裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

22日

水曜日

サドカイ派くんがゆく!

村崎「天使が見える、なんつーデンパなことホザいてる連中がいるけど、馬鹿じゃね えの? 霊の世界とか永遠の命とか、ありっこねーじゃん」
唐沢「肉体の復活とかもね。大体、聖書における正典はモーゼの五書だけだからね。 他はまったくアテにならないという」
 朝7時半起床。寝坊である。仕方なくお湯張りのみして朝食(野菜がゆ)の後、改めて入浴。自宅のパソコンで『社会派くんがゆく!』のbk1サイトの広告用対談の ゲラチェック。広告にだけ使うのはもったいないくらいな内容。

 タクシーで出勤、エレベーター前に貼ってあるポスターみると一時から点検のため三時半まで停電、エレベーターもパソコンも使えませんとある。あちゃあ、忘れていた。この年末のクソ忙しいときに……と思うが仕方ない。使えるうちに、と大急ぎで朝日新聞ピンホールコラム原稿を書く。エピソードというよりはトリビア的な原稿に なったが、時期ネタでやっというところをかってもらうことにする。

 それからメールでの打ち合わせ、いくつか。K書店から、昼にFAXでゲラを送るのでチェックを、と言ってきたのに対し、すいません、FAX使えないんで無理ですとだけ連絡して、停電する1時チョイ前に外出。ブックファーストで二、三買い物したあと新宿へ行き、松竹文化会館で『Mr.インクレディブル』。どうせ二時間半は仕事にならないのだから、年末進行で試写も見逃したこれを今のうちに見ておこうという算段。なぜ渋谷で見ないのかというと、この時間に字幕バージョンがかかっていたのがここだけだったから。吹き替えでもいいのだが、そこはそれ、字幕にこだわるのはアニドウ出身者の習性みたいなもの。で、見ましたが、いや、どうせディズニーのこと、単純な娯楽作品とばかり思っていたら、流石はブラッド・バード、いろいろ 深く考えさせられる作品でした。感想は長くなるので、明日にでも。

 帰宅して、急いで『FRIDAY』四コマのネタ出し。急いでやった仕事だが案外いい形にまとまる。メール。ここと同じ社のIくんから原稿催促電話あったがとりあ えず明日のことにする。

 電話連絡頻々、日テレから来年一月収録の『世界一受けたい授業』特番についてのスケジュール確認。これまで登場した先生たちに国語算数理科社会と分けて特別授業を、というような趣向らしい。私はナンになるのかと聞いたら、“一般教養”と、なんか小学校ぽくない。あと、講演についての電話。このあいだの電話と受け持ちが変わり、内容も変わる。某大手コンピューター系企業に行ってなんかしゃべることになるという。間にたった代理店の人がちょっと要領を得ない。声だけ聞いていると、地 方の県議の人みたいな声質と話し方。

 そんな雑用をすませているうち時間ぎりぎりで、また家を飛び出し、新橋まで。内幸町ホールにて村木藤志郎/小栗由加二人回。昨日注文しておいた花を確認(相手先の名前等間違っていたらクレームつけないといけない)し、席についた後、こちらが誘ったメンツを受付で確認。ミクシィで誘った夏さんやぎじんさん、IPPANさんにパイデザの平塚夫妻も来てくれて、感謝々々。他には開田夫妻、はれつさん、みなみさんといった常連。二見書房のYさんも来てくれていたので、隣の席について少し打ち合わせなどいろいろ。

 ロビーではダラさんとかきぎさん。ダラさんとは来年の単行本のことでちょっと話す。ぎじんさん、夏さんとも談笑さんがらみ話す。俄然、打ち合わせライブとなる。笹公人さんとそのお連れのマンガ家志望の女性とも雑談、そんなこんなで楽屋にも顔を出せずに開幕時間になってしまった。ムーンライダースの曲で幕が開くと、いきなりパジャマ姿でドラクエをやっている小栗由加と、サンタクロース姿の村木藤志郎のわけわかんない会話で展開する親子コントがはじまる。村木さんのハズし攻撃の連打に、小栗がやたらorzの文字絵そのままの格好になるのが笑えるというか何というか。コントのあとのトーク、そしてピアノ演奏もパジャマのままで、じゃあ休息はさんだ後半の衣装はどうかというと、これがTシャツにドテラ。せっかくのいい会場でのライブなんだからもっとおしゃれなドレスでも着ろよと思うところだが、これがまた似合って可愛いかったりするんですね。色気のない格好をさせれば天下一品の女優なのである(褒めてないと思う)。ぎじんさんはパジャマでノックアウトされたそうだから、人の萌えツボはそれぞれだが。

 和気藹々のトーク、ピアノ演奏(スーパーマリオとは意表をつく凄い選曲!)、そして適度なヌルさのコント(芝浜現代版)含め、クリスマスの小品的な舞台としては非常にほのぼのとコンパクトにまとまった、あっという間の2時間だった。そろそろ中程だろうと思って時計を確認して、え、もう2時間たったの? と驚いたほど。楽 しませていただきました。

 ……ただーし。当日初めて村木&小栗のコンビをごらんになった方に申し上げる。今回はあくまで入門編である。小栗のはじけぶりは、当たればあの1000倍くらいすごい。終わったあと、くたくたにへばって劇場を出るような舞台である。決してあの程度の女優じゃない。それだけわかって、もう一度、ライブに足を運んでいただき たい。

 休息時間のロビーでの、知人たちとの会話。
「小栗さん、なんか余裕ですね」
「見ているこっちの方がドキドキしちゃっていて」
 ……なにしろ相手が村木藤志郎だから、自分がどうヘマしようと明後日の方角へ飛ぼうと、全部受け止めて処理してくれる。尊敬する師匠への満幅の信頼感が見えて微笑ましかったのだが、やっぱり舞台、それも二人だけの舞台には“こいつを食ってやろう”“自分の方がウケをとってやろう”という、信頼しているプロ同士ゆえの真剣勝負の緊張感が欲しい。村木さんの、可愛い弟子を立ててやろうという優しさが先にたって、何か、それが小栗の爆発を途中でセーブした形になっちゃっていたような残念感も(長年うわの空を見て彼女のすごさをわかっているだけに)あった舞台であった。まあ、こりゃ望蜀の嘆に近いが。壇上で小栗が楽しげに言っていたように、もう一度二人会、ぜひとも再度見せていただきたいと切に願うものであります。

 打ち合わせたダラさんYさんに、二人揃って“かなり疲れてますね、こないだ会ったときと大違い”と言われる。確かに疲れてはいるが、そんなに顔に出ていますか、という感じ。会終わってから、用事すませた柳瀬くんがオタク大賞の件駆けつけてく れたので、小栗とツチダマさんに引き合わせる。

 打ち上げに誘われたのでホイホイと。みずしなさん、ダラさん、かきぎさん、柳瀬くんなどと同テーブルになったのでいろいろ雑談、それから村木さん島さんたちの席にも移って。途中で土田さんの誕生祝いの席となり、みずしなさんからは恒例のタッチ模写色紙。今回はニホンバシ“ナ”・ヨヲコ画であった。私はこないだの8日浅草で早々とプレゼントを渡してしまっていたので、カバンの中にあった『社会派くんがゆく!』の予約特典小冊子を。

 12時解散、電車の中でTaka@モナぽ(略さん(ミクシィ登録名で書くとどうも変な感覚だが)さんたちと会話。新宿までたどりつき、同方向のみんなとタクシー乗り合って帰宅。中でもいろいろ雑談するが、モノカキ業界人たちはやはり今の時期お互い疲れているらしく、何か発言がみんなトゲトゲしくなる。いつもは笑って聞きすごせる人の物言いが神経にいつまでもまとわりついて、よしなしごとばかり頭に浮かび、帰宅してもしばらく寝付けず。まあ、この季節に疲れて荒れていないモノカキはモノカキではない。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa