16日
金曜日
料理日記・9『サクラエビ湯豆腐』
サクラエビとはよく名付けたもので、桜の花が咲き出すころに店頭に
並ぶし、色は淡いピンクだが、茹でると見事な桜色になる。
乾燥したものをお好み焼きに入れたりもするが、生、もしくは釜揚げの
サクラエビが手に入る時期になったら、わが家で必ず試みるのが
サクラエビ湯豆腐。
料理法というほどのものでもない、昆布出汁をひいた鍋の中に日本酒を
多めに入れ、豆腐を入れ、煮立ったらサクラエビと、万能ネギのみじん切り
を投入し、さっとあざやかな桜色になったら火を止めて、醤油、好みでポン酢
でいただく。歯のあいだでプチッ、プチッとつぶれるサクラエビの風味が
何ともたまらない。まだまだ寒いが、口の中は春爛漫である。
季節を見事に表す、池波正太郎の小説に出てきそうな料理だが、日本人が
サクラエビを食べ始めたのは、漁法が発見された明治以降のことだそうで、
残念ながら鬼平も梅安もこの湯豆腐を食べられはしなかった。