裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

4日

火曜日

ラジオ打ち合わせと落語会、の記

朝8時半起床。急いでシャワーのみ浴びて朝食。ブドウ二種、リンゴ二片、スープ。冷茶わん蒸しの残り。

『特ダネ!』で今日、やっと談笑の披露目。落語に無理に結びつけたという感じの取材で取材そのものには談笑はほとんど顔を出さず。日記つけなど。

いろいろ雑用繁多だがすでに個人のキャパシティ超えて、神経がマヒしている。何から手をつけていいかもわからず。

11時、中野駅前までバス。某件で某人と打ち合わせ。状況の大きな変化があったそうで、それにどう対応するかという件。

変化には乗るべき、とサジェスチョン。仕事相手の人間同士の関係、気にしていた人物の消息など聞くことが出来ていろいろ参考になる。

向こうも私のサジェスチョンが力になったと感謝してくれてうれしい。そこからタクシーで渋谷、時間割に直入り。TBSラジオIくん。

金曜日からの『ブジオ!』コーナーの件、おぐりゆかを単独でレギュラーレポーターに起用する件、伝える。まあ、私のファンにはまたおぐりかと言われるかもしれないが認知期間にはこれくらい推さないとダメだろう。彼女にとっては出番が倍加したわけで、チャンスだと思う。笑いの神が降臨する可能性はこれまでの中で一番高いわけだし。

仕事場に帰ると総合芸術協会(講演関係のプロダクション)から電話。六花マネとの連絡がなかなか取れないらしい。とはいえこっちに電話されても困る。自分のスケジュールはまったく把握していないのである。ギャグバンク原稿書き上げ、メール。日暮里に出かける。

ホテルラングウッド内サニーホールにて立川流落語会、今日は談笑の真打披露口上がある。トテカワYさんと待ち合わせ、開演前に談笑さんと三人、ホテルの喫茶店で出版の打ち合わせ。この出版の先のことまで含めて。何か楽しいな、こういうプロデュース。

あのパーティの二次会では高山さんのアコに家元がリクエストを出し、大盛り上がりだったとか。それも懐メロ縛りというだけでなく、「うーンと、アレ、“なんとかがかんとかで”って歌詞の、アレなんだったっけ」みたいなリクエストで、それをああでないこうでないと高山さんが推理しながら弾いて、当たると大喝采、というような、完全に60代以下お断りみたいなノリだったそうで、他の人もリクエストを出すが家元から
「それ、有名すぎるからダメ」
とNGが出るという、マイナー曲マニア大会みたいな大変な会だったそうだ。

しかも昨日は、今朝のテレビがあるので4時起きなのにも関わらず談四楼師匠大盛り上がりでもう一軒もう一軒と二時まで引き回されたそうで、
「真打なんかなるもんじゃありませんヨ」
と。まあ、お祭りとはそういうものなのである。打ち合わせ終えて落語を聞く。

前座がブラ汁ことらくBの『てんしき』。続いて談修の『出来心』、文都の『犬の目』、左談次の読書落語、里う馬の『岩柳島』、仲入りで披露口上、それから談幸の『風呂敷』、談之助の漫談、そして談笑の津軽弁バージョン『金明竹』。落語初心者のYさんにいろいろ解説。左談次と談幸が面白かった、と。談笑の津軽弁の言い立て、会場の後ろで酔っぱらったお爺さんがバカでかい声で笑い、
「こりゃあいいや」
「最高だね!」
とか声をあげ、ああ、いかにも日暮里だなあと思ってよく見たら文字助さんだった(笑)。昨日の出演だったが用事があって打ち上げに出られず、今日再度飲み直しに来たそうである。談笑さん、高座で笑ってはいたがその笑いが凍りついていた。幻冬舎Yさんからバトンタッチで、終わったあとは筑摩書房Mさんと談之助さんと打ち合わせ。

トンデモ落語会の本が伸び伸びになっているうちにあんなことになってしまい、仕切り直しで談之助中心の本をまず、出そうということにする。落語黄金時代の芸人について、談之助の寄席論と聞き書きを中心にして、かつてあった落語ブームの再検証本に。

この本で過去を、談笑の本で未来を俯瞰することで現代の落語の姿が見えてくるかもしれないという壮大な試みとなるかもしれない。談笑の打ち上げに加わる談之助さんと別れ、Mさんと日暮里駅前の韓国家庭料理屋『やなぎ』。かねて食べてみたかった“ブテチゲ”がメニューにあるので頼んでみる。

ブテチゲは要するに“部隊鍋”で、戦場の兵士が鉄兜を鍋替わりに作って食べていたという鍋。戦場での鍋だから材料は糧食であって、魚肉ソーセージ、スパム、インスタントラーメンなど。まあ、これは料理屋のブテチゲなのでソーセージは魚肉でなく粗びき豚肉ので、いくぶん高級で、野菜や豆腐などもふんだんに入っていたが、インスタントラーメンがちゃんと鍋に入って出てくる。味付けが辛くて汗が出る出る。次の文庫の話などもして、有意義な話が出来た。

タクシーで帰宅、原稿などいろいろ残っているが全部忘れて寝る。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa