裏モノ日記

裏モノ採集は一見平凡で怠惰なる日常の積み重ねの成果である。

24日

火曜日

観劇日記・6『地獄の楽園/ミレニアムパニック』

『地獄の楽園/ミレニアムパニック』
作・演出/橋沢進一
音楽/グレート義太夫
出演/橋沢進一 岡田竜二 大村琴重 佐藤歩 菊田貴公 岩田真
佐々木輝之 別府明華 松原由賀 右田ひだり 櫻井ゆうこ 山本尚寛 他
於/下北沢小劇場『楽園』
2011年10月30日 観劇

ルナティックシアターの代表公演になりつつある『地獄の楽園』シリーズ、
第一作がジェイソン、二作目がフレディ、三作目がプレデターと来て、
最新作は『ヘルレイザー』ネタである。

毎回々々“もうネタ切れ”といいつつ、新手を出してくるのがお見事。
話のテーマとか演劇性とかというものとは無縁な“長くてちょっと怖い
コント”なのであるが、ここまでびっくり箱のように次から次へと
いろんな仕掛けを満載するサービス精神は、他の劇団にも見習ってほしい
ものである。小劇場演劇というのは決して
「作・演出家の身勝手なテーマをおしいただくために観客が我慢して観なく
てはいけないもの」
ではない。

佐々木輝之が大学生を演じる、という無理スジな配役も、ここまでくると
定番で別に無理にも感じなくなるところが面白い。寅さんやロジャー・
ムーアの007みたいなものですね。高校生役の佐藤歩や、ディープ鹿児島
弁を駆使する別府明華、体育大出の体の柔らかさを見せる菊田貴公など
それぞれの役者の個性をいかしている使い方も見事。

毎回、血まみれになって殺される女優さんたちが実に楽しそうなのも
特長。役者になったらこういう役は一度は演じてみたいものだからね。
今回は松原由賀楽しそうに血まみれに。そして、それにも増して魔導士役
の三人(橋沢進一、岡田竜二、大村琴重)がいかにも楽しげであった。
今回、一番のウケは千秋楽特別バージョンとしてのスペンサー将軍(前回
に引き続き、渡辺一哉)登場シーンだったが、原作映画の『ヘルレイザー』
を知っていれば、ピンヘッドの本名がスペンサー大尉である、ということ
を思い浮かべて(偶然の一致なのだが)より面白がれるかもしれない。

演劇を見る、という快感を得たくて劇場に来た人は肩透かしをくうかも
しれないが、こういう形の芝居をずっと続ける劇団というのも、一つ
くらいあっていい。と、いうか、ずっとこのやり方で続けていけることを
願いたい気持ちになるのである。

Copyright 2006 Shunichi Karasawa