裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

23日

日曜日

虎の縞

 朝7時起き。K子が早くに仕事場に行くというので、眠い目をこすりつつ起きて朝食作る。彼女にサトウザヤ炒め、ハム。私はロゴスキのピロシキ(卵大)2ケ、それとバナナ一本。

 風呂入り、しばらく仕事(早川の単行本)。同じ材料で怪奇マンガ掲示板の方にも書き込みをする。ニフティのオタアミ会議室の方では、まだこの作品を観ていない開田裕治氏まで加わって、着々と『アイアン・ジャイアント』盛り上げ運動が進んでいる模様。ネットで検索してみて興味深いのは、樋口慎嗣や内藤泰弘(『トライガン』の作者)などといった、筋金入りのマニアがこの単純な作品にコロリといかれてしまっていること。コドモの話に見えて、実はあの作品は、かつてコドモであった全てのオトナが泣く物語なのだ。

 エリクソンは『幼児期と社会』(みすず書房)の中で、青年期の性急なアイデンティティ確立志向がヒーローと自分との同一化願望を生む、と指摘している。すでにオトナになったわれわれは、『アイアン・ジャイアント』の中にある単純化されたその願望(“私、スーパーマン、なる!”)に、ノスタルジックなものとして、というかノスタルジーであるという条件づきで自分を仮託して、その同一化を楽しめる。モラトリアム社会に安住している日本のコドモ層にはこの映画の中で示される確固たるヒーロー像は、むしろ“君もかくあれ”という押し付けのように映って嫌悪の情を抱くのではあるまいか。

 鶴岡から電話。『G2O』の読者アンケートのことなどいろいろ聞いて笑う。昼飯はご飯の残りで茶漬け。買い物に出る。まんがの森渋谷店でビデオを選んでいたら、店員の女の子にサインを求められた。そのあとパルコで文庫本中心に一万円ほど買い物。暁烏敏『歎異抄講話』(講談社学術文庫)など。この著者の名前、これで“あけがらす・はや”と読む。本名なのだそうだが、暁のカラスの鳴くのが早いこと、とは粋な名前の坊さんであることよ。

 帰って急に眠くなり、一時間ほど寝る。寒くて手足がしびれる感じ。文化放送から、金曜日の放送について構成の打ち合わせ。小西克也の番組なので、B級文化論について多少つっこんで語ってもいいそうだ。

 早川原稿続き。と学会の藤倉珊氏から電話。M社のトンデモ本の続編への参加を依頼しておく。病中でもいろいろ本を読んで、きちんとツッコミどころを押さえているのがさすが。虎の縞は洗っても落ちないというヤツか。途中、雑誌の編集からの打ち合わせ電話をはさんで長ばなしする。

 8時、K子と渋谷の駒形どぜう。二階の座敷のすみに押し込められる。鴨焼き、どぜう鍋2枚、鯉の洗いなど。突きだしのツブ貝が一番うまかった。日本酒3本、ビールジョッキ1。

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