裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

30日

木曜日

クライアント馬場

 馬場さんから全日本プロレスの広告を依頼されました。朝5時半、目覚ましが鳴って起床。K子がかけておいたのだが、この時間は夏コミのときに合わせたもの、だと いう。年に二回のおつとめの目覚まし時計よ、ご苦労。

 まだ真っ暗な中、入浴、朝食。朝食は今日はこっちで、K子の焼いた、味も何もないパンをぼそぼそと。それから準備、と言ってももうコミケには悪馴れしており、販売物はすでに送っているし、必要な最低限のもの(お釣りだの陳列台だの)を紙袋にひとつ、あとキャリーだけ。メールを見たら、31日アップ予定の社会派くん対談原稿が来ている。これをザッと片づける。コミケの日に仕事したのは初めてかも。コンビニでサンドイッチ、飲料類など買い込んで、冬の快晴の下、タクシーでお台場。

 ブース確認、荷物配送も確認、毎度これもご苦労。ただ、ミスと言うほどのものではないがちょっと間違いがあって、合体でとっている立川流と東文研のテーブルでの位置を間違ってダンボール箱が置いてあった。ベテランの太陽出版とポプルスだけに 珍しい。

 今回は販売物が『コミビア』のパロディ(?)の『ゴミビア』なもので、おぐりゆかをうわの空から借りて、テレビと同じ白衣姿で売り子に立ってもらう。昨日チケット渡しておいたが、大丈夫かな、と思っていたが、一回、場内で迷ったとの連絡が携帯にあったものの、無事到着。さっそく白衣姿に着替えてもらう(白衣を羽織るだけならばコスプレの着替え室まで行く必要なしということはスタッフに確認済み)。

 彼女をつれて柳瀬くん、石黒直樹さん、氷川竜介さん、眠田直さん、岡田斗司夫さんなどオタク大賞がらみの人々のところに挨拶回り。オタク連に彼女の白衣+眼鏡姿はやはり大ウケで、みんなの表情がニヤけるのがわかって少し心中でシテヤッタリの気分。

 卯月妙子さんも自分の同人誌二種類もって無事到着、宮垣はシャッター下りる前に間に合うかという状況だったらしいが、これもなんとか到着した。彼はナンビョーサ イトの方にコミビアを委託して いるので、そっちの要員になっていただく。

 隣の本家立川流にはこれも気合十分の談之助夫妻の他、販売要員に雷門獅篭が入った。久闊を叙しあう。元気な様子で安心。売り子をするだけでなく、彼自身の同人誌 『少年サンダー』を並べているが、これがカラー表紙の豪華なもの。談之助が
「同じ値段でウチのより豪華なものを並べてどうする」
 と笑いながら言っていた。それにしても今回、この島の濃さはちょっと特異。

 いよいよ開場、今回も東文研は川(大きな通路)の前だが、前回、前々回のようにシャッターのすぐ近くではないので、人の波にうちの客が遮られることもなく、当初からウチ目当てに来てくれた人がいて、順調にハケていく。今回のコミケはふだん3日間開催のものが事情で2日に凝縮されているので、客の密集度も高い。一応、人気ブースとはいえ、評論は地味なもんなのだが、今回はほぼ開場から2時くらいまで客 足とぎれず、最繁期の12時(一般入場開始)のときの
「同人誌にチラシ添えて渡し、金受取り、それを脇のK子に渡し、お釣りを手渡し」
 という作業の繰り返しが、『モダン・タイムス』的な状況になった。これは隣の開田さんたちのところ、岡田斗司夫さんのところなども同じ。評論ブースとも思えぬ熱気。800冊持ってきた同人誌のうち、700冊を2時までに完売。4時までねばればあと100冊くらいハケたろうが、うちは2時撤収が初めてブースをだしたとき以来の伝統(一回、間際までねばって帰りの車がつかまらず、ひどい目にあった)なのである。『UA! ライブラリー』新刊も、ナンビョーブースからの委託本も完売。

