裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

金曜日

在日かあさん

「かあちゃんは半島から苦労して日本へ」
朝7時45分起床。時間を間違えたかと思うほど、窓外が暗い。どよんとした感じ(天気も、体調も)。カーテン開けてみると、案の定雨がソボソボ。

入浴し、朝食。ミカン、イチゴ、豆スープ。麻黄附子細辛湯でなんとか乗り切ろう。荒川静香の金メダルに驚く。実は某誌の原稿、日本勢がメダル一個も取れないという前提で書いてしまっていたので急いで書き直しになったのだが、そこで
「こうなったら日本国民全員で念を送って、ライバル選手をコケさせるとかしないと」
と書いた。そしたら、コーエン、スルツカヤ、共にコケ。予言か、これは(まあ、日本勢全滅という本筋のところは大外しだったんですが)。荒俣宏の『帝都大戦』を思い出した。

とにかく、それで午前中は原稿書き換え作業。ハテ迷惑な、と日本あげての歓喜の中、しかめ面。某社から電話。別件のことだったが、その中で以前から出していた企画、話に乗ってくれるということに。
「是非やりましょう」
と言ってくれて、大いに鼻息が荒くなる。実は去年から活動範囲をいろいろ広げていたのも、みんな、この企画のための人脈と経験作りの意味合いがあったのである。

弁当(シャケ粕漬け、美味)使い、仕事場へ。FRIDAYのK村くんから電話、昨日出したコラム原稿、ちょっと衒学的に過ぎたか、と思い心配だったのだが、面白かったと言われてホッとする。前の企画話で気分が高揚し、やたら気が大きくなっていたがそれとこういうモノカキの小心さとが一個の人間の中に共存することも面白い。

アマゾンで買った浅川マキ『Darkness1』聞く。中に収録されている『セント・ジェームス病院』を聞きたかったため。予想通りのいい歌いぶり。3時、時間割。猫三味線製作委員会のF氏、Sくん。ただし今日は猫三味線の件でなく、もうひとつの別企画。K子もまじえて、時期とかざっとした内容の話をする。これも、別口でひとつ動いている企画とうまく連動させれば……と思うのだが。私はいま、いったいいくつ企画を動かしているのか。ときおり、自分でもわけがわからなくなる。終えて買い物し、帰宅。

日記つけて、ゲラチェックなど。5時45分、タクシーで赤坂TBS。コロムビア通り(TBS裏手に通ずる通り)にホテル『hotel the b’akasaka』というのがある。かつてのシャンピアホテルであるが、経営が変わったようだ。しかし、どう見ても“バカサカ”と読める。ビジネスで使う人たちもそう読んでいるに違いない。命名のとき、考えなかったか?

入館証を忘れてきた(気圧のせいだなあ)ので当日入館証をもらうが、ほとんど顔パスみたいな感じで入れた。スタジオには珍しくすでにおぐり入っている。今日はソウルフードコーナーがなく、ブロガー猫として有名なアイシス&ジェリーが来るので、待機しているそうである。ところが、いっかなその猫が来ない。どうも、車が雨の金曜の給料日後、で混んでいるらしい。ゲストも、7時になったのでオノをロビーまで迎えにいかせたがなかなか上がってこない。小林麻耶も、最近はいつも7時頃にはスタジオ入りするのに15分過ぎても入らない。S川ADなどと
「なんか手持無沙汰ですね」
と話をする。I井Dも「ひょっとして今日、曜日が違ったかな」とかつぶやく。そんなわけはない。

やがて、やっと西原入り、麻耶が入り、猫たちが入る。西原、蒼白い顔。聞いたら
「夕べずっと岩井志麻子と飲んでいて、どこで帰ったか記憶にない。今朝起きてすぐ吐いて、さっきまでバテていた」
とのこと。翌日に仕事頼んでいるんだから考えろよ、と思いつつも吹き出してしまう。変わってないわ、この女。

