裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

土曜日

しきる

 ほらほら、そこの乙女、命短いんだからさっさと恋をしなきゃダメだよ! あーそれからこっちの乙女はね、そろそろ唇があせてきたから後ろに席譲って……。朝7時起床。夢の中でまで原稿を書いていた。しかもその原稿が北朝鮮の拉致事件に関してのものなのだが、いや通俗極まる内容で、夢の中でくらいもっと翔んだ内容のものが 書けないか、と読んでいて自分で嫌になった。悪夢の一種?

 8時朝食、トマトのスープ。テレビのニュースで次世代新幹線の猫耳型空気抵抗減速装置を見て笑う。さて、萌え系コミックでどれだけネタにされるか。自室に戻って仕事少し、10時半にタクシーで代官山エド・エドまで。土曜とは思えぬほど道が立 て込み、11時の予約が15分遅れ。

 エドエドはスタッフうち揃ってスターウォーズファンで、今夜全員で先行上映に行くのだそうだ。髪切って貰って渋谷に戻り、蕎麦屋でカツ丼。少し胸焼け。二見原稿とりあえず取りかかって編集Yくんにメール。なをきから文庫化する本の原稿につき 連絡。原稿管理、やはりダメな会社がある。

 2時50分、エントランスで六花マネと待ち合わせ、迎えのハイヤーで汐留日本テレビ。『世界一受けたい授業』収録。今日はスペシャル版で5時限目まである。われわれ講師陣は1時間拘束だが、生徒役のみんなは最低五時間、リハとか入れると6〜7時間拘束である。仕事というのは大変なものだ。一時間目の授業を見ていたら秋山仁先生が着流しに刀を差した格好で出てきて、
「私はこういう格好は嫌だといったんだがどうしてもと言われて……」
 と言っていた。結局テレビに出るということは、自分の好き不好きに関わらずこう いう格好をさせられるということ。

 二時間目の授業、今日は上滑って不調。久本さんが私のことお気に入りはいいが、関係ない質問を収録中にしてくるというのが困る。それにしても上田、伊集院という自分も雑学系の二人、私が出るとぴたりと最近、なにも言わなくなった。比べられる と損、と思ってのことか。

 ちょっと神経つかって横っ腹がキリキリとする。終わってエレベーターに乗ったらギター侍と東幹久がいた。お互いいくつかの番組で顔合わせているので挨拶交わす。 なんか芸能人になったみたいではないですか。ディレクター氏、
「先生はこれから地方とか行かれるんですか」
 と訊いてくる。秋山先生はこの収録が終わってすぐ地方講演、金田一先生は地方講演終わってすぐこの番組の収録、なのだそうだ。ご同業、同情と共感と。文化人たち も稼がないといけないんである。

 タクシーで東新宿まで。焼肉『幸永』で、今度外部スタッフになってくれるMさんと面会。三人でいろいろと話す。Mさんは私の大ファンだが、本来スタッフは盲目的ファン(信者)ではいけないのですよ、という話。本人の仕事の調子が悪いとき、誰 より早くそれに気が付いて指摘してくれないと困るからである。

 人間にも組織にも実はネガティブ情報が一番重要な情報なのだが、たいていのボスはそれを排除しようとし、根拠のない“自分(たち)は大丈夫なのだ”という自信というか楽観というかの中に逃げ込んで、やっと自分のあやまちを認めるころにはどうにも身動きがとれなくなっている。小野伯父には全盛期に7人ものマネージャーがついていたが、誰一人、ネガティブ情報を伯父に伝えられる者がおらず、気がついた時には仕事が激減していた。諌臣無き国家は滅ぶ。もちろん、諌言にもそれをうまい具合に受け入れさせるテクニックが必要だが。毒舌と諌言はそこが違う。話しているう ちに諌言論を書きたくなった。

 幸永は久しぶりなので注文の調子狂い、目の前にホルモンが山をなす。それでも、あっと言う間にその山が切り崩されていくのは見事。9時に追い出され、タクシーで帰宅。かおると真琴、それに竜太が来ている(かおると真琴はカレシ同伴)。まじってちょっと話す。かおるはまあ業界人であるが、他の連中はごくごく普通の一般人。そうか、こういう世界があったんだった、という感じ。日頃、いかに異常人に囲まれ て暮らしているか、ということであろう。

 自室にもどり、シャワーして酔いを醒まし、二見原稿。スターウォーズはこれが終 わってからのご褒美にとっておく。

※ミクシィメールにて、6月22日の日記でロバート・クラークを『暗闇にベルが鳴る』(1975)の監督と書いていたのはボブ・クラーク(本名ベンジャミン・クラーク)の間違い、という指摘があった。いや、ヤフーの映画板で調べて、ちょっと不安な情報だと思い、確認をしようと思って怠っていた。訂正と共に指摘していただいた南葛人さんに感謝します。

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