」
と、オノもちょっと興奮気味。そうだろう。そろそろ解体の決まった歴史的ホテルの最高級の部屋で飲めたわけ。

彼女の聞き出したところでは高須院長はずっとホテル住まいだそうだ。家庭とかというものの安らぎとは無縁の人間なのだろう。やはり一般人とは全てのところで常識を超えている。いい気分だったがしかし疲れは体の芯にまで達しているよう。帰宅してK子とちょっと話し、すぐベッドに入るが夜中に足が攣ること攣ること。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa