裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

木曜日

紺屋貴雄

 お前の作ったオタクビデオに惚れ込んでビデオショップに通い詰め……。朝、7時起床。ベッドでバーバラ・アスカ&ゼータ・プロジェクト『今日もAV撮ってます』(イーグル・パブリシング)読む。生き馬の目を抜くような変容著しい業界なので、こういう本は常に一番新しいものを読んでいかないとなあ、みたいな義務感から読みはじめたのだが、ギリギリの業界で生きていっている人の声はやはり面白い。ただ一 カ所、笑ってツッコミ入れてしまった文章(チャトラン大杉)が。
「しかし、成人向けビデオというジャンルはすでに1970年には存在しました。それは“ポルノビデオ”という名前で呼ばれていました。ちなみに“ポルノ”はポルノグラフィの略語で生を猥褻的に表現した小説や図画のことを意味し、1850年前後にイギリスで作られた言葉であると言われています。その当時のVTRはホテルやモーテルに設置されていた頃です」
“ちなみに〜言われています”の一文を挿入したために、19世紀にビデオがあった ように読めてしまう。

 朝食、8時。またまた若・貴騒動のことを見ながらバナナとキウイ、ブロッコリスープ。新聞広告を見ると、週刊新潮と文春が完全に対立して、新潮が若派、文春が貴 派であるらしい。どちらも基本はタカ派雑誌ですが。

 雨で頭重し。きのうハリキリ過ぎた反動もあるか。K子と恒例の関西行き、京都に立ち寄るのはどうかという案が出る。ちょうど京都には一回行って、山田誠二さんと 打ち合わせをする予定だったので、それでいくことにする。

 10時半、家を出る。産経新聞読んだら演芸欄に、
「いまの若手で最も成長期待株なのは快楽亭ブラ談次だ!」
 と写真付きで記事があって驚く。いつの間にそんなブレイクを期待される位置に来ていたのか、それとも単なる勘違いか。こないだの開口一番を聞いておけばと後悔。

 打ち合わせの件、某出版社と。『社会派くんがゆく!』号外アップ。まとまった原稿書く気力なし。週プレのテープ起こしが来ていたので、そのまとめをやる。メモ程度にしておいて、きちんとした行数指示がきたら本格的に書こうと思っていたのだがちょこちょこといじっているうちに形になってしまった。とりあえずこんなもんでど うか、とMくんとおぐり、みずしなの三人に送る。

 昼食、黒豆納豆、小茄子ツケモノ、あさり汁。ご飯にシャケの粕漬けが乗っていたのが嬉しい。SFマガジン、読み込み作業が不捗。寝転がって読もうと思ったら1時間グーと寝てしまう。鶴岡から電話。いろいろと雑談。早稲田の教授会の裏話などを聞く。東大、早大、それにロフトプラスワンという組み合わせでカルチャー界にある程度地歩を築くか? ブラ談次の話、獅篭の話。獅篭は名古屋で化けたかも、という 情報が最近頻繁。東京再上陸なるか。

 SFマガジンは後回しで先にFRIDAYをやろう、とそっちにかかる。途中でフリー編集のNさんから頼まれていた子猫の本のコメントを急いで書いて送る。仕事しつつCDで『明治チェルシーの唄』。チェルシーのCMソング(安井かずみ作詞、小林亜星作曲)を、初代のシモンズから2003年のCHEMISTRYまで網羅したもの。たいてい、歴史の長いCMソングは途中で歌詞が変わったり、フレーズだけ残して別の曲になったりするものだが、この明治チェルシーの唄は30数年、その年の歌手によって多少の曲のアレンジがあるだけでまったく変わらない。だから収録曲リ ストが凄い。
1-1. 明治チェルシーの歌(1971)
1-2. 明治チェルシーの歌 (1972)
1-3. 明治チェルシーの歌 (1977)
1-4. 明治チェルシーの歌(1979)
1-5. 明治チェルシーの歌 (1981)
1-6. 明治チェルシーの歌 (1984)
1-7.明治チェルシーの歌 (1985)
1-8. 明治チェルシーの歌 (1988)
1-9. 明治チェルシーの歌(1991)
1-10. 明治チェルシーの歌 (1994)
1-11. 明治チェルシーの歌 (1999)
1-12.明治チェルシーの歌 (カラオケ Type.1)
1-13. 明治チェルシーの歌 (カラオケ Type.2)
1-14.明治チェルシーの歌 (カラオケ Type.3)
1-15. 明治チェルシーの歌 (カラオケ Type.4)
1-16.明治チェルシーの歌 (カラオケ Type.5)
 である。歌っているアーティストは
・1971年 シモンズ
・1972年ガロ
・1975年 ペドロ&カプリシャス
・1976年 南 沙織
・1979年 サーカス
・1981年 八神純子
・1984年 大貫妙子
・1985年 アグネス・チャン
・1988年 蒲原史子(ソプラノ)
・1991年 有澤圭子
・1994年 シーナ(シーナ&ロケッツ)
・1997年 PUFFY
・2000年 上原多香子
・2003年CHEMISTRY
 この無駄な豪華さ(それでもあみんやハイファイセットが抜けているのは版権で、同じ歌詞の歌が11回繰り返されるのである。聞いていて頭がクラクラする。最初のシモンズバージョンがやはり一番印象深い(CMソング傑作選などにもこれが多く収録されているせいもある)が、アグネス・チャンバージョンが何か最もあっているような気がした。

 FRIDAY、まずなんとか面白く仕上げてメール。井上デザインから、『ダメな人のための名言集』表紙案メール。関口さんの、言ってみれば素人のレタリングを逆に味にしている。これは井上マジック。9時、帰宅。里芋と筍の煮付け、野菜の酒粕漬け、まぐろの山かけなど田舎風味で晩飯、よし。日本酒とホッピー。自室で『禁断の惑星』など古いSFものビデオいくつか。水割り缶、一本飲み干せず。ネットいろいろ散策、いろいろムカついたり。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa