裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

18日

土曜日

青い目をしたご隠居は

 アメリカ生まれの70才。朝7時起床、入浴・歯磨き、服薬如例。日記などつけ、8時半朝食。なぜだか昨日、“明日は8時半”と決めたのだった。バナナとリンゴ、カリフラワのスープ(美味!)。懸案のスープオフをそろそろ実行に移さねば。今日 も晴れ。空梅雨気味なのは仕事つまっている身にありがたし。

 関口さんからイラスト直しについて問い合わせ、返信メール。それから角川書店Hさんに打ち合わせ日取りの件メール。オモテの日記にトンデモ本大賞のオタ臭のことを書いたら、反響メール凄くてちょっと驚く。そんな大きな問題だったのか? もちろん、被害を訴える当人の神経の場合もあるだろうしあまり騒ぐと単なるオタ叩きの道具にされる危険性もあるが、少なくとも汗をかきそうな日に人が集まる場所にいくには朝、シャワーを浴び、おろしたてのシャツを着ていく、くらいのことをするのは 常識の範疇であろう。

 SFマガジンに図版原稿をデータ送信。途中でパソコンがフリーズしたりしてイラつく。11時半、家を出て丸の内線で神保町まで。新世界菜館でカレー食べて、某所に行き某物件をもとめる、つもりであったがいろいろあって不可。うぐ、なんかヤバ いことが?

 古書会館に足を向けぐろりや会。芳年の春画集など、そこそこの買い物(1万数千円ほど)。毎度思うがこういう古書展というのも、客への対応とか、客の便宜を考えた用意(大きめの紙袋とか)に関してはほとんど落第点。そういうものをこれまで意識していなかった業界だからだろうが、やはりこれも改善が必要な点では? コミケを見習ったらどうかと思うのだが。もっとも古書店では滅多に異臭騒ぎは起きない。

 白山通りで、巨漢、ハゲ気味の男性が道を少女マンガを手に、“イッヒヒヒヒヒ、イッヒヒヒヒ”と笑いながら読んで歩いていた。わかる。凄くその気持ちはわかるがキミ、家に帰ってから、もしくは喫茶店ででも読め。それが社会の暗黙のルールとい うものだ。

 半蔵門線で渋谷へ帰社。車中でなをきから携帯に電話、某社からの単行本の件で少し打ち合わせ。少し休んで、4時、仕事場を出て銀座線で上野広小路、うわの空ライブへ行くため。地下鉄乗り口で
「カラサワさん、サインお願いします!」
 と背中から声をかけられた。こういうことには慣れているので、ハイハイと振り向いたら、二人組が、ちゃんと色紙とマジックペンを手に立っている。
「え、色紙なんてなんで持ち歩いているの?」
 と聞いたら、急いで買った、という。どうも家を出たあたりで私を見つけ、一人が後を追い、一人がどこかで色紙を買って、携帯で連絡とりながら、駅の近くで追いつ いたらしい。サインでよかった、殺すつもりなら完全に標的になっていた。

 広小路亭着。みんなに
「大丈夫ですか」
「楽屋でみんな“カラサワセンセイは仕事しすぎで死ぬんじゃないか”と噂していました」
 などと言われる。『名もニュー後記』今週号の一発ネタに爆笑。

 6時開演、かなりの入り。堀さんにこないだの大会の写真のCD−ROMいただき力丸さんとちょっと話す。事務方に聞くところによるとトンデモ本大賞の後、急に予約を入れてきた人がいたということだが、あそこのアリスで萌え〜とか思ってきた客はかなり今日のおぐりの織姫に、トラウマを負って帰ったことだろう。とはいえ、あのノリはライブのときだけの封印にしておいた方がいいな。あまりに強烈で、可愛い 部分の印象が吹き飛んでしまいかねない。いや、マジに凄い。

 小林三十朗の落語、奇妙なものであそこまでまとまっていないと、
「あ、モノを語るという行為のこれは原型をいま、見せられ(聞かせられ)ているのかもしれない」
 という気になってくる。しなっちコントの紙芝居、後で聞いたら書くのに8時間かかっているとのこと。
「でも、旬ネタなのでもう使えません」
 と。台本つけて30部限定とかでコミケで出したらどうか?

 クイズ大会に変わる『大討論会』コント、おぐりのいじられキャラ爆発。ぎじんさ んが見終わって
「カラサワさんが言っていた“神様の降臨”ってコレだったんですね!」
 と言うので、イエイエマダマダコンナモノジャアリマセンと自慢しておく。あれが全部ぶっつけというのが凄いが、最後の〆だけでも打ち合わせておけば、もっとまと まった“商品”になると思う。

“座長と奈緒美さん”の中で、佐良直美のレズ相手は誰だったかという話になり、す ぐアタマに“キャッシー”とは浮かんだが、さて下が何だったか。中島じゃないし、と思い、ハネ後すぐ六花マネに電話。
「佐良直美のレズ相手の名前、調べて!」
「は?」
「だから佐良直美のレズ相手!」
 すぐ検索して返答、
「あの、“キャッシー”です〜」
「だから、キャッシー何?」
「えーと、キャッシーしか出ませんが……」
「ア、そうか、そうか! 思い出した、キャッシーだけで下がなかったね。了解〜」
「……」
 さぞや“変なボスを持ってしまった”と後悔したことであろう。大阪の金成さんに電話すりゃイッパツだったか、とも思ったがさすがに大阪にこれで電話かける酔狂さ は……。

 和民で打ち上げ、コミケの件、9月の宣伝の件など島さん、ツチダさんと打ち合わせ。札幌在住で、このライブのためだけに上京してきたという熱狂的ファンのでんた るさんと写真撮影。

 11時半、山手線で神田乗り換え、中央線で新宿まで。小林さんと“なかなかいい感じになってきたのでは”的な話。新宿で降りて丸の内線、と思ったがクタビレたのでタクシーで帰宅、シャワー浴びて『モノマガジン』原稿。今回で最終回。好きなことを書く。書き上げて水割り缶、コンビニの冷やし塩ラーメンなどすすしつつ、『ス ターウォーズ』メイキングビデオなど見る。かなり酔っぱらった。

 確かに人がこの状態の毎日を送っていると聞いたら、陣中の孔明の様子を聞いた仲達ではないが、
「そりゃもう長くない」
 と思うであろう。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa