裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

1日

日曜日

「円楽さん、苦しんで亡くなったんですか」「ナーニ、円楽死」

ずいぶんブラックなジョークになってしまった。
圓生が亡くなったときの川柳川柳の
「涙の円楽さん(連絡船)」
というのはうまかったなあ。

朝6時起床、寝床の中で連絡系作業しばし。
このところ、朝方左足が攣る。
利尿剤入れている副作用か?

起き出して作業、ゆうべ出来なかった台本の部分。
朝は抜く。

12時、昼食。
茶碗蒸し、もらいものの生湯葉、焼き鳥。
なんだかおかずっぽくないものばかりだが、生湯葉などは
案外ごはんと一緒に食べておいしい。
茶碗蒸しもしかり。

自室で台本書き、前半の大幅な直し。
なぜ直さねばならぬかというと、ほぼ書き上げてから気がついた
のだが、これでは上演不能なのだ。
それは、冒頭シーンに、若手中堅のほぼ全員が
板付きで出ているように設定してしまったから。

ルナティックは人手不足なため、若手が開演寸前まで受付、
場内整理などをやっている。開演した時点で彼らは楽屋に戻り、
メイクして舞台に出ないといけない。
その時間をとる必要が絶対にある。
最低二人は出を遅くしないと駄目というわけである。
上演台本というものの条件の難しさ。とはいえ、
最初から全員が出られないとその後の展開がガラリと変わって
しまう。いろいろ悩む。うーん。

悩んでいても仕方ないので、4時、家を出て池袋。
トツゲキ倶楽部『フェイクトシングルアクセルソニックリバース』。
いろいろトラブルあって、上演しているシアターグリーン到着が
開演寸前になる。出演者の中野順二さんが受付にいたのでアラ? となる。

大村琴絵ちゃんが来ていたので隣に座り、観劇。
北村さんがずっと開演前から舞台上に出ているのに驚いた。
で、見終わったが……いやあ、面白かった!
こう言っては何だが、前回、私が出演した『いつも心に怪獣を』
よりはるかに演劇的で、ギャグも豊富、見た目も派手で、
ずっと充実した舞台になっている。役者たちが楽しんでやっている
ことがよくわかる。うわっと叫んだ権藤あかねさんはじめ、
樋口かずえちゃんも前回よりずっとやりやすい役で、楽しんで
演じていたようだし、木内なおみさんは磯野フネっぽかった前回とは
180度違う役で驚き。一哉アニキも大笑い。コバーンは変わってなくて、
変わってないところが凄く嬉しかった。助川くんは永遠の弟役者だなあ。
前回出た身としてちょっとくやしいが、いや、十分に楽しめた。
中野さんの使い方はビックリ。ちょっと三田村信行
『おとうさんがいっぱい』を思わせた。

ただ、やはり横森さんの台本は私とは基本理念が違うな、と思う。
前回の怪獣、そして今回のとある超常現象もそうだが、
こういう“現実にあらざる事件”が起り、その事件に巻き込まれた
人たちの、あるドラマがその事件を境にカタストロフを迎える、
という作りはまあ、演劇として当然基本にあるわけだが、
私などはどうしても、その“現実にあらざる事件”に、
何らかの解決を与えないと書いていて尻のあたりがムズガユくなる。
どんな理屈であっても、とりあえずその事件そのものに
何らかの決着をつけたくなる。
どちらかというと、その事件の方が主で、その中の人間ドラマは
二の次になる。と学会などに身を置いているせいかもしれない。

ところが前回も今回も、横森脚本は、ドラマの方が主であって、
設定になる特殊状況は、言ってしまえば背景、なのですね。
その分わざとくさくないし、焦点を絞り込んでいるだけ
SFなどに親しんでいない観客も楽しめる、ことは確かなのだが
何となく“で、あの事件はどうなったの?”という気分が残る。
考えてみれば前記『おとうさんがいっぱい』も事件の謎は解明
されていないわけだが、国家レベルの問題にまで広がって
対処法がなされたということで、あれは読者もまあ、満足するのだろう。

終って横森さんはじめこころちゃん、松ちゃん、一哉さんなどに
挨拶。こころちゃんも芸域が広がったなあ。
終って、近くの居酒屋『清龍』(ここらで最も安い居酒屋)で
飲み会。一哉アニキ、松ちゃん、添野豪さん、助くんなど。
芝居の話、知り合いの話などワイワイで11時半まで。
雨の中、いろいろもの思いつつ帰宅する。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa