裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

金曜日

ラブコメ詐欺

「あ、お父さん? アタシ、今朝学校に遅刻しそうになって、あわててトーストくわえながら走っていたら、角で男の子とぶつかっちゃって、その子打ち所が悪くて、救急車で病院に運ばれて、手術代に100万円かかるって……」
 朝6時45分起床、寒いが好天。朝食はパンプキンスープ(お歳暮のスープこれで完食)、五郎島金時にリンゴ。

 基本的に体調不良は続き、鬱ではあるが、昨日までよりは気圧のせいかゆうべの酒がよかったせいか、かなり軽い。どれくらい軽いかというと、出勤で家を出たとき、ひょい、とかがんで靴の裏に張り付いているシールみたいなものをつまんでとって捨てたくらいだ。なんのことはないとお思いかもしれないが、このシール、三日くらい前に靴の底に張り付き、そのままずっと張り付いたままで、歩くと地面にくっつき、ぺったぺったと音がして、不快この上なかった。……そんな不快なものを、ちょっと指でつまんで捨てるという動作を行うテンションすらなかった、ということなのであ る。

 コンビニで買い物、私のファンのお姉ちゃん、いきなり
「ヨーロッパで、フランス以外にフランス語使っている国ありませんか」
 と訊いてくる。アフリカとかカナダとか、植民地系ならともかくヨーロッパではスイスとかベルギーくらいじゃない? と答える。友達がフランス語を勉強していて、彼女と今度海外旅行するのでフランス語が使える国に行きたいのだが、フランスはその友達が何度も行っているのでもうイヤだと言っているらしい。しかし、彼女の方ではアフリカとかはさすがにイヤで、ヨーロッパに行きたいらしい。ベトナムが一応フランス語圏だよ、あそこの国のフランス料理はおいしいらしいよ、と言うと
「えーっ、でも、素材に犬とか使ってそうじゃないですか」
 と。確かに。

 仕事場着、玄関に放り出しっぱなしだったダンボール箱と新聞の束を地下のゴミ置き場に持っていって片づける。これも気力回復の現れか。そのまま仕事に入る。電話数本。幻冬舎Nさん、講談社Iくん。あっという間に午前中は過ぎ、昼飯、オニギリ (オカカ)と納豆、味噌汁。

 朝日新聞社から原稿一行追加の依頼。一行と言っても15ワードで、これで追加するに足る内容を、というのはなかなか難事である。なんとか追加。引っ越してFAX番号がわからなくなっていたミリオン出版も担当Yくんと連絡とれ、なんとか送信。

 2時外出、東急ハンズで明日のロフトの衣装の白衣(コミビアコーナーをやるのである)買い、3時に時間割で村崎百郎氏とアスペクト対談。村崎さん、娘分である鬼畜娘・きめらちゃんと共に来る。『社会派くんがゆく!』今年最後の更新(31日)用の対談であるが、今日はなにか口がどんどん先に行き、村崎さんがのけぞるくらい 鬼畜なことを口走った(もっとも、鬼畜すぎて絶対文字にならない)。

 きめらちゃんのお父さんは週刊Sの元副編集長で、当時週刊SはS学会叩きを最も盛大にやっており、子供時代は家の玄関に銃弾が撃ち込まれた後がずっと残っていたとか。凄まじい。しかしお父さん自身も凄まじい人で、三島由紀夫の弟子で、『盾の会』の創設メンバーだった人だそうである。家にピストル撃ち込まれたくらいではビ クともすまい。アスペクトからは、この対談の携帯発信の話もあった。

 家に帰ったら某組合の広報誌から原稿依頼。執筆内容はほのぼのとして笑えるような、家庭的なものを、ということらしい。さっきまで×××の××は実は××××××……みたいな鬼畜な内容を話していた身としては苦笑。仕事の幅が広いことだ。安西水丸さんが長年やっておられたコラムの引き継ぎらしい。自分のニッチが、いま、そういうあたりにあるのかとちょっと興味深く思う。水丸先生の最近のエッセイを読むと、何かずいぶん枯れた感じなのだが、ここまで枯れたエッセイはまだ、私には書 けないなあ。
http://www.banyu.co.jp/doctor/17.html

『野生時代』ブックレビュー原稿のゲラ、三日遅れで出る。担当編集のKさんから電話があったが、可哀相に彼女もイブに編集部居残り。ちょっと難しいナオシが一箇所あったが、なんとかやってFAX。

 原稿に結局手、つかず。明日回しになる。やはり、世間ではいまごろカップルどもがオシャレなホテルでイチャついているかと思うと、パソコンの前でカタカタと文字を書いているのがバカらしくなるのか。帰宅、今日は自宅でのクリスマス・ディナー第二弾。お客はS山さんとめでたく就職決まったみなみさん、それにK子のポーランド語ともだちのツケモノ屋の娘さんと、その友人の薬剤師さん。この薬剤師さんもK子の知り合いだと思い、K子相手に漫才みたいなちょっと鬼畜(さきほどの対談ほどではないが)ばなしを飛ばしたが、途中で聞いたら、ウチに来るのも、K子に会うの も初めてだったとか。それはちょっと、刺激が強すぎたか。

 メニューは基本的に昨日と同じだが、みなみさんのおめでた話があるので会話もはずんで、いや、食うわ食うわ。最後のシャケごはん(北海道のいくらをたっぷり乗せて親子丼にして食う)まで、自分の中のレコード的な食いっぷりを見せた。母から日記につき訂正、昨日の(今日も出たが)フリッターはくわいではなく、百合根であった。腹が苦しくなって、11時ころお開きのあと、腹をさすりつベッドで児島襄『天皇と戦争責任』(文藝春秋)など読みつつ、寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa