裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

21日

火曜日

自分をハメてやりたい

 ナルシストの最終的願望。朝、企画をいろいろ立てて、いまいちスタッフの面でうまくまとまらないななあ、と悩み、胃が痛くなるという夢を見る。目が覚めたら、胃の痛みは本物であった。ゆうべの食い過ぎが原因だろう。5時半、起き出してネットにつなぎ、ミクシィに日記メモなど書く(このメイン日記が日が遅れてもきちんとつけられるのは、ミクシィにしょっちゅうメモ的な書き込みをしているせいである)。担当のNさんから竹書房文庫の『怪奇トリビア』、マニアックだったわりには評判がよく(プロの作家さんたちがみな絶賛してくれているらしい)、発売二ヶ月たった今でもそこそこ売れているので、そろそろ次の本をという話。ついでに新しい企画も売 り込んでおく。

 今、精神状態グダグダなのだが、彼女に言わせるとそれがかえって仕事できる理由なのだという。そうかねえ。それはいいのだが、二人とも年末で忙しく、新企画など打ち合わせする時間がとれない。前回の本の打ち上げすらまともにやってない。どうしますかねみたいなことをメールでいい合っていたが、考えてみれば明日の22日、 彼女も私も村木藤志郎vs.小栗由加の二人会に行く予定が入っている。
「あ、じゃそこでちょっと打ち合わせしましょう」
 ということになった。同じ贔屓役者がいるモノカキと担当というのはこれが便利である。しかし、考えてみれば、締切逃れで公演に通い詰めるという方法、彼女にはとれないな、これは。

 7時25分、朝食。カニがゆ(お歳暮で送られたもの)、リンゴ二切れ、ミカン小一ヶ。8時50分のバスで渋谷へ。京王バスは、乗車口のところに、担当運転手の名前と、その運転手さんから乗客へのメッセージ、というか、心構えみたいなことが書かれている。何か小学校みたいであまり好感情はない。たいていは“安全運転に努めます”とか、“わかりやすいアナウンスを心がけます”などというラチもない文句だが、今日の運転手さんのモットーは
「私は防衛運転に努めます」
 防衛運転というコトバには初めてお目にかかった。すると何か、“攻撃運転”という語もあるのか?

 職場で仕事にかかるが、雑用多くてなかなか本格的にかかれず。BGMとして、昨日から『christmas chai』(烏龍歌集)というCDを。前にラジオで聞いてしびれたaminの『クリスマス・イブ』目当て(耳当て?)で買ったDVDつきCD。要するに中国の歌手たちが歌うクリスマス・ソング集である。中国語とい うのが、若い女性が発音すると“萌え語”になることを発見。例えば
「雨滴正在漸漸変雪花」
 は“ゆでぃじょんざいじぇんじぇんびぇんしゅぇほあ”になる。萌えでしょ? それにしてもやはりaminはいい。山下達郎のオリジナルを聞いても全然切なくなら んのだが、これは切ない。

 ちょっと前に、『レトロポップ・上海』というCDのことを日記に書いた(11月27日)が、その当時(50〜70年代)に比べて、洋楽に中国語というのが自然にマッチするように変化してきたのだなあ、と実感。中国文化の中で、洋楽というのが無理に中華風にアレンジしなくても受け入れられる素地が出来てきた、ということで あろう。『いつでも夢を』なんて、原曲より西洋ぽくアレンジされている。

 以前の中国の楽曲はカレーだろうとステーキだろうと自国風にしなければ受け入れない文化らしく、例えベートーベンでも中国化して演奏するようなものすごさがあったのだが、それだけに、いかにも中国の音楽を聞いている、という感覚を得ることが出来た。それを思うと、このソフィスティケートはやや寂しくもある。ただし、収録されている『ジングル・ベル』と『もろびとこぞりて』は、やはり中華風アレンジが かなり効いていて、聞きながらホクソ笑む。

 気圧が乱れて体調不良、(あとで気圧に弱そうな人たちのミクシィ日記を回ってみたら、みんな同じようなことが書かれていて苦笑する)、結局打ち合わせとかメール連絡ばかりでまとまった仕事なにひとつ出来ず。講談社Web現代のYくんから電話あり、今年の冬コミも企業ブースに講談社有志が出品するそうだが、私の本の、講談社での在庫僅少本なども売り出すそうである。もし、そこでお買い求めいただいた節には、30日(木)に“東ア19−b『東文研』”ブースまで持ってきていただければサインいたしますので、ぜひお持ち下さい(ただし、開場から午後2時までの間と させていただきます)。

 某テレビ局から電話。ちょっと企画がらみのお話。なるほど、そういうネタを私にフッてきますか、とちょっとニヤリ。向こうも私がそういうネタに詳しいかどうかわからず、山カンでかけてきたらしいが。茫洋としてまだちょっと先の話で、しかも現段階ではあまり旨みがなさそうな話なのだが、とりあえず打ち合わせしながら、煮つ めていきたいと思う。

 夜にいたってなお、頭脳モウロウ。早々と帰宅して、家でカレーライスと自家製のハツのオイル漬けなどで酒にする。K子は語学で遅いので、母と二人切り。親戚談義につきあう。S家の伯母が先日、心臓発作で倒れて手術していたことを知る。命はとりとめたそうだが、いまだICUの中だそうだ。美容院へ行くのが何より好きな伯母 で、その日も美容院に行くことになっており、救急車で運ばれながらも「その前に美容院に寄れないかねえ」  と言っていたそうだ。女性の執念。そういう話聞いていたら面白くて(倒れた伯母とその家族には悪いが)つい酒を過ごして、資料用に見ようと思っていたビデオ類が 見られなかった。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa