18日
月曜日
バンバの忠太郎
こうして上下の瞼ぴったり閉じりゃ、闇にうごめく新人類の姿が浮かんでくらあ。朝、また2時に目が覚めてしまう。どうにも仕方ない。しかも二日酔いで右の目の奥がズギズギ痛む。眠ろうと努力するが目は冴えるばかりで、結局起き出して日記つけなどして、6時ころまで。またフトンにもぐり込んで、7時まで一時間ほど仮眠。7時、朝食。K子にジャガイモ繊切り炒め。ブドウ。カフェオレがぶがぶ飲んだら、汗が吹き出てきた。気候も体調も何か変な具合。新聞はまたオリンピック一色。女子柔道、キューバのベルデシアは顔も可愛い。日本の楢崎は、なあ。体を一度引退してから再度、作り直しての銀メダルは凄いと思うが。
朝、薬局新聞一本。書き上げて、また寝てしまいそうなところを、夜寝るためにガマンする。2時、歯医者。右上の一番奥と次の歯に型どりした金属を入れる。やっとまともにモノが噛めると思うとホッとするが、しばらくは熱伝道がいいために染みるだろうとのこと。不思議なもので、ヨーロッパ旅行中にはこの奥歯、ほとんど気にならず、ステーキだろうと串焼きだろうと何でも齧っていた。日本から持っていったトンプクの痛み止めも一錠ものまずにすんだ。日本に帰国したとたん、ものが噛みずら い、鈍痛がする、と、また旧に復したのである。
歯医者を出て、六本木へ足を向ける。立食いソバの店で冷やしタヌキ一杯すすりこみ、銀行で金をおろし、青山ブックセンター冷やかす。結局フリマ情報誌一冊のみ。マンガが中二階に移って、のぞきにくくなった。明治屋に行き、シーフードサラダなど買う。あと、出すの忘れるところだった氷川竜介氏の出版記念パーティの出欠届け をやっと出す。
帰って少し仕事。ナンプレ、やり出して途中でこないだ電話のあったテレビの製作プロダクションの人がくる。テレ東(今だに『東京12チャンネル』と呼びたいのだが)の番組の中で、われわれ夫婦を“問題夫婦”として取り上げたい、という。何やらスキャンダルだの、普通の夫婦に比べての欠陥だのを持った夫婦関係を番組の中のコーナーで十分ほどのドキュメントにしたい、という意向らしい。そんなドッしようもないテーマでの取材はお断りだし、第一ウチには問題らしき問題はない、と言う。子供は作る気がないから作らないだけだし、実家を継がなくてもちゃんと養子が継いでくれていて、彼と両親、彼とわれわれ、われわれと両親の中も極めて良好である。仕事は現在順調だし、古書やB級物件のコレクションも、生活を圧迫しない程度をきちんと守っている。同種の業界に二人ともいるからお互い理解しているし、どちらかが堪えているということもない。料理は私が担当している代わりに、掃除選択は女房が全部担当してくれている。共働きの夫婦としてアタリマエの形だろう。
それにしても、テレビの人間のモノシラズには呆れる。私のことを“どういうものを書いてらっしゃるんですか”などと取材に来ていうので、“来る前にインターネットででも検索されたらどうでしょう。gooなら七○○件以上出ると思いますが”とフテる。ところがまだ私の名を知らないくらい序の口で、岡田斗司夫も知らない荒俣宏も知らない。K子の話によれば内田春菊すら知らなかったそうだ。ほとんど本とか雑誌というものを読まないらしい。字が読めないのかも知れない。これで番組が作れるというのだからテレビというのは大したものだ。怒鳴りつけたくなるのを堪えて、この業界の仕事のことを詳しく話す。そしたら、
「今回のテーマには合わないかも知れませんが、先生中心に一本、新たにコーナーを設けますので、ご実家とかにも取材させていただけますか」
ときた。まあ、それでそちらの企画が通るなら、と答えておく。
彼ら帰った(続いてK子の仕事場にインタビューに行った)後、大急ぎでナンプレの原稿を仕上げてメールする。金平糖のようなもので、核になるネタさえ決まれば、すぐ結晶化する。やっとテンションが上がった。ダ・ヴィンチから電話。ちょっとパロディっぽいオアソビ評論の依頼。打ち合わせながらアイデアがワッと湧いて出て、喜んで引き受ける。
8時半、新宿に出てすがわら。K子と待合せ。テレビの話。北海道に両親と対面 に行く飛行機賃が出るそうだ、と言ったら、“しまった、故郷はポーランドと言っておけばよかった”などと言って大笑い。徳光の番組ともなると金が使えるようで、われわれが結婚式をしてない、と知ると、では金を出すから結婚式を挙げたらどうか、などと言ったそうである。寿司はひらめ、コハダ、ウニ、甘エビ、穴キュウなど。コハダが脂のって絶品で、おかわりをした。鯛のおかしらのちりスープを出してくれる。