裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

5日

木曜日

幕末くん

「シェー、大政が奉還されたざんす」

※ゲラチェック 雑用ばかり

そろそろ朝方に移行しようと思っているのだが
なかなか出来ず、10時半ごろまでベッドの中。

いくつかスケジュールを変更、というか、今後の原稿執筆予定
が洒落にならなくなってきた。それを中心に、イベント予定などを
延期したり中止したり。

どうするんだ、そのまま延び延びになっている某社への
企画持ち込み。どうするんだ、延び延びになっている某社との
打ち合わせ、どうするんだ、延び延びになっっている某社への
原稿持ち込み。と、心はあせる身は細る。
とはいえ眼前の楽しみな仕事もありまして……。

T社KさんからFAX、ゆうべ出した原稿ゲラ。
前半に、現時点ではまだこう言い切るとヤバいかも、という
表現を改める。
「でもまあ、絶対そうだと思うんですけどね」
と笑いながら。あと、結論部分に今後のことの予言めいたことを
書きつけたが、なんとそれが今朝のニュースを見るに早くも的中。
これは最終ゲラチェックで手を入れることに。

12時、昼食。
母の室で、納豆、ロールキャベツシチュー。
ワイドショーは市橋容疑者の整形。
インタビューで高須先生が出てきて、業界の裏の部分を述べていた。
しかし、ルーシー・ブラックマン嬢のときといい、
この事件の被害者リンゼイ・アン・ホーカー嬢といい、
日本人犯罪者はイギリス女性が好み、なのか?
http://www.youtube.com/watch?v=PNFHFa4_PoI&feature=player_embedded
↑このイギリス女子も日本人に大人気だというが……。

自室に戻り、雑用一束。
佐藤歩の少年探偵ものの連載用写真撮影の日取り打ち合わせ。
第一回用のメモを作ろうと思って名前がこの探偵についてないのに
気がついた。すばるは芦辺さん用にとっておかないといけないし。

雑用は片づけても雑用。
充実感ないままに一日過ぎる。
そのくせ、時間を無駄にしたという焦燥感のみ残る。
ホントにイヤんなる。

ノンキすぎる某氏にメール、思った通りノンキな返事。
怒る気にもならぬが、しかし切実な問題なのだがな。
まあ、キチンとするって言ってるからしばし様子を見るか。

※※
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-12305020091105
 [シウダフアレス(メキシコ) 4日 ロイター] 米国と
 国境を接するメキシコのシウダフアレスで、ストリップクラ
 ブに自動小銃を持った男たちが乱入し、店内にいた米兵1人
 を含む6人を射殺した。軍当局が4日明らかにした。

マスクをかぶった犯行グループは店内に入ると6人を探
 し出し、全員に複数回ずつ発砲したという。

軍のスポークスマン、エンリケ・トーレス氏によると、
 犠牲者の1人はテキサス州エルパソから来ていた26歳の非
 番の米軍兵士。店内では麻薬が売買されていたとみられ、麻
 薬組織のメンバーとみられる武装集団は6人だけを狙い、犯
 行後に逃走したという。
※※

事件はともかく、エンリケ・トーレスなる名前に反応。
いや、そういうプロレスラーがいたのだよ(写真)。
軽量の選手の多いメキシコ・レスラーとしては例外的に大型。
マットの魔術師、希代の業師として第一回ワールド・リーグ戦に出場。
「力道山が生涯勝てなかったのはカール・ゴッチとエンリケ・
トーレスだけ」
とアントニオ猪木に言わしめた男で、事実彼が力道山のインター
ナショナル・ヘビーに挑戦したときには、1対1のタイのあと、
3本目でラフファイトに持ち込もうとした力道山が同じくラフで
反撃を受け、興奮して両者流血となり場外乱戦、リングアウトの
引き分けでかろうじて力道山はベルトを死守している。

名前のスペルはEnrique Torresだから今の資料ではエンリケ・
トーレスと表記されることが多いが、当時は“エンリキ”・
トーレスと呼んでましたな。エンリキとは妙な名前だと思ったが、
しかし
http://www.youtube.com/watch?v=iCi8MyUA8RE&feature=player_embedded
↑これとかを見るとリングアナはエンリキと呼んでいる(実況
アナウンサーはエンリケと発音。どっちじゃ)。

ニュースを見て一瞬、まだ生きていて引退後軍に務めたか、
と思いかけたが、そんなワケはない。晩年は腎臓透析を受け
(円楽師と同じ)、2006年腎臓移植手術を受けたが予後は
思わしくなく、07年9月死去。85歳だった。

サントクに買い物。
牛スジがあったので一パック買って、冷凍してあった
豚タンと一緒に、屑野菜と一緒に茹でる。
二時間半ほど茹でて、夕食の酒の肴に供す。
味も何もつけずに、ネギダレに味噌をまぜたものをなすって
食うのが好み。うまいうまいと平らげる。

モツとかスジなどの煮込みを食うと、何となく身体にパワーが
宿るような気になってくる。
こういう料理の記述で最も心に残っているのは松原岩五郎の
『最暗黒の東京』の獣肉食の件で、原文をぜひ引用したいのだが
引っ越し荷物の中にまだまぎれているので、雑賀恵子『空腹に
ついて』(青土社)の中の(たぶん雑賀による)現代語訳を
引くが

「馬肉飯は、深川飯と同じ調理法で、種は馬肉の骨付きを
 こそげ落としたものであり、一杯一銭、脂の臭いが強く鼻
 を突いて食べられたものではないが、労働者は三、四杯を
 かき込む。
 煮込みは労働者の滋養食で、屠牛場の臓腑、肝、膀胱、
 舌筋などを買い出して細かく切ったものを串刺しにして、
 醤油と味噌を混ぜた汁で煮込んだもの。一串二厘で、嗜み
 食うものは立ちながら二〇串を平らげたが、腥さが鼻の辺
 りまで漂い、味も異様でとても常人の口にするものではな
 い」

などとある。最初にこの文章を読んだのは十八か九のときだった
と思うが、明治人の松原が臓物食を徹底して汚らわしがっている
のが逆にユーモラスで、何か食欲がわいてきてしまったもの
だった。いまやモツ料理は美容にいい、と良家の子女まで
“嗜み食う”。時代なるかな。

他に、昨日やや失敗だったチリコンカーンの作り直し。
じっくり煮込んだので今度は成功。これもうまがって食べる。
食べながら第二次大戦の記録映像など。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa