裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

16日

月曜日

「越王です、越王です」ほらほら呼んでいるわ

 范蠡軍師、句践さまからピンチだと使いがきました! 朝、5時ころから、なにかネット関連の夢をずーっと見ていた。鼻がグズって、何度もかむ。黄色い、ウミのような洟が出る。いったいこれだけの量が自分の体のどこにたまっているのか、と恐怖するほど。首筋のリンパ腺あたりが腫れているのがヤな感じである。寝汗、やはり凄まじ。Tシャツ、パンツなどぐしょぐしょ。7時半、起床。朝食はオートミール。

 立って歩くと、平衡感覚が失われた感じでクラクラ。少し横になって、12時近くまでじっとしている。外には明るい陽射しがあふれ、楽しげな人の声も聞こえる中でじっと目をねむっているこの感覚は、小学生のとき、風邪で学校を休んだときの、あの感じ。電話でときおり中断される。これはやむなし。

 立つとフラフラだが、座ると仕事はまあ、はかどる。高気圧のせいだろう。メールいろいろ。華倫変のことについてもいくつか。軽い心不全にも体が耐えられなくなっていたようだ。何度も自殺未遂を繰り返していたものの、自らその死を演出することもかなわぬあっけない死。ますます塚原くんとのシンクロが思われる。才能が細すぎる神経の器に閉じこめられていた故のパンク。塚原氏のときも引いたセリフだが、これは緩慢なる自殺、およそ自我を彼が有した時点から用意されていた最期、のように思えて仕方ない。

 ちと必要あってネットで“クバーデ”を検索したのだが、一件も出てこない。“擬産”で引いても8件のみで、解説にはなっていないものばかり。民俗学とか文化人類学が下火だと言われているが、こういうところで如実に出るな、と思う。米山俊直がクバーデは“同情”の発露だ、と言っていた。同情は快感回路に直結する。イラク状況に必要以上に心的移入して嘆きまくるのも、人間の盾なんという無意味な行為に熱くなるのもクバーデの一種だな。

 SFマガジン原稿カリカリ。同じくまだ原稿あげていない永瀬唯から電話。ふむふむ、と聞きながら書き進む。大竹こうすけ氏からも電話、図版の処理についていくつか指示。4時、完成したもの(原稿用紙10枚弱)、メール。ふう、と一息。とはいえ、予定した時間で書き終えられたのは、頭脳は熱に侵されていないということか。食欲がないので、昼はスイートポテト小一ヶ、豆乳で流し込んだのみ。本日は開田裕治さんと劇団新感線を観にいく約束がしてあったのだが、この状態で行くと明日以降の仕事に差し障るかも知れないと思ったので、残念ながらキャンセル。

 1時間ほど横になる。5時、起き出して買い物。通りの薬局でスカイナー鼻炎と、腸がやられて口唇炎が出来ているのでチョコラBB。あと、西武地下で食料品など。帰宅して、またパソコンに向かい、『UA! ライブラリー』新刊のための解説を書き出す。お涙モノなのだが、以前もお涙については書いているので、切り口を変えねばならない。どこらへんから書き始めるか、というところを工夫する。出来は次の新刊『踏まれても……』をご覧ください。400字詰め8枚半、8時15分書き上げ。プリントアウトして、外へ出て、8時半、蕎麦屋『花菜』。今日は軽く、アジ干物、厚揚げ野沢菜添え、それに風邪退治にニンニク揚げ。モリ一枚をK子と分けて。新しいバイトの男の子、SFマガジンのS編集長の弟みたいな顔をしている。

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