22日
金曜日
古い映画をみませんか・20 『Electric Earthquake』
デイブ・フライシャー監督『Electric Earthquake』(1942)
http://media.yucasee.jp/posts/index/7213
によると、元ミネソタ州元知事のジェシー・ベンチュラは、日本の
地震や津波は地震兵器HAARPの引き起こしたものだ、と主張して
いるとか。プロレスラー知事として名前を売ったベンチュラだが
最近は陰謀論番組のホストとして人気らしく、人生を何ステージ
にも分けて活躍する人物だなあ、と感心(?)する。
それにしても今回の地震が人工地震だ、という陰謀論はかなり
根強くネットの世界に広がっている。
地震を人工で起こす、というイメージってどこらあたりから
来ているのだろうか。それをテーマにしたSFとかあるのかな、
と思っていたら、案外身近にあったのを思い出した。
フライシャー兄弟によるアニメ『スーパーマン』シリーズは、
例の宮崎駿がそっくり真似した『The Mechanical Monsters』
の回が有名だが、シリーズ中に『エレクトリック・アースクエイク
(電気地震の巻)』というエピソードがあったのである。
1942年(昭和17年)というから戦争中の作品である。
この作品は実は『スーパーマン』の中でもトンデモな話として
有名で、そのトンデモは地震兵器という概念をさしているのでは
ない(もっとトンデモないものがこのシリーズにはうんとこさ
出てきている)。どこがかというと、この地震兵器をもってして
アメリカ人を脅迫するのが、ネイティブ・アメリカン(インディアン)
のマッド・サイエンティストだということである。インディアンの
マッド・サイエンティストが出てくるSFって、ひょっとして
これ一作ではなかろうか。
彼はデイリー・プラネット編集部に乗り込み、ただちにマンハッタン島
をわれわれインディアンに返還せよ、さもなくば大地震を起こして
お前ら白人が勝手にわれわれの土地に建てたものを全て破壊するぞ
(このことを記事にして白人政府に伝えよ)、と要求する。なんで
直接政府に言わないのか知らないけど、当然デイリー・プラネット
社のスタッフは彼をキチガイ扱いし、怒った彼は(定番で彼の後を
こっそりつけていったロイスを拉致した上で)マンハッタンに
電気による人工地震を起こす。
「これは……スーパーマンの出番だ!」
というわけでスーパーマン対人工地震の戦いがくり広げられる。
さすがフライシャースタジオで、マンハッタンの摩天楼街を襲う
大地震の描写、地底に高圧電流を送り込んで地震を起こす(メカ
ニズムは無茶苦茶だけど)描写、そして生物のようにからんでくる
送電線とスーパーマンの戦い(!)は迫力満点。タイトルが揺れて
崩れる演出も秀逸である。
戦争中によくこんな作品作れたなあ、こんな国と戦争して勝てるわけ
ないよなあ。
とはいえ、1942年当時の人権意識ってこんなもんだったんだなあ、
と呆れるくらい、インディアンを悪人に描くことにまるで躊躇して
いなかったのである、アメリカ人というのは。まして戦争中、
他のエピソードでは日本人もボコボコやっつけられている。これは
裏をかえせば、他民族を長いこと侵略・搾取してきた白人たちの間に、
いつ、他民族からの復讐の手が延びるかもしれない、という強迫観念
が芽生えていたという証左でもある。
かくて、陰謀論は生れる。
アメリカ人の脳裏に“地震兵器”という概念を植え付けたのは、
ひょっとしてこの作品じゃあるまいか、と秘かに思う次第であります。
http://www.youtube.com/watch?v=IR5Qxv5dMQY
↑フライシャー・スタジオのスーパーマンの特長は、その飛翔する
ときの感覚や巨大なものを持ち上げたりするときの質感など、アニメ
ならではの“架空のリアルさ”の細かさにある。
が、海面に顔を出したときにスーパーマンが“息を吸う”のは、リアル
ではあるが何か変。
え、あれは(宇宙空間を飛ぶときとかも)単に“息を止めていた”
だけなの?