裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

25日

水曜日

なまけもののセクハラ叩き

 仕事もしないで社内セクハラ糾弾ばかりしているOL(いそうだね)。朝7時半、起床。ずっと、嫌な目にあったことをどういう表現で日記に記載しようかと悩み続けるという夢を見ていた。どうにもリアルで困ったもの。体調、なんとか“治った”と表現していいまでに持ち直す。ちくま文庫の野口晴哉『風邪の効用』では、風邪はそれ自体が身体の治療であり、疲れなどの偏在を治す作用があるという。この人の『整体入門』はちくま文庫の隠れたベストセラーであり、私自身は野口理論は信じていないが(提唱者の野口自身、65才という大して長寿でもない年齢で没している)、この視点というか、逆転の発想は面白い。“発想”というものの原点みたいなところがある。朝食、バタースパゲッティ。

 午前中、昨日打ち合わせした日記本の記述抜き出しを少しやってみるが、そこで出た内容の記述、思ったより少ない。少ない分、選択に迷わずうまい具合に一冊分でまとまればいいのだが。外は小雨、気圧の乱れで、まだ体調は完全回復とはいかず。植木不等式氏、開田裕治氏等にメール。原稿送ったマイクロフィッシュからは、内容に問題ナシというメール。ホッとした。 母から電話、やっと(予定通り?)豪貴の子供が生まれたとのこと。豪貴、“K子さんがどういう反応するかが心配だ”と言ってるとか。

 腹が減ったので、多の雑用もあり、外出して、キッチンハチローでハンバーグとクリームコロッケの定食ランチ。味噌汁がうまかった。“腹が減ったので飯”というのも、ほぼ一週間ぶりではないか。まあ、体調回復のきざし。薬局で救心買って、さてそれから、と思ったら、カラサワさん、と声をかけられる。太田出版のHさん。あれ今日図版ブツの仕様済みのものを返しに来てくれるのは2時ではなかったか? と思い、時間を見たら2時ジャスト。時間の概念がちょっとおかしくなっており、まだ正午くらいだと思っていた。体調は回復しても頭調は回復せず、か。しかし、ここで出 会えてよかった。マンションまで案内。

 図版ブツ返却してもらい、完成した『と学会年鑑BLUE』の見本刷りも一冊、いただく。植木さんの日記などで、表紙(マー関口)が凄まじいもの、と読んではいたが、見て爆笑。アマゾネスみたいな金髪女性二人に、と学会運営メンバーが大虐殺されている、という構図。植木さんはちぎれた自分の腕を食べている。植木さんは前の年鑑本でも、解剖した宇宙人の死体を食っていた。このイラストレーター、絶対に植 木さん日記の読者であろう。

 Hさんと、いろいろ雑談、一時間ばかり。次の本の構想みたいなことも打ち合わせる。ライターが食っていくということの大変さなど。理工系と人文系の立ち位地の違いということなど、発散にもなるし、勉強になることも多し。もっともこっちはかなり毒舌になった。結局、今日やった一番大きな仕事がHさんとの会話になる。会社などではこういうことがきちんと仕事にカウントされるんだろうが。3時半、改めて外出、東急本店地下で買い物。やはりまだボーッとしているのか、魚のエラ取り、ウロコ取りをつい、“いいです”とか言ってしまい、後で“あれ?”とか思う。

 5時45分、家を出て、新宿。サウナ、ただでさえ寝汗とかかくのに、汗をかくために入ったもので、じゃぶじゃぶという感じ。1時間入って体重3キロ分、水分が出た。ふだんはそのあとしばらく休息室で休むのだが、今日は携帯禁止なのに携帯でべちゃくちゃ傍若無人に話しているおっさんがいて、それが嫌で、すぐマッサージにかかる。またこのおっさんが、こういうおっさんのキャラにぴったりという感じで大阪弁なのである。“わしの方でそっちゃィ行きまひょか?”とかいう、濃い大阪弁。大阪人は東京に対するコンプレックスで、東京に出てくるとわざと典型的な大阪しゃべりになり、傍若無人にふるまうので、そういうキャラクターとして認知されてしまっている、本当は大阪人というのは気が小さいのだ、と親父がよく、言っていた。このおっさんもそのデンか? マッサージ一時間半。揉まれているうち足がつる。

 帰宅してメール見る。フジテレビから『トリビアの泉』ゴールデンタイム移行の件について。本も出るらしい。テレビというのは本当に細かくめんどくさい。夕食の準備、小鯛の酒蒸し(やはりウロコ取りが大変だった)、マグロのヅケ寿司。DVDで大映『怪猫五十三次』。入江たか子の悪女芝居を楽しむ映画。悪家老が毎晩地下室で宝物箱を開けて中をながめて楽しむという設定の、その宝物箱が海賊映画に出てくるような宝箱で、小判とか宝石とかがが剥き出しのままバラでつまっているのに大笑いする。大笑いと言えば、社会派風の役柄が印象的な三井弘次が、気の弱い悪役の手下を演じていて、これも笑える。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa