裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

8日

金曜日

恋人も濡れるアボカド

 キウリまでならいいけどアボカドまで入れちゃいやん(エロですいません)。朝5時起き、いつも通りメールなどのぞき、いつも通り入浴、いつも通り朝食。エダマメとキウリを和風ノンオイルドレッシング(要するにポン酢)で。台風ますます近いら しく気圧朝から変動、どうもしようがなし。

 タクシーで仕事場へ。〆切が一日過ぎている『Memo・男の部屋』原稿。テーマは“男の手土産”。400字詰め4枚を2時間。人生の時間がガリガリと消費されていく。仕事がなまじ楽しいから仕方ないのだが。そろそろ、自分の余命計算をして、やりたいことやれることを徹底して選別する時期かもしれない。余命など計算したところで必ず希望的観測が入るのだから、こういうときには“○月○日、○歳にて自殺決行”くらい、タイムリミットを切っておいた方がいいのかもしれないと思う。

 昼はおにぎり、昨夜の釜飯の残りで。あと納豆。パソの調子は昨日平塚くんが来てくれて治った。あと、電話とFAXの混線はまだ理由がよくわからない。時代遅れのISDNを使っているマンションなんで、ルーターで分岐しているのだが、その調子がおかしいらしい。もう古い(8年くらい前のもの)なので故障したのではないかと平塚くん言う。現在はFAXを切って、分岐したどちらの回線も電話につながるようにしているから電話は使えるが、今度はFAXがダメ。ゲラの送付とかに支障が出てしまう。今日、試写会に私が行っている間に来て、ルーターを交換してくれる予定。

 3時半、雨の中出て、渋谷シネセゾン試写室。いまおかしんじ監督・林由美香主演の映画『たまもの』を観る。もともとは『熟女・発情玉しゃぶり』というどうしようもないタイトルでポルノ映画館で3月に公開されたものを、ユーロ・スペースにて改めて一般公開するもの。どちらのタイトルにも“たま”が入っているのは、林由美香演ずる愛子がプロボーラーを目指してボウリング場で働いている、という設定だからである(それを考えると、ポルノの方もよくひねったタイトルだな、と思う)。35歳の、可愛くて心は少女のまま純粋だが、年齢だけはいってしまった女が、ボウリング場のオーナーとの無感情な不倫関係に体をただれさせながら、ある日出会った郵便局員の男・良男と恋に落ち、彼にひたすら尽くし始めることで、人生に充実感を取り戻す。しかし、いつしか一方的に尽くされることで圧迫感を感じてきた良男は、別れ 話を切り出してくる……。

 私は主演の林由美香とは中野貴雄作品『江戸城大奥奇譚』で共演までしたことがあるのだが、その時の彼女は、元気いっぱいの爆発少女、という感じだった。今回はそれと180度イメージが異なる、無口で、感情の起伏は人一倍激しいくせに、それを常に内側のベクトルで処理してしまう、“もう若くない萌え少女”を演じている。嬉しさを表現するのに、砂浜を駆けて、転んで砂に顔から突っ込み、顔を砂だらけにしながらニョヘ、と笑うのだ。いや、心が少女のまま故に、そういう形でしか感情を表せないのである(だから後半、すさんだ心を無理矢理、同じ行動でまぎらわそうとす るその心情がたまらなくいじらしく見える)。

 つまり、これは“お兄ちゃん、さみしいにょ”とか言っていた少女が、そのままで30半ばを過ぎてしまったら……という凄まじくシビアなテーマの作品なのだ。そんな彼女の心の闇の表象として登場するのが“しゃべるボウリングのボール”。この映像のナンセンスも一見の価値があるが、しかし、何と言っても林由美香の哀れなまでの可憐さがこの作品の絶対の見所であろう。ほとんどセリフがなく、微妙な表情と仕草で、もう少女じゃない少女を演じ切った林由美香の、まぎれもないアカデミー賞級 の演技に感動。
http://www2u.biglobe.ne.jp/~p-g/data/2004/040304/tama.htm
 ↑こちらが『玉しゃぶり』の方の紹介で、
http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=5205
 ↑こちらが『たまもの』の方のサイト。

 帰宅したら平塚くんが、新しいルーターを取り付け終わったところ。やはり、これがトラブルの原因だったらしい。とはいえ、彼としては、自分がメンテに入った翌日にトラブルが起きたということで、自分のせいなのか、と思ってやたらあせったことであろう。原因がそうじゃないとわかり、心底ホッとした顔だった。ご苦労様。

 パソコンの調子は治ったものの、台風接近で肉体の調子は甚だ悪し。島さんの朗読コンテンツ用の原稿を書き始めるが、なかなか書き上がらず、明日のことにして(島さんにその旨メールして)、下北沢まで雨の中タクシー。今日はK子と母と一緒に、寿司の日。すし好下北沢店、すでに二人、いま着いたところ。いろいろと雑談しながら、白身、コハダ、トロ刺身など。こういう日は明日のために早く酔って寝てしまう のが吉と、日本酒ガバガバ飲む。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa