28日
水曜日
引きこもりのおばちゃま
「家の中でずっとジェームス・ディーンのビデオばかり見てるんですよ」
※三笠書房原稿 朝日新聞書評委員会
朝8時半起き。
入浴して朝食9辞意。柿・林檎・ブドー、スープ。
日記つけ、資料メモなど雑用をかたずける。
明日から公演、よほどのことがない限り原稿仕事等、
4日間出来なくなる(実際はそのよほどのこともだいぶある)。
昼は母の作ったけんちん汁を温めて。
それとおにぎり。
夕方、事務所に出て、三笠書房の内容見本原稿を二本、
書き上げてメール。
作曲家、三沢郷氏死去とネットで知る。
老後はアメリカで過ごされていたらしい。
アニソン・特ソンの作曲家として、最も華麗な曲を作った人。
その華麗さは6〜70年代の少女マンガに似合い、
『サインはV』『エースをねらえ!』という少女スポ根もの
の二大代表作の映像化で主題歌を担当した。
ともに、まず“タメ”でじっくりしっかりと抑えて歌い、
やがてそのためたテンションをバーン、と開放するあたりの調子が、
鼻歌で歌っていてもジーンとしびれてくるくらい
高潮させてくれた。
『サインはV』で言えば“風に向かい 砂を走り”あたりが
じっくりしっかり、“トスパストスパス”で次第に高潮させて
いくが、さらにもう一回“光追いかけて”でタメ、
そしてラストの
「しィあわせのはァたァ! 胸にィだァくまァでェェ!」
でもう一度タイトルを絶唱、大開放(カタルシス)がくるのである。
『エースをねらえ!』だとこの“タメ→開放”のパターンが
三度も繰り返される。
“私の恋も 私の苦しみも 誰もわかって”まではまあ、
誰でも作曲できるがそのあとの
“くーれー、なー、いィィィー”の小ブレイクが
これはただの曲ではないぞ、と予感させ、続いての
“きらめく風が走る、太陽が燃える”
という、一見突っ走りそうに見える抑えにまた戻った後、
“くちィびるゥにィ、バラのォは・な・びらァ、わたァしは飛ぼォオ、
白いボールになァってエエエ”という、ヤケクソ的ブレイクに
なるが、驚くべしこれでまだ終わらず、もう一回の、技の連呼という
力タメの後で“ベストをつくせ”とワンフレーズ抑えを入れて、
経てオモムロに
「エース・エース・エースゥゥゥゥ、エエスゥをねらァえェー!」
というカタルシスをもってくる。
歌い終わってこれほど快感のあるアニソンもなかった。
三沢さんは歌手を自分で指名することが多かったという。
『サインはV』の麻里圭子とリオアルマ、
『デビルマン』の十田敬三とボーカル・ショップなど、
歌い手の力量と声質に合わせて曲を作る名人だった。
大杉久美子を『エースをねらえ!』と『ジャングル黒べえ』
など、まったく方向性の違う歌に起用しているのも、
歌手の能力を知りつくしていた人だったからだろう。
『月光仮面は誰でしょう』(アニメ版『月光仮面』主題歌。
小川寛興作曲のものの編曲)などは個人的にボニー・ジャックスの
最高傑作歌唱である。
5時45分、
タクシーで都庁前まで出て、大江戸線で築地市場前駅。
築地市場駅の改札を出るといつもは魚の臭いがただようが、
今日はないな、と思ったら争われぬ、今日は市場休み。
昼を早めに食べてしまったので、空腹感じていたところで、
今日は弁当が寿司。平らげてしまった。
久しぶりに橋爪紳也氏出席。
選挙の話。芦辺拓さんも残念がっていました、と言ったら
「芦辺さんとお知り合いですか!」
と驚いていた。
選挙用に作った名刺(写真入り)が余ってるというので、
私や鴻巣さん、
「わあ、くださいください」
とミーハー的にはしゃいで貰う。
その後の選考会はいつも通り。
とれたのととられたのが今回は半分。
私しか希望がないところに第一希望の花丸をつけてしまったり、
ちょっと能率の悪い選び方をした。
アラスカで、香山リカさん、鴻巣さんとスタッフと
懇談。10時まで。明日から舞台、と聞いてみんな
驚いていた。
新中野まで送ってもらい、台本読んでもう一度頭に入れる。
寝つかれないので、ホッピー飲んで、
洋モノビデオで『Mysterious Doctor Satan』。
1940年製作のシリアル(連続活劇)である。
ロボット軍団を作ってアメリカ征服をたくらむマッド・サイエンティスト
のドクター・サタンに正義の青年、ボブ・ウェインが、鎖帷子
みたいな覆面をかぶったヒーロー、コパーへッドになって
(ただ覆面をかぶるだけ)戦うという話。
時代が時代で、ドクター・サタンは枢軸側の暗喩になっているが
こういうシリアルでは普通、ワル側はナチスドイツとか日本軍
だと思っていたら、ドクター・サタンは演じているのが
イタリア系の俳優、エデュアルド・チャネリであることでも
わかるがイタリア軍の手先らしく、ちょっと珍しい。
エデュアルド・チャネリは戦後も『ヒッチコック劇場』や
『鬼警部アイアンサイド』などのテレビのゲスト、
『マッケンナの黄金』のような大作映画から
『モンスター・フロム・グリーン・ヘル』のようなB級SFまで
出まくっていたが、ボブ・ウェイン役のロバート・ウィルコックス
は甘いマスクに抜群の運動神経(格闘シーンでの跳躍力とかは凄い)
を持った逸材だったにも関わらず、この作品のあと兵役にとられ、
スターとしての最盛期(30歳〜35歳)になるはずの5年間を
陸軍で過ごさざるを得なかった。
戦後復帰して、名優ジョン・バリモアの娘のダイアナ・バリモア
(ドリュー・バリモアの伯母)と結婚したが、ブランクは埋められず、
その悩みからアルコール中毒となり、1955年に心臓発作で
亡くなっている。
この作品で有名なのはドクター・サタンのロボットであるが、
今日見た回(5回目くらいまで)にはまだ、ロボットは出て来ず。
2時くらいに無理矢理、寝る。