18日
火曜日
しだいしだいにエルサレム
昨日早寝したので朝6時に目がさめてしまい、正月に古書すがやさんから貰った写真雑誌などを床の中でながめる。メキシコ特集で、メキシコのお国料理が並ぶ。生きたアホロートル(ウーパールーパー)を水煮したブイヨン、カエルをトウモロコシの葉で包んで蒸焼きにしたもの、生きているカメムシをつぶして作るソース、イグアナの卵の塩漬け、ハエの卵を使った“メキシカンキャビア”・・・・・・。スペイン人が入ってきて、この“食伝統”を破壊したんだそうな。
8時、朝食。極めてまともな、ハムとマッシュルームのサラダ。一応、食器棚の中には信州から買ってきたザザムシのビン詰めもあるのだが(笑)。朝、薬局新聞一本かたずける。それからアエラインタビュー原稿チェックして返送、モノマガジン原稿もチェックして返送。モノマガの図版用ブツ、テーマがカマキリ(去年この日記で取りあげたカマキリ恐怖症)なので、エド・ベグリー・ジュニア主演の映画『アップルゲイツ』のビデオをバイク便で送る。ブラジルから人間に化けてアメリカにやってきた、巨大カマキリの一家が主役のコメディである(いや、話しただけではそんな映画があるとは信じられないだろうが・・・・・・)。
昼はK子の弁当のオカズの残り(牛肉と菜の花の和風トマト煮)でご飯軽く一杯。新宿に買い物に出かける。銀行行って、帰りに久しぶりにモンドビデオショップに立ち寄る。ジュリアーノ・ジェンマ主演の『ザ・サムライ』が8000円で売ってたのでオッ、と驚いて手に取る。この作品、三船敏郎の『レッド・サン』のパロディで、珍妙な日本語をしゃべるアシガルの“サクラ”がジェンマと、ショーグンから大統領への献上品の子馬が奪われたのを追って西部を旅するというしょうもない作品で、数年前の“映画秘宝”ブームのころ、神田白山通りの中古ビデオ屋でお宝として何と十万円近い値段で売られていた。中古ビデオ一本についていた値段としては、私の知る限り二年ほど前に新宿マイシティのショップで売られていたポール・シュレイダーの『MISHIMA』の七万円を上回る最高値である。さっそく買い。それを含めて、五万ほど。
帰って、週刊アスキー一本書きにかかる。NHKから電話、こないだの『ウィークエンドジョイ』にまた出演依頼。2月の18日。ここらの予定は18日にこれに出演して、翌々日の20日に金沢にサイン会&カニ食いに出発、22日に帰って翌23と24がロフトのオタクアミーゴス、という強行軍になる。
鶴岡から電話。私のことを悪し様に言っているという某掲示板について報告。話を聞いてみると、そこの設置者が何やら一人でイキリ立っている様子で、むしろ可愛らしい感じ。その怒りでむしろ彼は立場を悪くしているらしいのだが、それでもとまらないのだという。何かに対し悪態をつける元気があるのは結構なことである。一時私の天敵だった(今は相手にもしてない)某人物も、いよいよ出版業界撤退の噂があるとやら。6時、アスキーアゲ。今日は能率を上げたことであった。JUNE編集部Aくん(大森望さんの弟)から電話、エッセイ依頼7枚。
買い物に行き、9時、夕食。中華風野菜炒めカレー、ピータン豆腐。LD『アニ』三十話。杉野昭夫の作画、ことに止め絵のところ耽美の極み。どこかで見たペンタッチだなあ、と思っていたら、“奇譚クラブ”(昭和を代表するアブ雑誌)にイラストを描いていた畔亭数久(グロテスク)という人の描く少女の顔に、特に信夫マリ子などそっくりだったのであった。
それから、八幡書店ビデオ『甦る出口王仁三郎』。今日、モンドビデオ屋で買った(1000円)もの。昭和十年、政府による大本教の大弾圧直前(4カ月前)に王仁三郎が監督・主演した無声映画『昭和の七福神』に、息子(孫か?)の出口和明がナレーションをつけたもの。亀岡の神聖庭園・天恩郷をバックに王仁三郎が福禄寿や弁財天(!)に扮したコスプレ映画だが、キッチュ極まる亀岡の神殿、グロテスクな王仁三郎の身体パフォーマンス(ことに布袋さま)も、白黒映像の中で見ると、異様なイメージを持ってこちらに迫ってくる。アーティフィシャルな楽園、悪夢の中の理想郷といった感じである。妙なフシ回しで読まれる『霊界物語』の“神の教えにヨルダンの”とか“しだいしだいにエルサレム”(ますますもって帆立貝、のタグイか)などという文句がいっそうその雰囲気を助長する。
・今日のお料理『中華風カレー』
中華鍋に油を敷き、ショウガ、ニンニクの微塵切りを炒める。油に香りがついたらタマネギ、ニンジン、ヤングコーン、エンリギ、キクラゲ、豚バラ肉などを炒め、酒と中華スープを入れてひと煮立ちさせる。オイスターソース、WO醤などで味を整えたらカレー粉を溶いて入れ、ほどよい味になったら、片栗粉を溶き入れて、トロミをつける。ご飯にかけてもよし、蒸しパンにつけて食べてもよし。