 談之助のところも“コミケ初参加て以来の完売”らしく、獅篭は次々にやってくるファンたちに、サイン責めにあっていた。おぐりの売り子としての奮闘というか、体力には、さすが若さもあるが、一日二回公演などやって役者というのは体を鍛えてい るなあ、と感心。開場している間中、のべつに
「唐沢俊一先生の東文研ブース、新刊『ゴミビア』の列はこちらでーす。一部500円になっておりまーす」
 と声をあげ、売り場に座って本を売り、自分のファンには挨拶したりサインしたりして、最後まで疲労も見せないし声もからさない。これにだいぶ助けられた。立ってばかりは可哀相だと思い座ってもらったが、そのときも同人誌を手に声をあげ続けていた。事実、毎度コミケでは朝から2時くらいまで、ペットボトルのお茶などを飲みながら売っていても、私は一回もトイレに行かない。声を上げ続けて、汗をかき続けて、水分がそっちで発散してしまうのだ。今回は声をあげる作業の大半をおぐりにまかせてしまったので、私としては異例なことに、一回トイレに立った。それくらい楽だったのである。ところでそのトイレ、メイドさんが列にずらりと並んでいるので、一瞬、男女用を取り違えて入ったかとあわてた。これが全員男。今回のコミケは男性のメイドコスプレがやたら多かった気がする。

 1時ころ、みずしな孝之さんも来てくれたので、コミビアを五冊、進呈。しなっちファンのユキさん(談之助のかみさん)がサイン貰っていた。おぐりは卯月さんと名刺交換していたが、エロにまったく縁のない女優と、エロの権化みたいな女優のツーショットは貴重だったかも。少しハラハラする。

 2時、撤収して、K子、おぐり、宮垣、みずしなのメンツでタクシー分譲で渋谷まで。今日の精算作業をするK子を仕事場に向かわせて、こっちはうわの空メンバーとお茶。モスバーガー食べながら雑談。おぐりが故郷におみやげに持っていくというゴミビア同人誌にサインする。“「へえ」のセンセイと知り合いだと親戚に自慢してきます”とのこと。東京駅に荷物を一旦置いてくるという彼女たちと一旦別れて、こちらの仕事場に戻り、ネットなどで連絡少し。奈良の小学生殺人事件、犯人逮捕の報を読む。フィギュア萌えではなかったようだが、押し入れからロリビデオやマンガが大量に発見されたらしい。やんぬるかな。

 6時にタクシーで東新宿幸永。おぐりをと学会主要メンバーに紹介するつもりでいたが、浅草の落語の方にハケる人が多かったので、残念ながらこっちは15人ほどの少人数による打ち上げとなった。本来は私が率先して行かねばならないのだが、体力が今年はとても無理と判断。みずしなさんは他の方から離れられないという連絡あったので、おぐり、宮垣のみ連れて参加する。乾杯の音頭とって、極ホルモン、ゲタカルビ、レバ刺しなどで今年のコミケ成功を祝う。連れていった二人もここの肉には喜んでくれた。ただし、前の席で濃いやおいや宗教の話を連発していたHさんには少しヒイていたようだったが。この足で新幹線に乗り、立ちん坊で岐阜まで帰るというおぐりを送り出し、ホッピー飲んで(ここのホッピー、以前は頼むと焼酎がジョッキいっぱいに注がれてきて、ホッピー入れるところがない状態だったのに、最近はちゃんと☆印までしかいれなくなった。ちょっと悲しい)いろいろと。

 コミケのみとってみてもと学会、立川流、うわの空と世界が広がっていくが、来年は自分の中で、これらとのおつきあいの中でどう立ち位置を決めていくか、がテーマになるだろう。とまれ、例年はこの後は帰省するだけで、事実上、この打ち上げが一年の終了であった。まだ今年は終わらない。なかなか痺れる状況である。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa