裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

11日

土曜日

あほんだらホリデー

なぁにが“お呼びでない”だ、このあほんだら。朝8時半起床。ゆうべはとにかく、背中には鉄板が入ったよう、足は攣る、ひどい胸焼けに悩まされると、さんざんだった。2時にベッドに入って起きたのが8時半だが、睡眠時間は正味4時間、あるかないか。

眠い々々と入浴、なんとか体を正常な状態に覚醒させて朝食、ブロッコリのスープに、シイタケ粉末を混ぜ込んだもの。この粉末には血圧を下げる効果があるそうな。あとイチゴ3粒、ミカン小1顆。

日記つけ、ソウルフード本の作業でバーバラとおぐりにメール連絡。12時あたりから、自宅のパソコンの調子がおかしくなる。ミクシィで落ちグセがついて、それでも昨日まではなんとか設定が復元されたが、一端オチると初期設定に戻ってしまい、ミクシィもニフティも、いちいちIDとPWを打ち込まないと入れなくなってしまった。ミクシィはいいが、ニフティのPWが、メモっておいたものを入れてもハネられる。仕方なく照会メールを出したら、
「あなた様のパスワードをニフティメールに送らせていただきました」
と回答がくる。そのニフティに入れないから照会しているんではないか。どうも、不条理だな。まあ、仕事場に行けば見られるわけだが、納得がいかない。

12時半、家を出て青山へ。WAHAHA本舗稽古場で、清水ひとみさんと『大女優宣言』稽古。昼飯を食い損ね、近くのam.pmで菓子パンひとつ買って。今日は演出の喰さんがいないので、とりあえず一幕目の台本を入れてしまうことに。キャラもギャグもあえていれず、二人のやりとりのところだけを繰り返しやる。

稽古場に、WAHAHAのご用達の咽喉科の病院のメモが貼ってある。『声が不調の時の注意点』。役者にとって声をつぶすのは職業病とも言えるが、声帯の不安定が声帯ポリープや結節へ移行することもある。私もしゃべる商売だけに、この張り紙に目が行って、読んでいたら清水さんがコピーしてくれた。
特になるほど、と思ったポイントは以下のもの(要約)。

○声を痛めているという認識があると、人は“ささやき声”で話そうとするがあれはかえって声帯に緊張を与える。だみ声でいいから、リラックスして楽な息継ぎを。
○鼻声になっていないか確認。鼻声は声帯にも負担がかかる。
○咳払いしない。声帯をいじめることになる。
○騒音下で話さない。無意識に大きな声になっている。
○寝室を含む生活空間の最適湿度は50%以上。
○喫煙は声帯の最大の敵。
○適度のアルコールはいいが、過度の飲酒は酔ってつい、大声になる、飲酒は少人数、静かな大人のバーで。

清水さんと
「酒を飲むな、とは書いてないのがいいねえ」
と話して笑いあう。

ここ(東商ビル診療所)のドクターはWAHAHAの役者さんたちの主治医みたいな人で、まったく声が出なくなってしまった役者さんの声帯に毎日注射を打って公演を完遂させたりしたこともあるそうだ。格闘技団体は必ずリングドクターを置いているが、劇団にもステージドクターが必須だとは前から思っていた。こういう人は貴重である。

3時半、仕事場に帰る。途中でバーバラから電話、道々話しつつ。仕事場でメールチェック、送られたPW確認するが、以前入力したので間違っておらず。さては……と別の理由に気がついた。気がついて見ればナーンダであるが。
5時、タントンマッサージ。背中と足の裏中心に。「いつもと違って、凝りがほぐれにくい」と先生。風邪の前段階症状ではないかと思う。元アニドウのGくんとHMVの前で待ち合わせ、新楽飯店でメシ&酒。

彼とはもう四半世紀前からのつきあいだが、こういう差し向いでの酒の席は初めて。昔の知りあいの消息から始まって、アニメの話、特撮の話、尽きず。GくんはHさんを呼び出し、私はぎじんさんを呼び出す。新楽飯店二階に席を移し、さらに飲んで話す。

ぎじんさんは談笑の回の常連で最近はアニドウにも来ているという女性を連れてきた。Hさんには彼がアイちゃんアイちゃんと呼んでいる友人がついてきた。彼の体を心配して、友人たちがかわるがわる脇についているらしい。確かにHさん、精神的なダメージがひどそう。奥さんを亡くしたのだから当然ではあるが、以前とはイメージがまるで違う、話のはしばしにディスペレートな感じがただよい、話がリフレインし、さらに突発的に妙に攻撃的になる。抗うつ剤の作用だろう。

酒は止めさせたいが事情を知っているとそうもいかない。Gくんが今回上京したのはHさんがいまやっている仕事に使うあるギミックを、昔Hくんから譲られて所有していたので貸し出すためということだったが、彼を心配してのことでもあったろう。次の京撮で撮る作品のことを話すとやや、心がはずむようなので、江原さんや竹内さんのことを話題にし、化け猫マニアのHさんに、
「猫三味線はいずれ必ず完全実写化するから、そのときは協力してよ」
と依頼。
「もちろんですよ、連絡してこなかったらダメですよ」
との答えにちょっとホッと。

12時半、さらに飲むというHさんとGくんと別れ、ぎじんさんとちょっと道々、猫三味線イベントの件、話しつつ帰る。結局今日も午前様になってしまった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa