裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

2日

木曜日

冬コミ詐欺

「実行委員会ですけど、いま、当選したサークルが事情あって辞退されましてね、ひとブース空いているんですが、20万円振り込んでいただければ……」ありそうだ。朝6時45分起床、入浴。朝食とり、久しぶりにバスで通勤。朝から催促電話がかか りそうな日というのはやはり、タクシー通勤になってしまう。

 ゴジラ、昨日の感想に対してのコメント、ミクシィでいろいろ。なんだかんだ言って、話題性ということでは最近のゴジラ映画ではナンバーワンであろう。怪獣映画というものに理屈というものを付随させるのは私は反対で、つけるなら徹底してバカバカしいものの方がいい。怪獣というものがそもそも非論理な存在であって、それと戦う世界の論理もまた、非論理な論理でなければ、バランスがとれない。私が大好きなのは『ガメラ対大魔獣ジャイガー』で、ジャイガーが低周波に弱いということを主人公の弘少年が自衛隊本部に報告すると、それはジャイガーの武器とするマグネチューム光線の正体が超高周波で、この二つが全くあべこべ、両極端のものだからであり、
「熱帯地方の人が北の国に行くと弱く、逆に寒さに強いはずのエスキモー達が南方に行くと参ってしまうのと同じ原理で、ジャイガーは低周波に弱いのです!」
 と博士が説明する、あの論理であった。昔、オールナイトでこのシーンが来ると私は拍手したものである。場内の他の観客も、もちろん爆笑、大拍手であった。怪獣映画には怪獣映画の中の理屈がある。これこそ怪獣映画の論理なのである。まあ、昔から“高周波なのに光線ってのは……”と首をひねってはいたものだが。

 あまりおつきあいのなかったK書店の雑誌から電話。グルメと官能という両方面の性格を持った小説、エッセイなどを10冊挙げてレビューしてくれという内容。作業量が多そうなのでちょっと迷うが、おつきあいのない雑誌から依頼がくるのは珍しい し、ご縁つなぎということで引き受ける。

 昼はオニギリ(高菜)、黒豆納豆、カップ味噌汁。1時半までにアスペクト『社会派くんがゆく! 逆襲編』のあとがきを脱稿、メール。ホウッ、と息をつく。いやはや、長く暗くつらいトンネルを抜けたものよ、という感じ。もっとも、あと三つ四つくぐらねばならぬトンネルがあるわけだが、ひとつでも抜けたという事実が大事。編集のK田くんからホッとした受け取りのメール。

 山口県の某広告代理店から電話。講演の依頼。額がちょっといいので、まだ先の話ではあるが引き受けることにする。FRIDAY四コマネタ出し。日テレからは電話で、『世界一受けたい授業』の単行本に入れる私の講義の件。印税の率の話。他にも何人もの先生が出演する本なので、微々たる割合だが、出してくれるだけでも良心的 である。なにしろ某トリ……(自粛)。

 6時半、とりあえず打ち出した原稿の冒頭部分持って、時間割へ。幻冬舎Nさんと待ち合わせだが、なんと時間割が閉まっていた。何か今日は早じまいだったらしい。呆然としていたら、Nさんも来る。脇のスタバで打ち合わせ。こっちも早く抜けねばならぬ、社会論エッセイの件。ざっと目を通してくれて、オモシロイと力入れて言ってくれるので自信がつく。いろいろと話す。『サイゾー』で山形浩生が私の裏モノ日記の社会時評的な部分にツッコミを入れている。私は青臭いのだそうで、山形浩生に青臭いと言われるとは名誉なことだ、と二人で笑う。ああいう批評は、唐沢という男が社会時評的な執筆活動をしているんだ、ということを世間に宣伝する役割を果たしてくれているので、この本の前宣伝にもなるわけで有り難い。その他、いろいろと本とは関係ない、やや不道徳な話なども。気分がだいぶ高揚している感じあり。

 Nさんと別れ、そのままタントンマッサージ行く。揉み込んでもらい、いい気分で帰宅。家で夕食。焼肉用の肉を用いたすきやきもどき、能登みやげの岩もずくスノモノ、これも能登みやげのサヨリの干物、ピザパイの余りという、いかにも家庭料理的なデタラメの組み合わせがいい。ホッピー飲んで酔っぱらい、すぐに寝る、というかベッドに倒れ込む。高揚はしていても疲れは相当なものだ。いや、疲れているから高揚しているのか。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa