2日
木曜日
定九郎・さんぼ
猪たちは木の回りをぐるぐる回り始めました。朝6時半目覚め、寝床読書しばし。7時半入浴、8時朝食。昨日のたらふく食いがまだ残っていて食欲なし。バナナ、イ チゴ、ニンジンのスープ。ワイドショーの二子山部屋の確執。
「私もいろいろ家庭や子供にめぐまれないと思っていたけど、ここん家(ち)に比べればねえ」
と、心の底で満足し現状を肯定している主婦がどれだけいるか。花田家のおかげで 日本の平和は保たれているのではないかとさえ思う。
日記つけ連絡いくつか。お願い事した人にお礼メール。マッドハッター衣装合わせなど。海外の映画サイトを見ていて、あの“ナゾラー”が死去していたことを知る。 “リドラー”ではない。テレビ版『怪鳥人バットマン』、
「この続きは次週バットタイム・バットチャンネルで!」 (ナレーション/ロイ・ジェームス)
でおなじみのあの番組で“ナゾラー”と訳されていたナゾナゾ怪人エドワード・ニグマを演じていた俳優兼ボードビリアン、フランク・ゴーシンが5月17日、肺炎で 亡くなっていた。享年71歳。
キャリアは古く、17歳のときから舞台に立ち、テレビ・シリーズに出演していたという。本業はモノマネ芸人で、テレビ東京で放映された、エリザベス・テーラーの誕生祝い特集番組では、特別出演格で、ジョージ・C・スコットだのバート・ランカスターだの豪華なゲストを(もちろん、全部ゴーシン一人で)演じていた。確か刑事もののテレビで、ジェームズ・キャグニーにあこがれるあまり、そっくりのものまねでキャグニーになりきって、映画の中で彼が行った通りの犯罪を犯す精神異常者を演 じていたのも見たことがある。
たぶん、代表作である『バットマン』でも、原語版ではいろんなモノマネ芸をやってみせていたのではないか(TV版のDVDボックスを出してくれーッ)。日本語版では確か声優は近石真介がやっていた。
「日本でこの俳優を認識している人間というのも、自分含めて100人には満たないだろうな」
と思いながら、ときおりテレビ画面に出てくるそのしゃくれ顔を見るたびに、うれしく思ったものだ。『バットマン』は悪役スターに大物を使っていたので、ペンギン役のバージェス・メレディス(『ロッキー』シリーズ)やジョーカーのシーザー・ロメロ(『ヴェラクルス』『緯度0大作戦』)などはしょっちゅうスクリーンでもお目にかかれたがゴーシンはテレビが主な活躍の場で、なかなか映画には出てきてくれなかった。1957年のSF映画『暗闇の悪魔』に出演しているが、これは副題が“大頭人の襲来”ということでもわかるとおりコメディで、フランク・ゴーシンはこの映 画で唯一、宇宙人に襲われて死亡する被害者役で出ている。
それでも、やはり一番人々の印象に残っているのはエキセントリックな知能犯、ナゾラー役だろう。スター・トレックではオリジナル・シリーズで、顔の半分が白、半分が黒というヘンテコな宇宙人を怪演。この星では顔の左側が白い種族が貴族で、顔の右側が白い種族を徹底して差別しているという設定の、露骨な人種問題のアイロニ ー話で、スタトレの中でも最もリアルでないサタイア臭のきつい回であった。
日本ではマニアックな知名度しかなかったがアメリカではショー・ビジネス界の大立て者で、晩年は大先輩のコメディアン、ジョージ・バーンズ(『オー! ゴッド』など)の伝記の舞台化で、主役のバーンズ役を持ち役にしてロングランを続けていた という。最後までモノマネ芸人としての人生をまっとうしたということか。
オタクたちにも非常に親しく接し、古いレアものコミックスの紹介ビデオなどで司会を務めていたりした。ああ、また秘かにファンだった役者がこの世を去ってしまった、と落胆。ググったら日本でも訃報があちこちのニュースサイトで案外報じられて いたけど、みんな揃って“リドラー”表記。わかってない。
こんなことでネットを徘徊していた。最近出社が遅れがち。今日も12時過ぎ。いかんいかん。某国営放送Yくんから電話、ちょっと長話になる。昼飯、黒豆納豆、ピリ辛キュウリ、アサリ汁。二見書房Yさんからメール、8日の撮影の打ち合わせ。そ れはいいが本の進行がシャレにならず。
トンデモ本大賞構成台本、最終手入れ。時間合わせの計算にちょっとハマる。あっちとこっちで五分削ってこっちに十分回して、と。細かな作業に淫するのは非常に楽しいが、あまり気力充実していない証拠だな。完成させて、まず実行委員MLにアップする。二日後に大会を控え、物販、車輌、人員配置などについてスタッフ間のやり とりメール飛び交っている。開戦前夜的雰囲気。
そして事務局の眠田さんから、ついに前売り予約数が去年の最終前売り数をわずかながら上回ったという報告。実行委員会のメンバーたち、たぶんこれ読んでモニターの前で“よっしゃー!”と叫んだのではないか。前々回、前回と、トンデモ本大賞が宣伝にあまり力を入れずにすんだのは、大会の大体一ヶ月くらい前にと学会関係の書 籍が刊行されたためで、そこにチラシをはさんでおけばよかったのであった。
ところが今回は、版元が太田から楽工社に移った関係で、発行がギリギリになり、なんと開催の6日前にやっと書店に並ぶ(それも紀伊國屋など一部書店はそれより遅れる)という状態だった(事情が事情だけに逆によくその前に刊行できたという感じだが)。その不利の中で地道に会員たちが自分のサイトに告知を載せ、チラシを刷って配り、連載を持っている雑誌に宣伝を載せてもらい、と、頑張って告知に相務めてきた。最初は前売り状況の延びが思わしくなく、いざとなったら二階席は封鎖して、招待客も一階席に詰めてしまおうとか話していたのが、後半ジリジリと売り上げを伸ばし、ついに前年度売り上げを抜いた。あに興奮せざるを得んや。……もっとも、フリで入ってくる一般入場者の数がやはり不安ではあるが。晴れてくれればいいのだが な。ワクワクするが仕事手につかず。天気のせいもあり。ずっと小雨。
6時半、家を出てライブハウス新宿マローネ。関口誠人さんのライブにゲスト出演する。ルヴェルの短編と、マドンナメイト『美少女幼な奴隷の拡張検査』の二本を読む。片やじっくりとミステリっぽく不気味な話、もうひとつはトンデモエロ小説。そ の全くの朗読形式の違いを味わってもらおうという寸法。
ここのファンはいわゆる関口さんの純粋な音楽のファンなので、私の朗読のようなサブカルが果たしてお派にあうかどうかはわからず。と、いうか、わからなかったろうな、と思う。関口さんが後でフォロー入れていた。しかし、『美少女幼奴隷〜』の方の朗読は、私のこれまでの朗読の経験をブッとばしたハイテンションなものになり
「あ、このテがあったか!」
と自分で内心ビックリした出来。これはそのうちたっぷりとロフトかネイキッドで やってみたい。 要するにこの原作がエロとはいえブッ翔んだエロであるため、エロをエロく聞かせるのでなく、モンティパイソン調に、オーバーアクト全開で読んでみた。脳内に快感物質でますよ、これ。終わったあと、マローネのマスター夫妻(息子が男闘呼組の前田耕陽)に“声、いいですねえ!”と褒められる。まあ、声しか褒めようがないか、と苦笑。それでも、またウチで朗読やってくださいと資料など渡された。
しばらく関口さんと幻冬舎の件など打ち合わせ。トンデモ本大賞にも招待していたのだが、月を間違えていて、用事を入れてしまったとのこと。9時、出て外で飯食って帰宅。昔のプロレスのビデオなど見て水割り缶二本アケ。大賞構成台本、一般会員MLにアップ、司会のおぐりゆかにメール送信。