裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

9日

日曜日

名古屋でトークと美食、の記

朝9時半まで寝る。これだけ寝られるというのはいいことなのか体力低下の証か。朝食食べずに出て、ホテル(全日空)のある梅田からなんばまでタクシー飛ばし、うどん屋『千とせ』を探す。

昨日、岡田さんが食べてきたと聞いてぜひ、自分も食べたいと思ってのこと。だいぶ以前にこの日記にも書いたが、吉本の芸人さんたちの常食であるところの“肉吸い”を、前からぜひ一度食べてみたかったのだ。

ネットで地図と開店時間は調べておいたのだが、今日が日曜であることを途中で思い出し、あ、これは休みかも、と思ったのだが開いていた。肉吸いとご飯を頼む。

肉吸いとは、要するに肉うどんのうどん抜きである。前日飲んで二日酔いの芸人さんが、何か腹に入れたいが固形物は、というので、肉うどんのうどん抜きを頼んだのが元だろう。思った通りの味で、塩ッ気も強く、二日酔いでこそないが酒の朝にはいい食い物。

途中でコンパニオンガールズらしいお姉ちゃんの一団、常連らしい“肉うどんに小玉”という頼み方する客もおり、午前中からえらい繁盛。満足して出て、新大阪まで。新幹線で名古屋へ向かう。

トイパラダイスでゲストとしておぐりゆかとトーク&サイン会である。本来、名古屋ではと学会の明木教授と飲む予定だったのだが、明木先生が学会で北海道へ(!)行ってしまうことがわかり、サテどうしたものか、途方にくれていた。

そしたら、談笑さんの会に出ていたゆめすけさん(MIXIネーム)からマイミク申請がきていて、会ではご挨拶できずに残念、とあった。
それが名古屋の方らしい。
「あ、来週名古屋に参ります」
とメールしたら、
「ではぜひそのトーク聞きに行きます」
と返事があり、甘えついでに
「その晩、食事できるいいところ知りませんか」
と訊いたら、
「ささやかですが居酒屋をやっていますので、よろしければ当店で」
というので渡りに船と飛びつく。

本当に最近、こういうことでは運がいい。そのゆめすけさんが駅に迎えに来てくれていて、彼のバンに乗ってまずサンルートホテルに投宿、届いていたサイン用の『雑学授業』20冊受け取る。

で、会場であるポートメッセに入るが、ここの事務局控室に入って、
「今日のトークの出演者ですが」
と言ったが、まったく通っていないようで
「ハア?」
というような対応をされる。

とりあえず控室に、というのでそこに行くと、宮内洋さんが出を待ちかまえてドアのところで会場の様子を窺っていた。なんとか『P−マン』撮影中の山口A二郎さんに連絡つき、おぐりとも落ち合えてホッと。

で、トークの打ち合わせざっとして、さて時間そろそろ、という感じでステージのところへ行くが、まるきり何の用意もなし。スタッフもおらず、ポツンとそこに二人置かれたという感じ。落語会など主宰していてイベント慣れしているゆめすけさんが気をきかせて壇上にイスを並べてくれたので形はついたが。

しばらく待って、やっと係が来る。怒鳴りつけるとか、尻をまくって帰る、ということも考えたが、まあそういうことで体力使うのもばかばかしいし、と思いやめておく。やがてやっと館内放送があって、二人、壇上に上がる。

それでも声を聞いてお客さんが30人くらい集まってきてくれる。ブジオにからめて名古屋の食の話から入る。八丁みそやエビフリャーという呼称のこと、スガキヤのラーメンのことなど話して、案外笑ってくれたか、と思う。

場所が地元ということで、おぐりもリラックスしてトークしてくれた。一番笑ってくれていた人はうわの空のファンでこないだの公演も観にきてくれていたとか。ネコ三味線のビデオもちょっとだけ見せて、
「次回のトイパラにはぜひ、おぐりゆかの猫娘フィギュアを出しましょう!」
とやって〆。

そのあと、ブースでサイン会に移ったがこれも予想を上回って20人近くの人が来てくれて、写真撮影など求められた。入ったときの対応を見て、もっと凄まじい悲惨な状況になるかと思っていたが、まずまず最低限のメンツだけは保った、とホッとする。

あとで山口さんに聞いたら、東京のトイフェスの担当者と名古屋のトイパラの担当者(今回はその合体企画)との連絡が全然ついていない状態であったそうだ。猫三味線に関しては次回東京のトイフェスで出演者集めてトークをしてみよう。

私も会場回って、以前から欲しかったスヌーピーのドライヤーを東京相場の半額以下の値段でゲット。4時に閉会、ゆめすけさんのバンにおぐりと乗り合いで彼の店『楽』に行く。

居酒屋などと謙遜するのでそういう店を連想していたがどうして、立派な小料理屋。立川流中心に噺家さんの色紙がずらりと貼ってあって、壮観。

長野の木下さんもそうだが、地方の落語愛好者で芸人を世話するのが好きなこういう人たちにより、いまの日本の落語文化は支えられている。ゆめすけさん自身がカウンターに立って包丁をふるってくれる。

名古屋と言えば、の味噌煮込み、土手煮からはじまって、手長エビとウニの素晴らしい刺し身、松茸の土瓶蒸し、秋味の塩焼きなど、料理も大変に結構。ウニは明石のウニだそうで、色は北海道のに比べ薄いが味は大変結構。

途中で山口さんらP−マンスタッフが入ってきたが彼らにも適宜料理を出してもらう。色紙にサインを求められ、私とおぐりで一枚ずつ書く。ゆめすけさんは2ちゃんの初期にひろゆきなどと関わったこともある人で、カウンターにモナー人形が置かれている。

しかも、耳の丸い、初期バージョンモナーという珍品まで! 濃い小料理屋だなあと笑う。お値段、料理の質と量からいって相当なものと覚悟していたが、やややや、という額。本当に今回はゆめすけさんのご好意に甘えっぱなし。

しかし、この店での食事がなければ、連れてきたおぐりにも申し訳なかったし、かなり名古屋へのイメージが悪くなっていたことだろう。これでモトは十二分にとったわけ。運がよかったといえばホントウに運がよかったわけだが、この出会いが談笑さんのパーティで、しかもそのパーティで知りあったというわけでないというのが面白い。

9時半ころ、岐阜の実家へ帰るおぐりを駅まで送って、サンルートホテルへ。メールなどチェックして、すぐ寝る。怒濤の4日間だった。

原稿がさっぱり書けなかったのがツラいが楽しくはあった。煮詰まらないように、こういう出仕事は必要だよなあ。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa