東文研日記

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13日

金曜日

料理日記・13『バジルと松の実のスパゲティ』

中学生時代、芸能人の書いたエッセイなどによく出てくる、
西麻布のイタリア料理店『キャンティ』があこがれの場所だった。
芸能人に会えるからというのでなく、深夜営業をしているイタリア
レストラン、というのがいかにも大都会ぽかったからである。

ある雑誌に、堺正章がそこでよく注文するメニューとして、
“バジリコのスパゲティ”なるものが紹介されており、いったい
それがどういう味のものなのか、バジリコとはいかなるものなのか、
スパゲティと言えばせいぜいがミートソースかナポリタンくらい
しか知らない13、4歳の私は空想の中であれこれと、そのいまだ
体験しない味を思い浮かべてワクワクしていた。

後で知ったが、キャンティでは当時(1960年開店)日本で
バジリコが手に入りにくいので、シソとパセリで代用していた
そうだ。

その後、スパゲティもいろいろ(本家キャンティ含め)食べ歩き、
オリジナルレシピもかなり発案したものの、やはりバジリコ
(英語でバジル)スパゲティを作るときにはちょっと興奮して
しまう。初恋の人と顔を合わせるような気分になるのである。

さて、以下は中学時代から20年ほどして私が覚えたレシピで
ある。松の実を加えるのは、15年くらい前に渋谷のレストラン
で知って覚えたもの。自分の舌に合わせた自己流だが、作って
食べさせてうまいと言わなかった人はまだいないから、そこそこ
のものにはなっていると思う。最近はミキサーなどを洗うのが
面倒くさいから、お気に入りのバジルドレッシングを買ってきて、
それにすりつぶした松の実を合わせてチャチャッと作ってしまう
堕落ぶりだが、大事な人にはやはり正当な手順で作ってあげる
のがよろしかろう。

ミキサーにバジルの葉っぱ(茎もよほど固いところ以外は入れて
かまわない)をどっさり、松の実ひとつかみを入れ、コンソメ
スープの顆粒少々、生ニンニクひとかけ(生ニンニクの臭いと
辛味が苦手な人はチューブのおろしニンニクでかまわない)、
ペコリーノチーズ(これももっと濃厚なのが好きならゴルゴン
ゾーラとか、何でもお気に入りのチーズで)ひとかけ、荒く挽いた
胡椒、塩、砂糖を加えオリーブ油をどぼどぼ注いで(作りすぎて
も冷蔵庫で10日以上はもつ)スイッチを入れ、ペーストにする。

一方でスパゲティ(パスタ、という言い方が主流になったのは
いつごろからだろう)、を規定の時間茹でて温めておいた
皿にとり、これにバタをからめる。オリーブオイルのソースと
バタを合わせるのは邪道という意見もあるが、何、自分で作って
食べるのだからかまうことはない。これによって味がかなり
濃厚になり、“食べた!”という幸福感が味わえる。

その上にバジルソースをかけ、少し残しておいた飾りのバジルの
葉と松の実を散らして供する。写真はバジルの葉をうっかり全部
ミキサーにかけてしまったので、ミツバで代用w

2012年4月
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