で、そのときの岩井志麻子がいかにエロばなしをしていたかをしばらく話して、私もソッチ系が好きなので盛り上がり、打ち合せもロクに出来ず。推薦CDはカニエ・ウエストの『ジーザス・ウォークス』。これは意外。ラッパーなどに興味があるんだ。一方で猫の方は、そもそもスタジオに連れてきただけで興奮。同じく興奮しているおぐりがいりいろとじゃれつかせるが、かえってフー、とナーバスになる。

この頃はみんな慣れてきて、普通打ち合せの後に10分くらいは余裕があるのだが、今日はあ、と思ったらもう本番1分前であった。いつもの通り話は進み、ゲストコーナーの西原、なんかマイクからやたら離れて、二日酔いなのでぼそぼそとしゃべる。ところが、これで話している内容というのが毒たっぷりで面白い。小林麻耶が噛んでこれないくらいに昔の話で二人だけの世界に行ってしまい、コメントで
「お二人のトキワ荘時代の話が面白い」
と書かれた。もっとも、
「居酒屋トーク」
とも書かれたが。
西原の
「絵ってのは上達ばかりじゃない、“下達”もあるね」
という話には笑った笑った。NGワードもだいぶ出たような気がするが、しかし西原呼んでおいていいお話を伺えるとは誰も期待していないようだろうから。

驚いたのは、高須クリニック院長が、この番組のスポットを買った、ということ。このあいだの放送を聞いてお気に召したのか、新刊を広告するためか、あれからすぐ、電通に電話して買わせたそうである。感覚がやはり、われわれとは違うなあ。

さてその次が猫。今日はこの猫のためにスタジオ内にウェブカメラが仕掛けられ、猫の姿が映る。最初のコンセプトで、おぐりが猫相手に大真面目に
「ブログを始められたきっかけは?」
「ネットで自分の私生活が世界に発信されるのをどう思います?」
と聞いて、猫が“……”と無視、というモンティパイソン風なギャグで行こう、とI井Dとで話しあったのだが、最近の若いリスナーや、まして猫ブログの方の常連にはそういうのはどうも通じなかったらしい。なんか、批判的な書き込みがいくつかあって、やがてそれがエキサイトしてきた模様。これはこれで大変に面白く、私もI井Dも大笑いしていたのだが、おぐりがちょっと気にしてしまっていたのがかわいそうだった。

とはいえ、内容はI垣Pも絶賛。I井Dと同じく、前回のようにキチッと構成した回が出来る力があるなら、安心してあえてハプニング、アクシデントの緊張感をどんどん出して行こうという考え方らしい。

ポッドキャスティングは“ヘアー”。終わったあと、ギャラリー(ラジオでもそう言うのか?)で来ていた海谷さん、はれつさん、ラジオライフTさんも誘って、庄屋で打ち上げ。西原はさすがに帰った。おぐりが“批判されるのイヤですー”と言うのを、I井、イニャハラ、海谷、私の面々で
「批判されるってことは人の視野に入っているということで、されてナンボ。批判もされない役者やモノカキはすぐ消えるよ」
と教えるが、おぐり
「なあなあで行きたいですねえ、基本は」
などと言ってきかない。も少しここらでの耐性をつけないとメジャーではつらい目に合いそうだ。

とはいえ、ブジオを聞いているサイトの人の中で
「おぐりゆかのコーナーを聞くことが今、最も大切なひととき」
などと言っているところもある。
「女版・杉平助みたい」
とその人は表現していたが、おぐりは杉平助など知らんだろうな。そんなことを言いながらおぐり、イニャハラさんとひれ酒を世にも嬉しそうな顔をして飲んでいた。

これからの予定につき、I井、イニャハラ両氏と少し話す。近々、I垣Pと話をさせてもらうことに。I井さん、今日の放送で自分の番組のパターンに新たな項目がひとつ増えた、と。12時、解散。はれつさんとタクシー相乗りで。西原のファンだったらしく、なにかご機嫌だった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa